プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< ミス・ポター >

2007年09月26日 | ☆映画館で見た映画。
レニー・ゼルヴィガーがベアトリクス・ポター役ってのは一体どうなの?
だってゼルヴィガーってドイツ人でしょ?「シカゴ」で見た時はマリリン・モンロー風お色気女だったし。
まあ、「ブリジット・ジョーンズ」なんかもやっているらしいから、芸風はけっこう広いのかもしれないけどね。
……と、事前に気がかりを抱えていたわりには大変楽しめた映画。


わたしは何しろイギリスもんにはとても甘くて……。
舞台が100年前のイギリスってだけで、アッパーミドルの生活をたっぷり映してくれるってだけで、
もうある程度のことは許せてしまうんだよなー。

特に今回はユアン・マクレガーだし。
わたしは「エピソード1~3」と「ムーラン・ルージュ」でしか
この人を知らないので演技的な真骨頂はよくわからないんだけど、見ている分には実に可愛い。
いい役者かどうかというのとは全く別の所で、シンプルにチャーミング。
アップの顔の快さでは、わたしの中では一番の役者かもしれない。
ただでさえ可愛い彼がこの作品では実に可愛い役どころなんだから、文句はありません。

ゼルヴィガーは、こういってはなんだが、ブサカワでしたな。
語弊はあるけれども、言うなればイギリス女の野暮ったさにぴったりだった。
イギリス英語もがんばっていたようだし。……わたしはドイツ人だと思っていたけど(名前でね)、
この人アメリカ人なんですね。ある意味イングリッシュオブイングリッシュであるポターに、
どうしてドイツ人を起用するのか、という疑問は解消された。(……か?)


まあとにかく役者がラブリーな映画でした。外見的にはユアンが見目良いくらいで、
あとはほとんど美男美女が出てこない。でもそれぞれの役者が過不足なく演じていてくれて雰囲気が良い。
1つ指摘をするなら、監督は表情を実に可愛らしく撮っている。
それも主役ばかりではなく、脇役も含めて。たとえばポター家の使用人たち。
クリスマスパーティの時、メイド二人がベアトリクスの話を聞く時の嬉しそうな顔、
ベアトリクスが部屋に閉じこもった時、食事を運ぶメイドの心配顔。
ささいな部分だけれど、どの表情も良くて、ここは監督・役者のお手柄。

エミリー・ワトソンの瞳の奇妙さも、パパ・ポターのあのものすごい頬髯&父親の愛情も
魅力的に撮れていると思う。見ている間に「ああ、ここいいな」と感じるというのは、
実は次善の出来なのかもしれないけれど(ほんとに引き込まれていたら、そう思う冷静さも
ないかもしれない)、こういう風に思わせてくれる監督は好きだ。


いや、そりゃね。映画としては、最後のあの尻切れトンボはいかがなものかとは思うよ。
あそこでストンと終わらせるのも、たしかに1つの方法だとしてもね。
ただしあれは奇手。王道ではありません。頻繁に使うものではない。
まあ、ポターの生涯、後半はどっちかというと農業方面にシフトして、
映画的にロマンティックじゃなくなるから仕方ないのか。


※※※※※※※※※※※※


一度だけ行った湖水地方は、6月末だったけれども寒くて観光客もそれほどおらず、静かなところだった。
とはいえ観光地なだけに、映画よりずっと人くささは漂うんだけれども。


映画を見ると、その道を歩いたことを思い出す。牛のすぐ脇を通って行く道とか、
牧草地の境の低い石垣を乗り越える階段とか。湖を味もそっけもない船(?)で渡ること、
冷たいくらいの風、どんよりと重い灰色の空。
それは感銘を受けるといった方向ではない、単なる、といえば単なる思い出の風景だけど、
その思い出が心の風通しを良くしてくれる。風の吹き過ぎる通路だ。
そういうものを蓄積するのが旅。旅が好きだ。


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