クモ。クモという名に変わる男。だが毎日、毎日当然にように、まだひたすら見かけだけをそのようにして帰宅する。小公園も抜けてきて帰って、運動に、健康にいいらしいから、とマンションの九階まで一段一段階段をかけのぼる。もちろんエレベーターは十三階建てのマンションだから、なくはなかった。クモの一歩一歩が見かけは敏捷。でも案外捗らないものに相違なくて、男がコセツクのはみっともないと思うが、とクモは思っていた。例外にして九階までかけのぼるが足音をひそめるのはなれている。社内でもどこでもクモはそうだったのだから。ただ腹が邪魔をした。
(つづく)
(つづく)
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