ウクレレとSwing(スヰング)音盤

The Ukulele Variation (1988) / The Ukulele Orchestra Of Great Britain


ジ・ウクレレ・オーケストラ・オブ・グレート・ブリテンの1988年リリースのデビュー・アルバム。日本では「ウクレレ変奏曲」の邦題で、当初はグループ名も日本風に「大英帝国ウクレレ交響楽団」と訳された。当時の日本ではバンドブームの嵐が吹き荒れており、個性的なバンドが若者に絶大な人気を集めていた。なかには短命に終わった所謂"一発屋"も多く、このときレコード会社が日本国内での売り出しに際して名付けた日本風のグループ名も、一発屋的な打ち上げ花火を狙った感は否めない。しかしその後グループは驚くほど息の長い活動を続けることになる。リリース元はCBS/Sony。プロデュースはG.Hinchiliffe とA.Astle。クラシックからローリング・ストーンズまでタイトル通りバリエーション豊かな楽曲がとりあげられているが、日本盤CDには付属のブックレットに収録曲の解説がついている。

90年代再ブームの黎明期に、ウクレレがサブカルチャー的な取り上げられ方でメディアの脚光を浴びた背景には、彼らU.O.G.B.の貢献が相当大きかった事だろうと思われる。「ウクレレ=リゾート(ハワイ)」という既成概念にあえて背を向け、全くウクレレにそぐわない楽曲を12人の正装をした英国人が大真面目に演奏する、というアイデアは音楽的にもビジュアル的にもインパクトが大きく、ウクレレに対してハワイアンとウクレレ漫談のイメージしか持ち得なかった日本において、特に若年層の音楽リスナーに新鮮な驚きをもって支持された。

1. レッド・クロス
2. キャンディ・セズ
3. トスト・シェ・ラルバ
4. フォー・メン・ビッグ・ハッツ
5. サティスファクション
6. ビフォア・ザ・コニファー
7. ノーバディーズ・チャイルド
8. スティル・ライフ・ウィズ・ウクレレ
9. オン・スイサイド
10. プレスト・タンゴ
11. プレスト・タンゴ・ヴァリエーション
12. ヒム
13. ます
14. モスクワの夜は更けて
15. ダンス・ミュージック
16. ワイルドで行こう
17. ザ・レイバース・オブ・ヘラクレス
18. 峠の我が家

なにしろジャケットのビジュアル・デザインは英国のお洒落系ロックのアルバム・ジャケットのようだし、メンバーにフライングV型の変形ウクレレを持った人がいる(ジャケット写真でも壁にかかっている)とか、裏ジャケットのメンバー顔写真の中に何故かデビッド・ボウイにそっくりな人が混じっているとか、そうした突っ込み所も興味をそそる要素となった。何よりも「ウクレレでこんな色々な曲を弾いてもいいのか」とか、「特にテクニックはなくともけっこう色々弾けるものである」、といった驚きが目からうろこで、これなら何か自分にも出来るのでは、といったベクトルに多くの人の関心が向かったのは自然な流れであったろう。

その後、世界中で彼らのスタイルを真似た(或いは何らかの啓発/影響を受けた)ウクレレ・オーケストラが出現し、それぞれに楽しんで活動しているのは素晴らしい事だが、本家の彼らが単なる洒落で短命な活動に終わることなく、長期にわたって大真面目に息の長い活動を続けている事には頭が下がる。
一番下段の右から二人目の人が、どう見てもデビッド・ボウイにそっくりなのである。
(たまたまこの写真が奇跡の一枚だったのか、実際に似ていたかは知らない)

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