小中学生を対象に行われた全国学力テストが話題ですね。
新聞に問題が掲載されていましたので、ちょっと見てみましたが、なかなか面白い。
中学生の国語の問題でこんな問題がありました。
まず、設定です。
この設定で、生徒会の会議で次のような会話が交わされます。
そして、設問はこういう問題です。
設問一は、それほど難しくありませんね。答えは2です。
設問二は、正答は、1,4,5だそうです。
答えとしてはそれで合っていると思いますが、プレゼン的に少し解説を。
選択肢1 「このことについて、他に意見はありませんか。」
オープンに意見を募っており、選択肢の中では、司会者として最も適切な発言だと思います。『このことについて』と限定することによって、長井さん、早川さんの問題提起を重要なテーマとして取り上げているというメッセージを伝えることができるので、長井さん、早川さんも納得でしょう。
司会者が、ちゃんとメンバーの話を聞いているということも伝わります。
選択肢2 「早川さん、なぜ合唱を先にするのですか。」
早川さんはすでに、理由を付けて自分の意見を説明しているのに、さらに理由を尋ねています。
このように司会者から質問されると、早川さんは、司会者が自分の理由には納得していない、司会者が自分に反論している、自分の意見を否定しようとしている、自分の話を聞いてくれないと感じてしまいます。
こういう糾問的な質問は、まさに、警察での取り調べですね。
選択肢3 「私は、長井さんの意見に賛成です。」
会議をコントロールする立場の司会者が自分の意見を言ってしまうと、他の参加者(南さん)もそれに誘導されてしまう可能性が高くなってしまいます。また、司会者対参加者という縦構造の議論になってしまい、他の参加者が傍聴者になってしまいかねません。
司会者は、あくまでも中立的な立場から、参加者同士の横方向議論が活発になるように進めていかなければなりません。
裁判員裁判での評議で、裁判長が陥りがちなパターンです。
裁判長は、長年の裁判官としての経験がありますから、審理を見ておおむね結論を決めています。そして、その結論から大きく外れるような判決は、正義に反し許されないと確信しています。
そのため、裁判員を含めた評議が、裁判長の確信する正義と異なる方向に行きそうになると、なんとか議論を引き戻そうと必死に抵抗します。
しかも、ソフトに、わからないように。
裁判員になった人はぜひ気を付けてください。
選択肢4 「南さんは、二人の意見を聞いてどう思いますか。」
決して間違いではないのですが、早川さんの発言を聞いて長井さんは、反論したくてうずうずしているかもしれません。南さんとしても、もう少し、長井さんと早川さんの意見を聞いてから、どうしようか考えているかもしれません。
できるだけ参加者同士の自由な議論を活発するためには、司会者は発言者を指名をしない方がいいでしょう。発言者を指名するのは、誰からも発言がない場合や特定の人ばかり発言して発言する人と発言しない人がはっきりと分かれてしまうような状況が生じた場合です。
つい指名したくなるのですが、司会者は辛抱強く待つことが必要です。
選択肢5 「長井さんは、早川さんの意見についてどう思いますか。」
これも論理的には間違いではないのですが、ここで長井さんに投げ返してしまうと、長井さんと早川さんの二極対立構造を生み出してしまうことになります。場合によっては、感情的対立が生まれて、建設的な議論が難しくなってしまうかもしれません。
やはり、オープンに問いかけるべきでしょう。
この問題は子どもだけでなく、大人こそ勉強すべきですね。
こういう問題を勉強してきた子どもたちが、大人になっても中学時代に学んだことを忘れずに、良い裁判長になってくれることを期待します。