プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

<花よりもなほ>

2006年06月13日 | ☆映画館で見た映画。
【丁寧に丁寧に作られた作品。】

好きだなあ、これ。
監督は「誰も知らない」を撮った人。前回とはうってかわって、今回は時代劇。
いや、時代劇を撮るとは思わなかった。でも、なかなかいいんですわ。

前回が「現代社会の病理」が前面に出ていたので、今回ののんびりぶりは意外といえば意外。
でも、中身は共通ですよね。「誰も知らない」だって、たまたま問題提起にも見える素材を
持って来ただけで、あれは実はそういうものではなく。実は監督の、当事者への
「よくがんばったね」という慰めとしての映画だと思ってます。わたしは。

優しいなあ、と思う。画面を見てて。
ものすごく、丁寧に撮っている。役者がもうねー、みんな可愛いよ!!
全然可愛くない上島竜兵とか、千原靖史なんかからも可愛げが滲み出るんだから、大したもんだ。
こういう風に撮られたら、きっと役者は嬉しいだろう。

質量ともに、けっこうな役者を使いこなしてますよね。
有名どころもずいぶん出てるし、下手するとかなりバランス悪くなりそうなのに、
主役、脇という区別をしたくないくらいに満遍なく見せ場を作っている。
香川照之、浅野忠信なんかは実に贅沢な使い方。浅野忠信の役は別として、
香川照之の役なんかは、彼ほど達者な人じゃなくても良さそうな役ですよ。
でも、そこで香川照之を使うことで、厚みが増すんだよなあ。うーん、いい。

岡田准一は役者としていいと思います。あんまり幅は広くないが。
「タイガー&ドラゴン」のがなり役は、正直損な役どころではあったけど、
こっちの監督にはすごく合うんじゃないですか。じっくり系がいいでしょう。
アップの、表情の演技を多用するから、いいところを引き出してもらえる。
この人、もっと背が高かったら、もっと役に恵まれてたでしょうねえ。

岡田准一と子役の二人は、特に可愛く撮ってもらっていたと思う。女優よりも。
柳楽優弥のことも考えると、もしかして監督は美形好きなのか!?

画面も良かったなあ。
石橋蓮司と連れ立って長野に帰る道中、池だか沼だかで手を洗うところ、風景がきれいで涙が出た。
井戸がえの時の、あの明るさ、賑やかさ、晴れやかさ。
寺島進が足の何だかを結びなおす時の、ぱきっとした直線の画面、すっきりきっぱり。
ひょっとこのお面を被って、浅野忠信をやり過ごすところ。左右の鮮やかな風車。
その他色々。

最初の長屋の俯瞰、「ここまでぼろぼろに作るなよ~」と思った。あまり醜いと見てて辛い。
が、段々見ていくうちに、ぼろぼろでも、それほど醜くくはないかと思えて来る。
衣装も、最初は汚れきった着物が気になって気になって仕方ないんだけど……
段々それを着た人間の方に目が行って、平気になって来る。
汚さの中にも、節度があるというか。ただ汚くしただけじゃない。

個人的にはおおむね大絶賛なんだけど、でも気になるところはある。
前半あそこまで丁寧に話を進めたのだから、宮沢りえの仇の部分も、もう五秒でいいから、
なんらかの画が欲しかった。そで吉とおりょうの部分も、もう少し説明して欲しかった。
「糞を餅にする」の宮沢りえのシーンは、ちょっと納得できないなあ。
あそこであんな風にわたわたと、彼女に代弁させるのは違和感。
あまりに軽すぎて、ちょっと白けた。この辺が惜しい。

わたしは今まで、映画監督を好きだと思ったことはないんだけど、
この是枝裕和監督は好きかもしれない。対象を見る目の温かさを感じる。
また時代劇見たいなあ。「誰も知らない」も良かったんだけど、能天気な話じゃないと、
複数回見るのは辛くて。これはもしかしたら、DVDが欲しくなるかも。

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4 コメント

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Unknown (どるしねあ)
2006-06-25 20:42:07
またまた失礼します。



私も、コレ観に行きました!

