プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ メアリー・マッカーシー「アメリカの鳥」

2022年01月18日 | ◇読んだ本の感想。
読み終わってからようやく知ったが、……おお!「グループ」の著者か!
全然気づかなかった。

えー、どんな話でしたかね……
こういう話といいにくい、主人公の思索というか考察が延々と続く話でしたな。
だが年齢が15歳から19歳の間にかけて、という子ども期間なので、
思索の展開もそこまで形而上的にならずに読める。
といっても最終盤の教授との論戦はわけわからんかったけど。

面白いかといわれると面白くはないんだけど、続けて読める程度に
読みやすかったのは有難い。ワクチン接種で発熱していた日に読み終えた。

前半は、母親を中心にした自分の周囲の世界の考察。
後半は、フランスに留学してからの自分の目から見た世界の考察。

考察はそれほど深くない――大きな山としてテーマを立てるというよりは
細かいいろいろを連ねていく形。おかげでついていきやすいが、
心に響くというタイプではないんだよなあ。

面白かったのは、お母さんが守旧派で、急激に安易さに流されるアメリカの現状に
不満を示すこと。尾頭付きの魚が売ってないこととか、普段の招待料理に
前菜が出されなくなったこと、手作りジャムを作る時に使っていたガラス瓶が
もう見当らないこと、鶏も丸々一羽は手に入らないこと――

過去ではあるけどそれほど遠い過去ではない1960年代、アメリカは
いろいろな便利なものを発見し、それに伴って古いものを捨てていった。
大量消費、大量廃棄が始まった時代の始まり。
それに怒りや悲しみを覚えていた人もいたんだ。


後半で印象的だったのは、アメリカがベトナムを爆撃したことに、主人公はじめ、
同年代の若者が一様にショックを受けたこと。

ベトナム戦争に知識があるわけではないので、単に賛成派と反対派で
争っているだけだろうと思っていた。
しかし賛成と反対を叫ぶ若者とは別に、遠くで見守っていて、
実際に爆撃が始まったらショックを受ける――そんな人々も当然ながらいたんだ。

わたしはアメリカが9.11のあとイラクを空爆した時、悲しみ怒り、恨んだ。

でもわたしは自分の立場に安堵もしていた。
もしこんな愚行をした国が自分の国だったら。心底情けない、
やり場のない悲しみと恥ずかしさを永久に持ち続けなければならないだろうと思い。
(日本だったらこんな選択をするはずがない。それは善悪を判断する理性ではなく、
他人の顔色を窺う国民性の故)

なので、アメリカを恨むだけで済んだ。済ませた。

が、この作品の主人公(を含む若者)は――自分の国の行動としてそれに
向き合わなければならなかったのだ。
その時の無力感、その無力感を味わわせた国の国民であること、脱力感、虚無感。
わたしは共感した。あの時のことを思い出して。


まあ他にもいろいろこめんどくさいことを書いているので、
そのうちのいくつかでも共感出来る、面白く思うことが出来れば、
この作品は読めるだろう。早く読み終えたいなと思いながらではあったが、
とにかく読了出来て満足だった。



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