1周年記念講演ということで、今年2月にアメリカのテキサス州に日弁連の調査団とともに視察に行かれた龍谷大学の石塚伸一教授をお招きして講演していただきました。
テキサス州は、死刑制度が存置されており、しかもアメリカではもっとも死刑の多い州です。
しかし、そのテキサス州でも死刑判決、死刑の執行は激減しています。
そのことと数年前に導入された終身刑が関係しているのかを調査するのが調査団の目的でした。
実際にテキサス州では死刑は減っており、郡によっては、死刑をまったく行われていない郡もあるそうです。
死刑判決を下すためには、一審では必ず二人の弁護人を付けなければならず、弁護士一人当たりについて、弁護士費用と鑑定などにかかる実費費用を合わせて上限3000万円まで費用が認められます。
弁護人は二人なので6000万円になります。
上訴されると、さらに弁護士費用がかかっていくことになります。
こうなると予算規模が数千万円程度の小さな郡は到底予算が持ちません。
アメリカでは検事は選挙で選ばれるのですが、死刑を求刑して郡の予算を使ってしまったような検事は、次の選挙で市民の支持を得ることができないため、一級殺人罪から二級殺人罪に落として起訴するということがあるそうです。
そのため、予算規模の大きい大都市のある郡でないと、事実上、死刑判決は下せないそうです。
3000万円もの弁護士費用が認められているのは、人の命を奪うだけの刑罰を科す以上、そこに至る手続については、どこまでも公正で、適正で、十分なものでなければならないという考えからです。
アメリカ法曹協会(ABA)では「モラトリアム・プロジェクト」というのが行われており、死刑判決を受けた人が、十分な弁護を受けたかということを調査しているそうです。
日本の場合、死刑が求刑されるような事件でも、国選弁護費用は安ければ50万円程度、高くても150万円程度だろうと思います。
精神鑑定や情状鑑定の費用は国からは出ないので、弁護士が国選弁護費用の中から賄います。
死刑求刑事件を担当する弁護士の資格にも特に制限はなく、1年目の弁護士や刑事事件を殆どしたことのない弁護士でも、誰でも弁護人になることができます。
もし、日本で「モラトリアム・プロジェクト」をしたら、かなりの不十分な弁護活動が明らかになることでしょう。
アメリカは、日本と同じように死刑を存置している国ですが、死刑に至るまでの手続保障には大きな違いがあるようです。
3月30日に、京都から死刑制度の廃止をめざす弁護士の会で開催した河野義行氏の講演会の様子について、同志社大学の浅野健一教授のゼミのホームページに掲載されました。
そちらもぜひご覧下さい。
http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/FEATURES/2013/20130619_kouno.html