【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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赤字では融資が受けられない?(都市伝説)

2019-10-01 11:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
経営者は赤字を恐れます。上場企業が赤字になれば、株価は急落、株主総会は紛糾し経営者は株主から罵声を浴びせられその地位を追われることもめずらしくはありません。中小零細企業では、赤字になれば金融機関から融資を受けられない(取引銀行から見捨てられる)ということが「都市伝説」となっています。

◆赤字は「敗北」を意味する(金融機関は敗者を相手にしない)

会社は株主から出資を受けた資金を事業に投下して(費用)、投下した資金以上を回収(収益)しなければなりません。この活動(投下→回収)の結果が利益に他なりません。利益を出さなければ株主に配当ができません。会社は利益を出さなければ存続・発展できません。

赤字とは利益がマイナスの状態で、それは事業に投下した資金よりも少ない額しか回収できなかったということです。まさに「敗北」です。金融機関が赤字の会社を敬遠するのは当然です。融資をした資金に対する利息の支払いと元金の返済が受けられないからです。

◆利益は事業年度単位で計算する(赤字を次年度に挽回できるか)

会社の利益は1年という事業年度単位で計算します。この利益を計算する作業を決算、利益が表示される書類を決算書の損益計算書といいます。

赤字になった会社の経営者がスポーツの敗者のように称えられることはありません。しかし、赤字になっても次の事業年度も会社の活動が継続できるだけの資金があり、黒字化(利益がプラスの状態)が見込まれるのであれば経営者の続投もあり得ます。

◆赤字の原因

赤字に至った原因は様々で、その原因によって経営者の評価や今後なすべきことが変わってきます。

〇恒常的な赤字
赤字が恒常化している(数事業年度赤字が続いている)場合には事態は深刻です。構造不況業種、高コスト体質である場合は抜本的な改革が必要です。また、中小零細企業特有の現象として「放漫経営」というのがあります。いずれにしても、恒常的な赤字から脱出することは容易ではありませんので金融機関の評価は相当悪くなります。

〇突発的な赤字
突発的に一事業年度だけが赤字になることがあります。主力商品の大幅な値崩れ、設備の大規模修繕、多額の退職金の支払い(社員の大量退職)などを原因として赤字になることがあります。赤字が一事業年度限りで、事業の継続に支障がなければ(資金があるのであれば)問題はありません。しかし、この突発的な赤字が恒常的な赤字の始まりであることもありますので、経営者には説得力のある説明が求められます。

〇先行投資(創業、新規事業参入)
創業期や新規事業に参入する際には数事業年度にわたって赤字が続くことがあります。これを「やむを得ない」と考えるかについてはその人の立場によって異なってきます。いわゆるベンチャー企業に対する投資家(株主)は、創業期の赤字は覚悟のうえで将来的に高額なリターン(株式売却益と配当)を狙います。しかし、金融機関は目先の利益から利息を得て、最終的には元金の返済を受けなければなりませんので、創業期や新規事業への参入時でも一定の利益を出すことを求めます。

◆いわゆる黒字倒産(黒字なのに資金繰りが苦しい)

会計の書物では黒字倒産、利益が出ているのに資金が足りずに倒産することを説明しています。これの例として挙げられているのが売上代金(売掛金)の長期間の未回収です。

しかし、現実には次の二つも相当多いです。

〇商品在庫の膨張
商品を仕入れてもそれを販売するまでは費用にはなりません。「品ぞろえは多いほうが」「今、仕入れておかなければ」といって過剰な仕入を続けていると資金繰りを圧迫します。そして、急いで叩き売りをして赤字に転落するのです。

〇過剰な設備投資(土地の取得)
本社ビルや工場に多額の投資をしても、それは直ちに費用とはなりません。建物や機械は最低でも数年、長い場合は数十年かけての減価償却によって費用となります。土地は費用とはならず資産計上されたままです。過剰な設備投資は資金を固定化してしまいます(現金で回収できない)。

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★粉飾決算をしても無駄(ばれる)
見た目だけを黒字にすることは簡単です。しかし、「売掛金が多い」「在庫が多い」「減価償却をしていない」「経費を計上していない」など、どこかに「しわ寄せ」が現れ、金融機関に見破られます。

★担保提供と保証人
赤字を理由に融資をしてもらえない場合には、不動産や有価証券など(会社および代表者が保有する)を担保提供する、保証人(代表者以外)を立てることも必要です。いずれ黒字化すれば、担保や保証人を外すことも十分可能です。「融資さえ受ければ、必ず成功する!」という自信があるのであれば、あまり条件にこだわらないほうがいいと思います。

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