ウクレレとSwing(スヰング)音盤

Monday Stroll (1978) / Kenny Burrell With Frank Wess

1956年にSavoy Recordsがリリースしたアルバム「Opus In Swing」がオリジナル盤で、そのままFrank Wess の名義でCD化もされている。本盤は1978年にA面、B面それぞれの1曲目を差し替えケニー・バレル名義に変えてリリースした再発盤。

内容はベイシー楽団出身のリズム・セクション+フランク・ウエスのフルートに人気ギタリストのケニー・バレルが合流してのカンザス風の中間派スヰング・セッションである。ここでのお目当ては珍しい二人のギタリストの組み合わせ。もちろんケニー・バレルとフレディ・グリーンという、新旧大御所の二人による競演である。なおフレディ・グリーンには他にもハーブ・エリスやジョー・パスを迎えてのジャズギター共演盤があるがどれも楽しい演奏が聴ける。

フレディ・グリーンは言うまでもなくベイシー楽団のリズム・セクションを何十年も支えたベテランで、とにかく徹底してバッキング・コードしか弾かない。自己名義のアルバムも一枚だけあるが、そこでも絶対にリズムしか弾かないという徹底ぶり。もともと電気ギター発明以前のジャズ・バンドにおける弦楽器の役割はリズムセクションで、ディキシー時代のバンジョーに始まりのちギターへと移行した。フレディ・グリーンの場合はボスであるベイシーのピアノ、ソロを担う管楽器、ウォーキングするベース音の邪魔をしないよう、コードの構成音から最大3音、時には1音と極限まで音数を減らし、ベース・ドラムと一体となってスヰング・スタイルのグルーヴを生み出してゆく独自のスタイルで、彼のスタイルがスヰング・スタイルのビッグバンドにおけるギター奏法の標準形として現在も定着している。

一方ケニー・バレルは電気ギターを前提として管楽器の向こうを張ってソロを弾いたバップ/モダン・ジャズ以降を代表する人気ギタリストの一人。紋切り型の紹介では都会的なブルースを得意とするギタリスト、という話になるのだが実は年代によってこの人の演奏はずいぶん雰囲気が変わる。ハードバップのギタリストとしてつんのめるような高速フレーズでバリバリ突っ込んできた生きのいい50年代から、新人ながら特定のレコードレーベルの専属ギター奏者になることを良しとせず、名門BLUENOTEでの諸作と並行して競合レーベルのPRESTIGEにも続々と吹込みを行った。そして落ち着きを増しブルースやボッサノヴァのスタイルでポピュラーな人気を得た60年代はBLUENOTEでの代表作『MIDNIGHT BLUE』を完成、VERVEではギル・エヴァンスの編曲によるオーケストラを従えた大編成による音盤など意欲作を連発、ジャズの名門レーベルを渡り歩いてジャズギターのマーケットを大きく拡大した。70年代に入ると、MUSEやConcordといった中堅レーベルでの吹込みでとても内省的かつ耽美な演奏を聴かせるようになりビル・エヴァンス等とも共演、この時代も地味だが良作が多い。その後80年代はBLUENOTEレーベルの復活などもあり大御所の名にふさわしいブルージーかつ端正な円熟のスタイルを完成させた。

二人とも異なるスタイル/キャリアのギタリストだが、共通しているのは「演奏家としてのキャリアが長い」、したがって「参加している音盤の量が桁違いに多い」、にも関わらず一枚足りとも「ハズレがない」、ということは「集めだしたらキリがない」という実にコレクター泣かせな点にあると思う。この二人の共演盤として本盤のオリジナル盤である「Opus In Swing」の一年前にもう一枚、「Jazz For Playboys」というほぼ同趣向のセッションがあり、所謂ヨツギリギター/中間派ジャズ愛好家にはすべてお薦めである。

A1 Monday Stroll
A2 East Wind
A3 Wess Side
A4 Southern Exposure

B1 Woolafunt's Lament
B2 Over The Rainbow
B3 Kansas City Side

Guitar [Lead] – Kenny Burrell
Guitar [Rhythm] – Freddie Green
Flute, Tenor Saxophone – Frank Wess
Bass – Eddie Jones
Drums – Gus Johnson, Kenny Clarke

プロデュース(オリジナル) Ozzie Cadena
同(リイシュー) Bob Porter
レーベル Savoy Records
録音 Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey
December 17, 1956 and January 5, 1957

8月はスヰンギン・ギター特集として週刊更新でやってみたが、9月からはまたもとの隔週更新にて通常運行。ウクレレをはじめとしたスヰングな音盤を引き続き聴いてゆきたい。


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