【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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会社の転業(必要な手続と決算申告への影響)

2021-10-16 18:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社はあらゆる事業を自由に行うことができます(所定の許認可が必要な事業もあります)。会社が行う事業は、会社の「目的」として「定款」で定めるとともに、法務局でその目的を「登記」しなければなりません。設立当初に定めた目的と違う方向に会社が進むことも当然あります。その場合には、定款の変更をして登記もしなければなりません。

◆目的を変更した場合の登記は必ずしなければならないか?

会社法上、取締役(経営者)が定款で定めた目的以外の行為をした場合、株主はそれを差し止めることができます。しかし、中小零細企業では「経営者=株主」であることから、このような差し止めはありえないので、会社の目的を変更してもその登記をしていない会社があります。

金融機関から融資を受ける際の審査では、会社が行っている事業内容と登記上の目的との照らし合わせが行われます。補助金の申請も同じです。許認可の申請にあたっては、会社の目的に許認可業務が記載されていることが必須です。

実際の事業内容と登記されている目的が異なるような会社は信用を得られません。やはり、中小零細企業といえども、会社の目的を変更したのであれば新たな目的についての適切かつ適法な表現(言葉)を考えて、速やかに変更の登記をしなければなりません。

◆目的の「追加」と「削除」

目的は全面的に見直す必要はなく追加や削除も可能です。事業内容というのは、ある日を境に全面的に変わるのではなく段階的に変化するからです。

◆税務への影響と必要な手続

会社の事業内容が変わると税務処理も変わることがあります。例えば、消費税の申告で「簡易課税」を選択している場合には「事業区分が変更」になることがあります。「貸倒引当金の法定繰入率」が変更になることもあります。従来どおりの処理を機械的に続けているとミスをしてしまうことが随所にあるのです。

◆決算書の内容が大きく変わることも

事業内容が変わると決算内容が大きく変わることがあります。新たな勘定科目が出現する、特定の勘定科目が大幅に増減する、今まで金額の大きかった勘定科目が消えるなど、まるで別の会社の決算書と思えるような変化が起きます。

経理事務も変わりますので体制の見直しを強いられます。経理担当者には新たな事業についての税務や会計の知識が求められます。また、金融機関や税務署へも説明が必要ですので、想定される質問への回答を用意しておく必要があります。

◆商号(社名)は変更すべきか

商号(社名)が会社の事業内容を表しており、事業内容の変化によって商号がマッチしなくなった場合には商号の変更も検討しなければなりません。ただし、商号は変更を強制されているわけではありません。

◆目的変更ではなく新会社(別会社)を設立するという選択

上記のとおり、会社は状況に応じて事業内容を見直し、定款の目的も変更することができます。しかし、これが諸般の事情でできないことがあります。「取引先との関係」「許認可(兼業の禁止)の要件」「公的融資や補助金の対象業種」などで制約を受けてしまいます。

このような場合には、目的変更(追加や削除)ではなく新会社(別会社)を設立しなければなりません。

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