【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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赤字のときの税金対策(役員報酬を減額する)

2021-09-17 18:01:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社が赤字のとき、中小零細企業の経営者は役員報酬の減額を考えます。ほとんどの場合、「法人税率>役員報酬(所得税)の税率」であることから、一定の役員報酬を取って(役員報酬に関する税金を払い)利益を減らし法人税を抑えるほうが得です。しかし、赤字になれば法人税は課税されませんので、役員報酬で利益を減らす必要がなくなります。

◆役員報酬(役員給与)の変更に関する法人税のルール

役員報酬は月額で支給しますが、その支給額は一定期間定額でなければなりません。役員報酬の変更は事業年度開始の1か月目から3か月目までにしなければなりません。例えば、事業年度が1月から12月の会社は、1月から3月までの間にしか役員報酬を変更することができません。

このルールに反して役員報酬を変更した場合には一定額が「損金不算入」となります。損金不算入とは、決算書においては費用として処理されるけれども、法人税の計算においてはその費用を利益に加算するということです。

事業年度が1月から12月の会社が7月に役員報酬を月額100万円から80万円に20万円減額したとします。この場合、1月から6月の各月に支給した100万円の内20万円の合計120万円(6か月分)は損金不算入になります。

◆生活費は?

役員報酬というのは経営者の生活費です。会社からの役員報酬だけで現状の生活水準が維持できない場合には生活水準の見直しが必要となります。

◆役員報酬の減額には社会保険料が減るという効果も

役員報酬を減額すると社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険の保険料)が減るという効果もあります。社会保険料については、「年金事務所」での手続が必要となりますので忘れないようにしなければなりません。

◆役員(社長)借入金の返済(費用にはならない=利益の減少要素でない)

役員(社長)借入金がある場合には、役員報酬以外にこれを会社から引き出すことができます。役員(社長)借入金とは経営者(代表取締役という役員兼社長)が会社に貸している資金です。会社からすれば借りている資金です。会社はこれを経営者に返済しなければなりません。

役員(社長)借入金に関して注意しなければならないのは、会社が役員(社長)借入金を返済してもそれは費用(利益の減少要素)にはならないということです。会社の資金が減るのに不思議に思うかもしれませんが、借入金の返済は負債の減少ですのでこのようになります。(返済を受けた経営者の所得にはなりません。)

◆生活費の会社経費への混入(調査対象に選定される可能性が高まる)

利益の出ている場合もそうですが、生活費を会社経費に混入しようとする経営者が後を絶ちません。役員報酬として生活費を引き出すと所得税と社会保険料が増えることを避けるための「愚策」です。

税務署は不自然な経費の推移に敏感です。特に「交通費」「交際費」「消耗品費」「雑費」などに生活費を混入したということは如実に表れます。生活費を会社経費に混入していると、業績が回復する頃に税務調査の対象にされる可能性が相当高くなります。

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★役員報酬ゼロ
役員報酬はゼロにすることもできます。ただし、それには会社から生活費を引き出さなくても大丈夫だという裏付けが必要です。十分な年金収入や不動産賃貸収入があるなどがそれです。役員(社長)借入金の返済はいずれ限界に達します。生活費の会社経費への混入は許されません。

★著しい業績悪化の場合は臨時の役員報酬減額も認められる
著しい業績悪化の場合、上記の事業年度開始の「1か月目から3か月目」というルールは適用されません。コロナ禍がこれに該当することはいうまでもないことです。

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