前回は在来線と私鉄のスラブ軌道分岐器を紹介しました。今回は新幹線に的を絞りたいと思います。
スラブ軌道は新幹線の殆どの路線で採用されていますが、スラブ軌道分岐器は今のところ東北新幹線と上越新幹線でしか見ることができません。
初めて敷設されたのは山陽新幹線の新倉敷駅構内になりますが、この分岐器は直線側の高速走行試験の後に撤去されています。
※カッコ内の数字は分岐器の数ではなく、場所と種類を区別するための便宜上のものです。
(0) 小山駅構内
新倉敷駅の試験敷設の結果を踏まえ、東北新幹線の前身である小山試験線に片開き分岐器が1台設置されました。この分岐器は今も現役で使用されています。
軌道スラブは37枚で構成されており、特にノーズ可動部の軌道スラブは独特な櫛形をしています。
トングレール部は電気温風式融雪器が設置されており、耐寒耐雪仕様であることが見て取れます。
(1)東京新幹線車両センター分岐点
西唐津や尼崎センタープール前と同じ構造ですね。左右の突起で軌道スラブを挟み込む形態です。
本線の勾配区間の途中から分岐していて、上りと下りで各1台ずつ設置されております。
(2)盛岡駅構内(いわて沼宮内方)
岩手沼宮内方は片開き分岐器は突起無しでした。湖西線の近江舞子や大津京と同じタイプですね
(3)盛岡駅構内(新花巻方)
新花巻方の両渡り線に変な形の軌道スラブを見つけました。
桁の継ぎ目とスラブの継ぎ目を合わせるため、専用の形状に成型して設置されています。
(4)北上駅構内
仙台方の分岐器が全てスラブ軌道でした。突起無しで片開き3台と片渡り線が1つです。
盛岡方の分岐器が全てバラスト軌道なのは、高架の直下に住宅が多いためではないかと思います。
全て突起がないことから(2)盛岡(岩手沼宮内方)と同じタイプです。
(5)仙台駅構内(古川方)
電気温風式融雪器がメカメカしくて美しい。トングレール部に突起がありませんので、(2)と同じ構造の分岐器かと思いきや、リード部は(1)と同じ両側突起支持です。しかし突起の形状が丸ではなくカマボコ形です。
(1)はトングレール部まで突起がある軌道スラブですので、(5)は折衷版といった感じでしょうか。
(6)仙台駅構内(白石蔵王方)
高架の目地に合わせた多角形の軌道スラブを発見しました。桁の継ぎ目も線路と直角になるとは限りませんので、こればかりは現地に合わせた専用形状を用意する必要があります。
(7)大宮駅構内
ダブルクロスオーバーは多数の軌道スラブで構成されており。特にリード部からクロッシングにかけては2線分に跨る細長い軌道スラブが特徴的です。締結具の数が2個~4個まで色々あります。
(8)上毛高原駅構内(越後湯沢方)
上毛高原は保線基地内を除く全ての分岐器がすべてスラブ軌道です。
上の写真の手前の分岐器は保線基地へ繋がる分岐なので、固定式のノーズです。
トングレールをアップで。在来線の分岐器に慣れているとトングレールの長さに驚きますね。
本線の分岐器は直接加熱式電気融雪器のため(4)の温風式電気融雪器と比べるとスマートです。
ノーズ可動クロッシングポイントは専用の電気転轍機で駆動していました。
余談ですが保線基地のポイントは熱風発生機という装置があったため温風式と思われます。
(9)上毛高原(高崎方)
1つ奥の跨線橋からシングルクロスを観察。上毛高原のスラブ分岐は全て突起無しのようです。
(10)越後湯沢駅構内
新潟方のダブルクロス2台がスラブ分岐器でした。形状は大宮と同じに見えます。周辺は住宅や商店が多いですが、通過列車はこのシーサスを走行しませんので騒音については重視しなくて済んだのでしょう。
(11)本庄早稲田駅構内(高崎方)
2004年に開業した本庄早稲田は高架橋に対面式ホームを外付けするような形で建設されました。
トングレール付近は(1)と同じく短尺の軌道スラブを突起で支持していますが、その先に注目
リードレール部は大きな一枚の軌道スラブを前後左右の4方向から円形突起で保持しています。
この大型スラブは中央部と外側で色が違いますね。実は本庄早稲田駅を設置する際、元々の軌道がスラブ軌道であったことから転轍機周辺を除いた部分については両側に軌道スラブを継足しする方式で施工されたのです。中央の色の濃い部分は元のA型スラブということになります。
フログには転轍機が設置されるため再び短尺スラブになり、枕木方向のみ突起で固定しています。
そして2つの線路がある程度離れるまでは再び大型スラブの4点支持になりました。
この継足しスラブ分岐器は今のところ本庄早稲田の高崎方にしかない特殊なものです。
今後スラブ軌道上に分岐器を設置する機会があれば、他の場所にも導入されるかもしれません。
(12)本庄早稲田駅構内(熊谷方)
熊谷方は掘割の土路盤になっており、跨線橋から分岐器全体を観察できました。
リード部と後端部は継足しされており高崎方と同様に既存のスラブとは色が異なっています。
土路盤用スラブ軌道では突起コンクリートを設置出来ないため水平力に抵抗する構造が必要になります。特に分岐器では大きな水平力に抵抗する必要があるため、軌道スラブ底面とアスファルト路盤上に山形鋼を配置し、てん充層で水平方向の力に対する抵抗力を得ています。
(13)上野駅構内
上野の構内がスラブ軌道なのは以前から知っていましたが、分岐器は暗闇の中のため確認の術がなく諦めていました。ところが、先日ちょうど上野から列車に乗る機会がありまして、入線する列車を眺めていたらヘッドライトの光でトンネル内をいい感じに照らしている光景を目の当たりにしました。
車両よって色味が全然違いますね。1枚目はE4系、2枚目はE6系、3枚目はE7系です。
大宮方も望遠でなんとか撮影することができました。手前の分岐器は両開きのようです。
突起は無さそうですので(2)や(4)と同じタイプだと思います。
(14)東京貨物ターミナル試験設備
りんかい線の八潮車両基地と東京貨物ターミナルの間に試験敷設された分岐器がありました。
以前も紹介しましたが、隣の線路より軌間が広く番手が大きいことから新幹線向けと思われます。
営業線で採用されているものとは構造が異なります。また、分岐側のレールは殆どありません。
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2017/11/12 加筆修正
2022/11/23 加筆修正