「カルロス・ゴーン被告、再逮捕」
今朝のニュース速報で流れてきました。
せっかく保釈で出たのに、いまさら再逮捕なんて…
昨日から、「再逮捕へ」という報道があって、本当に裁判官は逮捕状出すのか??と思っていたのですが出してしまいました。
一旦釈放されたのに、再び、拘置所に連れ戻されると、保釈が認められずに勾留が継続していた以上に、被告人の心は大きく折れてしまいます。
ゴーン氏のショックはかなり大きなものではないかと推測されます。
その隙を狙って一気に自白させる!というのが捜査機関側の考えでしょう。
保釈許可をする際、弁護人から様々な厳しい保釈条件を提案しました。
それを受けて、裁判所は逃亡や罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由がないと判断して勾留中のゴーン氏の保釈を許可しました。
それなのに、なぜ、また今回、裁判官は逮捕状を出してしまったのでしょう?
刑事訴訟法199条は「罪を犯したことを疑うに足りる相当のある理由があると認めるとき」は裁判官の発する令状により「逮捕」できるとしています。
捜査機関は、有罪立証できるほどの証拠がなくても、嫌疑を伺わせる程度の資料があれば「逮捕」することができてしまいます。
「疑わしきは被告人の利益に」ではなく、「疑わしい時は逮捕」できてしまうのです。
しかし、それではあまりに簡単に身体拘束ができてしまうので、「逮捕」できる期間は最大72時間に制限されています。
さらに、身体拘束を継続するためには「勾留」という手続きをとって、再度裁判官のチェックを受けなければなりません。
裁判官が「勾留」を認めるための要件は、刑事訴訟法60条で定められていますが、
①「定まった住居を有しない時」
②「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」
③「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」
のいずれかの場合にのみ勾留することが認められます。
特捜部は、ゴーン氏が罪を犯したと疑う程度の証拠(有罪が証明できるほどの証拠である必要はありません。)は持っていたのでしょう。
それを資料として出されたら、一応、犯罪の嫌疑はあるということになるので、裁判官としても逮捕状は出さざるを得なかったのではないかと推測されます。
今回の再逮捕で一番争いになるのは、次の段階で「勾留」が認められるかどうかです。
ゴーン氏は、保釈が許可されたのですから、
①定まった住居(保釈の際の制限住居)は有しています。
②「罪証隠滅」③「逃亡」のおそれについても、保釈条件を定めたことで消滅しています。
今回新たに逮捕された特別背任罪に特有の新たな証拠というものも想定し難く、保釈後、特段証拠隠滅や逃亡を疑わせる行為を行っていないことからすれば、
今回の特別背任事件独自の「罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由」は考え難いと思います。
とすれば、普通に考えたら「勾留」が認められることはないでしょう。
これで、裁判官が勾留を認めたり、勾留決定に対する弁護人の準抗告を裁判所が棄却するようなことをしたら、本当に日本の刑事司法は終わってます。
しかし、そもそも、勾留が認められる可能性の乏しい今回のケースで、逮捕状を出したのが間違っているというべきです。
刑事訴訟法199条2項はたとえ嫌疑があっても「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」は、裁判官は逮捕状を出さないことを認めています。
厳しい保釈条件が付されて罪証隠滅や逃亡のおそれを想定できないのだから、「明らかに逮捕の必要がない」として裁判官が逮捕状を出すべきではありませんでした。
これからの焦点は、裁判官がきちんと「勾留」請求を却下するかどうかです。
今朝の逮捕から48時間以内に検察官は裁判官に勾留請求します。
となると、土曜日の朝が期限になりますが真夜中には請求しないでしょうから、明日夕方までには勾留請求しなければなりません。
となると、明日、担当裁判官が勾留を認めるか?
担当裁判官が勾留を認めた場合、明後日以降、弁護人の準抗告を裁判所が認めるか?
というところが大きな山になります。
そこで勾留請求が却下されたら、特捜部にはあまりにも大きな痛手でしょう。
それにしても、そこまでのリスクを冒しても、特捜部としては心の折れたゴーン氏を自白させられると踏んだのですかね?
弘中先生、高野先生、河津先生という本当の刑事弁護人がついているのに、心を折って自白させようなんて...特捜部の戦略ミスというほかありません。