ある牧師から

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令和6年(ネ) 第2683号 損害賠償請求控訴事件、同第38号 同附帯控訴事件 (原審・東京地方裁判所和3年(ワ)第33995号) 3

2024年12月03日 | 法律

投稿5について

(1)社会的評価を低下させるか否かについて

ア 原判決の「第3 当裁判所の判断」の7 (1) 記載のとおりであるから、これを引用する。

イ 当審における被控訴人の補充主張について

 被控訴人は、侵害部分5 (1) につき、控訴人がビジネスとして成り立っておらず、法令遵守もされていない会社であるという意見、論評をしたものである旨主張する。

 しかし、侵害部分5 (1) においては「黙っていれば (中略) 税務署云々 「黙っていれば(中略)税務署云々からタッチできず運営」 などと記載されていることに加え、 同部分に記載された「ペーパーカンパニー」という語義にも照らすと、 前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の7(1) における認定説示のとおり当該部分は、その事業体としての実体がないかのように装っていた会社の一つであるとの事実を摘示するものとみることが相当である。

 また、被控訴人は、侵害部分5 (2)、(3)につき、本件声明等を把握している一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、これらは控訴人の社会的評価を低下させない旨主張する。

 しかし、 上記の主張は、投稿5の一般読者をクリスチャンに限定される旨の前提に立った上でのものと解されるところ、投稿5の一般読者をクリスチャンに限定することが相当でないことは、前記5 (1) イで説示したとおりである。

 さらに、被控訴人は、侵害部分5 (2) につき、宗教教義の内容は多様であるから、これを閲読した一般読者において控訴人を含む「共同体」の教えは高慢であると認識することはないから、控訴人の社会的評価を低下させない旨主張する。

 しかし、キリスト教の教義に通じていない者であっても、侵害部分 5 (2) の記載は、張牧師は一般のクリスチャンが悟っていない福音を特別に知っており、控訴人を含む張牧師の関連組織はそのことを全世界に知らしめるための活動を行っている旨を述べ、その高慢さを指摘して批判する趣旨のものであることを理解することにはさしたる困難はないから、一般読者の注意と読み方を基準としても、侵害部分5 (2) が控訴人の社会的評価を低下させることは否定できない。

 したがって、被控訴人の上記主張はいずれも採用できない。

(2)違法性の有無について

ア 次のとおり補正するほか、原判決の 「第3 当裁判所の判断」 の7 (2)記載のとおりであるから、これを引用する。

イ 原判決の補正

(ア) 28頁15行目の「課税等の負担を免れるために」 を削る。

(イ) 28頁20行目の「この点」 から 24行目末尾までを 「しかるに、前記認定によれば、 控訴人は、 張牧師の関連組織の一つであり、張牧師が設立した団体からの資金援助を受けて設立され、数年程度は、張牧師の教えの信奉者が無償でその活動に従事している時期があったことが認められるものの、 投稿5が行われた令和元年8月当時における状況は必ずしも明らかではなく、控訴人が侵害部分5 (2) が示すような、宗教上の理念 理想を 「共同体の教え」として会社組織全体で共有して事業活動を行っていたとまでは認められない。」 に改める。

(ウ) 29頁5行目の「平成20年頃まで」 を 「平成19年頃まで」に改め、6行目の「足りない。」の次に 「また、峯野牧師と直接の面識のある控訴人の役員が、 平成14年頃から平成31年頃までの間において継続的に、 異端信仰を秘して、峯野牧師を騙したとの事実を真実と認めることができないことは、 投稿4における違法性の有無に係る判断の中で説示したとおりである。」 を加える。

(エ) 29頁9行目冒頭から12行目末尾までを次のように改める。

「(エ)原記事5において、侵害部分5 (4) の投稿内容のうち「そこから派遣されタダ働きをさせられる」 との摘示事実(給与の支払を受けないまま就労していたこと)に対応するのは、 原記事5の侵害部分5(1)の1つ上及び2つ上の段落であり、これらは 「あの当時」との記載から始まることからすると、 当該摘示事実は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、 元信者が張牧師の関連組織に在籍していた当時のことをいうものと解される。しかるに、前記認定のとおり、控訴人や張牧師の関連組織の活動には、 張牧師の信奉者が 「使役」として無償で従事し、 寄付や借財を求められることがあったことが認められるから (認定事実 (3) ウ)、当該摘示事実はその重要な部分が真実に合致すると認められる。

 他方、侵害部分5 (4) の投稿内容のうち 「嘘で固めて淀橋教会に入り込んだ理由と手口」との摘示事実は、原記事5の侵害部分5 (3)段落であるところ、前記説示のとおり、 同段落は記事が作成された当時の現状として摘示されていることが表現上明らかであって、 同段落に含まれる重要な部分が真実に合致するとは認められない。」

ウ 小括

 以上により、被控訴人が侵害部分5(1) ないし(4) (ただし、 給与の支払を受けないまま就労していたことを摘示する部分を除く。以下同じ。)を引用、摘示したことについては、違法性が阻却されない。

(3)故意・過失の有無について

ア 次のとおり補正するほか、原判決の 「第3 当裁判所の判断」 の7 (3)記載のとおりであるから、これを引用する。

イ 原判決の補正

(ア) 29頁25行目の「侵害部分5 (3)」 を 「侵害部分5 (3) 及び侵害部分5 (4)」に改める。

(イ) 30頁1行目冒頭から7行目末尾までを次のように改める。

「以上によれば、被控訴人が、 侵害部分5 (1) ないし(4) を引用、摘示したことについては、過失が認められる。」

(4)まとめ

 以上により、 投稿5 (侵害部分5 (4) の一部を除く。)については、控訴人の主張する不法行為が成立する。

9 控訴人の損害について

 原判決の 「第3 裁判所の判断」の8記載のとおりであるからこれを引用する。ただし、 30頁15行目から16行目にかけての 「投稿2 投稿3及び投稿5の各不法行為」 を 「投稿2ないし投稿5による各不法行為 (ただし、上記のとおり不法行為が成立しない部分を除く。)」 に、 19行目の「本件訴え」から21行目末尾までを「本件訴えの提起に係る控訴人の弁護士費用のうち6万円を、被控訴人の不法行為と相当因果関係を有する損害と認めるのが相当である」 にそれぞれ改める。

10 小括

 以上のとおりであるから、控訴人の被控訴人に対する請求は損害賠償金66万円(投稿2ないし投稿5による各不法行為の損害金60万円及び弁護士費用6万円の合計額) 及びこれに対する令和元年8月7日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

11 結論

 よって、原判決中、上記と一部異なる部分を本件控訴に基づき上記の趣旨に沿って変更し、被控訴人の附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第22民事部
裁判長裁判官 谷口豊
裁判官 篠原淳一
裁判官 石垣智子

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