弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
弁護士の活動、日々感じたことを弁護士目線でレポートします
弁護士をもっと身近に・・・

京都コングレスに参加(5) 感想&日弁連共同声明 2021.3.13

2021-03-13 16:28:16 | 社会・経済

京都コングレスは3月12日(金)に閉幕しました。

新型コロナウィルスの感染者を出すことなく6日間の日程が終わったようです。

多くのサイドイベントがあり、とても興味を惹かれたのですが、スケジュールの都合で参加できずとても残念でした。

しかし、参加した3つのサイドイベントはいずれもとても有意義で、面白いものでした。

死刑廃止、被害者支援の両サイドイベントでの海外スピーカーがいずれも、EUとオーストラリアからであったということも、何か示唆するものがあるように感じました。

EU、オーストラリアはいずれも死刑廃止国です。

そして、いずれの国・地域も、被害者支援の面でも世界をリードしています。

日本で、死刑廃止を言うと、被害者はどうなるんだ!遺族の気持ちを考えたら死刑廃止なんてありえない!と強い反発があります。

死刑廃止と被害者支援は対立する、相反する考えだと捉えられている面があります。

しかし、EUやオーストラリアでは、死刑も廃止され、被害者支援も先進的で充実しています。

死刑廃止と被害者保護、被害者支援は決して対立するものではなく、重要な人権課題として両立するものであることを、京都コングレスのサイドイベントが象徴しているものと感じました。

カルロス・ゴーン氏の事件を受けて、取調べに弁護士の立会いが認められない、長期の身体拘束、接見禁止、人質司法など、日本の刑事司法が国際的に批判されています。

これに対して、法務省としては、その火消しに躍起になっており、京都コングレスでもあちこちでそういう場面が見られました。

京都コングレスのための日本政府意見書のパンフにわざわざコラムが追記されていました。

しかし、世界中の刑事司法分野の専門家が、犯罪防止・刑事司法分野の諸課題について議論しつつ、その知見を共有し、コミュニケーションを図ることで,様々な分野における国際協力を促進し,より安全な世界を目指して協働するという目的を真に達成しようと思うのであれば、自らの刑事司法制度を謙虚にとらえ、内外の意見に耳を傾け、諸外国の制度に学ぶ姿勢が何よりも重要だろうと思います。

京都コングレスが、これからの刑事司法にとって意味のあるものとするため、ここに集まった多くの知見を現実の刑事司法制度の取り入れ、実践していくことが必要であり、弁護士会、弁護士もその一助を担っていく立場にあります。

死刑廃止、被害者支援、取調べの立会い、逮捕段階の被疑者国選など、京都コングレスを契機として、日本の刑事司法制度が改善、発展していくことを願うとともに、私もそこで働きたいと思います。

 

京都コングレスを受けて、2021.3.13、日弁連は、国際弁護士連盟(UIA)および駐日欧州連合代表部とともに、"Joint Message to Aim for the Abolishment of the Death Penalty in All Countries and Regions of the World" (世界のあらゆる国と地域での死刑廃止を目指す共同メッセージ)を発表しました。

日本において死刑制度廃止に向けての流れは着実に進み始めており、いずれ廃止されるでしょう。

これからは日本の死刑廃止ではなく、世界のあらゆる国と地域での死刑廃止のため取り組んでいくべき時代になりました。

 


京都コングレスに参加(4) サイドイベント被害者支援

2021-03-13 16:21:12 | 社会・経済

刑事司法への被害者参加をテーマとしたサイドイベントにも参加しました。

正式タイトルは、「Victim’s Participation for Criminal Proceedings and Access to Justice」

望月晶子弁護士(日弁連犯罪被害者支援委員会、NPO法人レイプクライシスセンターTSUBOMI代表理事)

Aarne Kinnunen氏(フィンランド法務省)

Sami Nevala氏(EU Agency for Fundamental Right⦅FRA⦆自由と正義部門統計・調査部長)

Michael O’Connell氏(世界被害者学会事務局長、オーストラリア)

の4名がスピーカーで登場しました。

望月弁護士からは、日本における被害者支援・被害者参加制度の歩み、被害者参加制度の仕組み、被害者参加に対する経済的支援、弁護士の関わりなどが紹介され、この10年で被害者参加の件数、そこに関与する弁護士の数が大きく増えてきたことが説明されました。

