【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

利益が出たので借入金を返済する(節税になるのか?)

2016-07-23 12:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
▲当期は利益が相当出たので、節税にもなることだし借入金を全額返済して来期から新たな気持ちでスタートしたい(笑)!

△ごめんなさい!それは節税にはなりません・・・

▲借入金を返済すれば現金(預金)が減るから節税になるのでは?

社長と会計事務所(公認会計士、税理士)の間で古今東西を通じてされてきた会話です。

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会社に対する税金である法人税は「収益-費用」として計算する「利益」に課税されます。ここで大切なのは「費用は出金とは必ずしも一致しない」ということです(収益も入金とは必ずしも一致しません)。

借入金の返済は費用ではない出金の典型です。

★「費用が先行」する際には借入金で資金調達をしなければならない

借入金をするときの経営状況を考えてみると納得できます。例えば、起業直後に売上もないのに店舗や事務所を借り、人を雇い、広告宣伝をしなければならない場合には借入金で資金を調達しなければなりません(資本金でも不足する場合には)。

しばらくして事業が軌道に乗れば、先行した費用を回収できるだけの収益が生じます。借入金を返済できるようになるのはこの段階になってからです。この借入金の返済を費用として扱えば、費用を二重に計上することになってしまいます。

★「費用が遅れる」場合もある

借入金で資金を調達したのに費用は後から生じる場合もあります。その典型は、建物や機械など「減価償却」の対象となるものを購入した場合です。減価償却する場合、出金時に購入代金の全額が費用とはならず、数事業年度(長い場合には40とか50年の場合もある)にわたって費用計上しなければならない場合もあります。

このような場合、費用に先行して借入金の返済をしなければなりません。相応の収益があればよいのですが、無い場合には返済のための借入金をしなければなりません。

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◆借入金がある場合は経理担当者や会計事務所との入念な打ち合わせをしてください!

上記以外にも様々なパターンがあり出金と費用の関係が複雑になるケースがあります。借入金がある場合には、経理担当者や会計事務所と入念な打合せをしたうえで方針を決定しなければならないということです。

借入金は経営者の金銭に関する尺度を狂わせます。「入金と出金」「収益と費用」「利益と法人税」の関係が理解できなくなります。自社の利益と税金が実感と著しくかけ離れてしまうこともあります。