良かったですね。

完全にコメディだと思っていたのでちょっと意外だったけど

岡田君、いい役者になったなぁ・・・としみじみ思ってしまいましたw



>石橋蓮司と連れ立って長野に帰る道中、

>池だか沼だかで手を洗うところ、風景がきれいで涙が出た。



あのシーン綺麗でした!

もののけ姫みたい~と思いつつ。

この前にダヴィンチコード観たので

映画全体の雰囲気を味わいながら観れました。

ダビンチはジェットコースターみたいで・・・







ただ私は宮沢りえが周りから浮いているのが気になってました。

正直りえちゃん目当てで観に行ったようなものだったので

ちょっとうーんって思いつつ・・・スタッフロールが綺麗だったので

まぁ、いっか、と。

単純なんで。



「誰も知らない」観たことないので観てみます。

失礼しました~
返信する
Unknown (umeko)
2006-06-26 19:53:42
毎度ありがとうございます。



わたしは宮沢りえ、「浮いてる」とまでは思わなかったのですが、

たしかにもっと美しく撮れるはずですよねー。

女優に対してはけっこうあっさりだと感じた。

岡田、及び少年たちへの丹念なカメラワークに比べると。

田畑智子は好きな女優なので、もう少し目立たせてあげて欲しかったような。



ところでお伺いしたいのですが、



>前半あそこまで丁寧に話を進めたのだから、宮沢りえの仇の部分も、もう五秒でいいから、

なんらかの画が欲しかった。

>そで吉とおりょうの部分も、もう少し説明して欲しかった。

>「糞を餅にする」の宮沢りえのシーンは、ちょっと納得できないなあ。



のあたりについて、どう思われます?

あの仇の話はとても唐突に感じませんでした?

後半ちょっとばたばた気味だったのではないかと……



「誰も知らない」は優しみのある映画ですが、根本的にはかわいそうな話ですので、

その辺は覚悟しておいて下さい(^_^;)。

「ストーリー」って感じじゃないので、その辺が引っかかる人もいるかもしれないなー。

好みが分かれる映画じゃないかなと思います。

と、予防線を張っておく(^_^;)。
返信する
Unknown (どるしねあ)
2006-07-01 01:02:08
こんばんわ。



>前半あそこまで丁寧に話を進めたのだから、宮沢りえの仇の部分も、もう五秒でいいから、

なんらかの画が欲しかった。

>そで吉とおりょうの部分も、もう少し説明して欲しかった。

>「糞を餅にする」の宮沢りえのシーンは、ちょっと納得できないなあ。





確かに!!

前半がホントに丁寧でしたもんね。

あの辺のストーリーを切り捨てて本編だけ・・・

というのも考えましたが

そで吉の話が無いのも寂しいからと思いつつ

仇のトコも、前振り無くきて驚きました。



「糞を餅にする」ありゃあ安易かと。

語らせなくったって十分伝わるよ?って。

監督的に伝わらないと思ったのかなぁ・・・と思いましたけど

ちょっとあれは残念でした。



でもこういう映画は好きですw

「誰も知らない」覚悟して観てみます。



いつも読書や映画レビュー楽しみにしてます。

がんばってください。

ではでは。
返信する
Unknown (umeko)
2006-07-02 00:14:28
ご返事ありがとうございます。



そで吉のところは、けっこうとってつけた話でしたよねー。

でもキャラクター自体は良かったし、何もなしですますのは

勿体ない、というところはあったのかな?

このへん惜しいですよねー。あの程度で終わると、

「ええ?じゃこれからあの人たちはあのまま?」

って感じになっちゃいますし。



定期的に訪れてくださってありがとうございます。

昨日ちょっとだけ不運なことがあり、多少気を腐らせていました。

(そんな時に我がヤクルトも惨めな連敗……。泣きっ面に蜂……)

が、励ましていただいて少し復活(^o^)。タイムリーでした。



ついでにヤクルトもココロの片隅で応援してやってください。

(↑おいおい、それは望みすぎ(^_^;))

今後ともよろしくお願いします。

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