そして、被害者参加への経済的支援について、裁判での被害者参加については国選(政府による支援)があるものの起訴前の段階、判決後の段階においては公的支援がないこと、日弁連が$1.65millionを拠出しているのに対して、政府は$1.10millionにすぎず支援のための国費が不十分であること、日本の被害者参加制度はいまだ一部の重罪に限られていること、すべての被害者が弁護による支援を受けられているわけではなく、まだまだ被害者の支援が行き届いているわけではないとの問題が指摘されました。最後に、弁護士であり、被害者遺族である岡村勲弁護士の功績を紹介され、すべての被害者を支援していきたい、Attorney’s support for all victms! と締めくくられました。

Aarne Kinnunen氏は、フィンランドにおける被害者のための政策、EU Victim’Rights Direcitive(EU被害者の権利に関する指令)、イスタンブール条約の紹介がありました。

フィンランドでは、法務省が資金提供し、ヴィクティムサポートフィンランドというNGOに委託して被害者支援事業を行っているということでした。

また、被害者支援事業のための資金調達のため、有罪判決を受けた犯罪者から刑罰賦課金を徴収する制度、被害者が国によって人身傷害の補償を受ける制度、幅広い法律扶助制度など、日本にはない制度も紹介されました。

 

Sami Nevala氏からは、まず、EUにおける被害者の権利に関する法制度が紹介されました。

ただ、EU加盟国内でも、それらの法制度はまだ十分には徹底されておらず、被害者の権利が認められていても、実践されておらず、法的措置、法律以外の措置が必要であるとの問題が指摘されました。

また、FRAによる興味深い調査結果が報告されました。

調査は、身体的暴力の被害者に関するものです。

その調査結果によれば、身体的暴力を受けた被害者のうち64%の人が警察等の機関に通報をしておらす、その結果、被害者保護、支援の機会が失われてしまっているということでした。

EUにおける今後の課題として、被害者の権利に関する意識の向上、情報の通知、安心して通報できる環境づくりなど、被害者が声を上げることができるようにすることが必要であると指摘されました。

 

Michael O’Connell氏からもオーストラリアにおける犯罪被害者の権利の状況について報告があり、南オーストラリア州でのコミッショナー(被害者の適切な代理人)制度の紹介がありました。

報告の最後は「Justice denied anywhere diminishes justice everywhere.(どこかで正義が否定されると、あらゆるところで正義が弱体化する)」とのキング牧師の言葉で締めくくられました。

 


京都コングレスに参加(3)人権擁護委員サイドイベント 2021.3.10

2021-03-13 16:13:40 | 社会・経済

京都コングレスに、私が会場参加できたのは、法務省人権擁護局主催のサイドイベントのおかげでした。

京都弁護士会から、現在、私も含めて8人の弁護士が、京都市の人権擁護委員として活動しています。

人権擁護委員は人権擁護委員法に基づく制度で、人権相談、人権啓発活動、人権救済活動(侵犯事件関与)を行っています。

このサイドイベントは、そうした人権擁護委員制度を世界に紹介するというものです。

京都の人権擁護委員が小学生向けに行っている人権教室を実演(寸劇)し、また、中学生人権作文コンテストの入賞作品を中学生が朗読しました。

とても面白く、感動的なサイドイベントでした。

 

法務省も参加者に記念グッズを配っていました。


京都コングレスに参加(2)死刑廃止サイドイベント 2021.3.10

2021-03-13 15:55:21 | 社会・経済

コングレスでは、国連による公式な国際会議や委員会だけでなく、世界中から刑事司法関係者が集結する貴重な機会をとらえて、政府やNGO等による多くのサイドイベントや展示が行われます。

 

日弁連では、

①「刑事手続における司法アクセスの在り方-実効的な弁護人による援助とは」

②「死刑廃止に向けて-国際社会における死刑廃止へ向けた取組とアジア・太平洋地域における現状、そしてその課題」

③「法教育により、市民の社会課題解決力の向上と法の支配に対する理解の促進をはかる方法」

④「被害者の刑事手続への参加とリーガルアクセス」

⑤「国際人権基準から見た終身刑および釈放の条件と手続きの在り方」

⑥「弁護士の役割に関する基本原則採択30周年-現在の役割と課題」

という6つのサイドイベントを開催しました。

どのサイドイベントも興味深いテーマでしたが、私はスケジュールの都合で、

死刑廃止(②)と被害者支援(④)、人権擁護局主催の人権擁護委員制度の紹介という3つのサイドイベントに出席してきました。

まず、3月10日に実施された死刑廃止のサイドイベントのレポートです。

正式タイトルは「Towards Abolition of Capital Punishment : Global Efforts to End Capital Punishment and Callenges Confronting Asia-Paciffic Region」

小川原優之弁護士(日弁連死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部事務局長)

Julian McMahon氏(オーストラリア)

Maxime Delhomme氏(フランス)

駐日欧州連合代表部

の4名がスピーカーでした。

小川原弁護士からは、日本の刑場の図が示され、毎年、死刑(絞首刑)が執行されていること、2018年にはオウム真理教事件関係者ら15人もの執行がされたこと、その中には再審請求中の人や心神喪失の疑いのある人もいたこと、死刑執行は執行当日の朝にいきなり本人に知らされ、弁護人や家族には事後にしか知らされないことなど、日本の死刑制度の問題が説明されました。

世界の多くの国が死刑を廃止する中、海外では日本も当然死刑を廃止しているのだろうと思っている人が多いと言われます。

国際会議の場で、日本になお死刑制度が存在し、実際に執行もされていることを伝えたことには大きな意味があったものと思います。

また、2020年はコングレスが予定されており、国際社会からの批判を受けないために死刑執行が0件だったが、京都コングレスが終わればすぐにでも執行がされるのではないかとの危惧も示されました。

さらに袴田事件について、取調べに弁護人が立ち会うことができないという日本の刑事司法の致命的な欠陥によるえん罪事件だと紹介され、このような日本の刑事司法は国際社会には受け入れられないと訴えられました。

最後に、国際社会が、日本の死刑に注意と関心を持ってくれることを期待している、それが、日本の死刑につながると締めくくられました。

Julian McMahon氏は、オーストラリアの法廷弁護士(バリスター)です。

オーストラリアでは、最後に死刑が執行されたのは1967年のことであり、2010年には連邦議会がどの州にも死刑制度が導入できないようにする法律が制定されました。

完全な死刑廃止国です。

しかし、オーストラリア人が海外で死刑になる例があり、McMahon氏は、シンガポール、インドネシアで死刑判決を受けたオーストラリア人の弁護をしたが、執行されてしまったということでした。

オーストラリアは、海外での自国民の死刑実行に反対する中で、それだけでは足りず、現代世界には死刑制度が存在できる場所はないと宣言し、世界的な死刑廃止のために積極的に活動することを約束したということです。

死刑は、国境を超えて取り組まれるべき問題であり、アジア各地の学者弁護士、英国や米国の大学・NGOもアジアのために活動している、これによりアジアにおける死刑廃止の取り組みは前向きなものになると締めくくられました。

 

Maxime Delhomme氏は、フランスでの死刑廃止までの流れ、ロベール・バダンテ―ル司法大臣(弁護士)、ミッテラン大統領による死刑制度の廃止が紹介され、死刑廃止には政治家の強いリーダシップが必要であると語られました。

その後、会場参加者(スペイン大使館)やオンライン参加者との質疑応答があり、死刑廃止について活発な議論が行われました。


京都コングレスに参加(1) 2021.3.10

2021-03-13 15:39:03 | 社会・経済

2021年3月7日(日)~12日(金)に、国立京都国際会館で開催された京都コングレス(第14回国連犯罪防止刑事司法会議)に参加してきました。

コングレスは、5年に一度開催される犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議です。

刑事司法のオリンピックですね。

世界中の刑事司法分野の専門家が、犯罪防止・刑事司法分野の諸課題について議論しつつ、その知見を共有し、コミュニケーションを図ることで,様々な分野における国際協力を促進し,より安全な世界を目指して協働することを目的としています。

1970年に、日本(京都)で初めてコングレスが開催され、それ以来50年ぶりとなる2020年4月に、日本で2度目となるコングレスが開催される予定でした。

ところが、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、急遽、開催が延期となり、2021年3月に開催されました。

延期後のコングレスも、感染防止のために会場参加者は限定され、オンライン会議を活用しての実施となりました。

約5600人の参加者のうち、約4200人がオンライン参加となり、海外からの参加者も約130人だったそうです。

本当であれば、参加者と関係者、その家族などで京都のホテルは満杯になり、京都の観光地にも外国人があふれるはずだったのですが、少ししょんぼりしたコングレスになってしまいました。

日弁連も6つのサイドイベント(刑事弁護、死刑廃止、法教育、被害者支援、終身刑、弁護士の役割)を主催し、4つのサイドイベントを共催・後援していましたので、多くの弁護士が京都に来て会場で参加するはずだったのですが、スピーカー・モデレーター以外は来場不可・オンライン参加とされてしまいました。

私も同様だったのですが、幸い、法務省人権擁護局主催のサイドイベント(人権擁護委員制度)の関係者であったことから、法務省関係者の立場で入場することが可能となり、日弁連主催のサイドイベントにもリアル参加することができました。

感染予防のために、あらかじめPCR検査を受けて、マスク、消毒の感染症対策をして、参加してきました。

会場で配布されたマスクです。

プロ仕様の感染防止効果の高いマスクのようです。

次の記事で、サイドイベントの様子をレポートします。