プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

☆< スパイの妻 >

2020年11月18日 | ☆映画館で見た映画。
劇場で予告編を見た時に若干食指が動いたんだけど、
でもシリアス系の映画は好きじゃないしな。
蒼井優、高橋一生は良さそうだが、東出昌大も出てることだし、止めておこうと思った。

が、気を変えて見に行ったのは、わたしがふだん聴いているラジオのパーソナリティが
「見るべき一本」と言っていたから。

この人はかなり映画を見ているらしく、
映画についていろいろコムズカシイことを喋っている。
「きっとこの人とわたしが同じ映画を見ることはないな」と思ってたが、
その貴重な機会なのか、もしかしてこの映画は。
と思ったので急遽見てみることにした。


で、その結果。








面白くなかったですねえ。

ハードルを上げ過ぎたということはある。
ラジオの中でだいぶ褒められていたからさ。普段辛口なその人が褒めるんだから、
相当な名作を期待してしまった。事前情報を入れずに見たらもう少し印象は良かったかも。
とはいえ、そのラジオを聴かなければこの作品は見てないわけで。



根本的に、わたしはこの作品、脚本に納得できないんですよね。




以下、ネタバレ……の方向に行くかもしれない。




脚本の根本的な、の前に。
まずわたしはかなり細かい。創作物に対して重箱の隅をつつくような見方を
してしまって、楽しむ能力が足りないといつも思う。

今回はまず、東出昌大の軍服姿でした。
軍服のサイズが合ってなかった。ダボダボな感じ。
背中側から見た時、とりわけ決まらない。

軍服はきちんと着ることを求められる最たる制服ですよね。
それをダブダブに着ているということは、この人は軍人としてひねった何かが
あるのではないか?と考えた。(今確認したところ、特高警察でした)
そしたら別にひねったところなかったですもんね。単にサイズの合わない服を
着せられていただけだった。

そうなると、あー、もしかして現実の苦労で痩せて体型が変わったのかも……
という要らぬ想像をしたりして、映画の世界に没入出来ない。
だからスキャンダルがあった役者の作品は見たくない。気が散るから。
猫背に見えたのは錯覚?もうちょっとピリッとやって欲しかった。


次に、自宅の室内装飾に違和感があった。
裕福な生活をしているわりにはだいぶ寂しげで、それにも何か意味があるのかと
勘ぐった。たとえば実は夫婦仲は良くないとか、実は会社が思わしくないとか。
そういうのをミスリードに感じてしまうのは仕方ないでしょう。

これはどうも、素直に予算が足りなかった模様です。
予算が足りなくても、もう少し家庭のあったかみとか出した方が良かったのでは。

中盤くらいで、蒼井優が高橋一生を問い詰めているシーン。
食べているのは夕食のメニューっぽいんだけど、光は夕暮れの光。
それで人物の顔は光と影の強烈なコントラストが出来て、それを狙ったのは
わかるが、そのライティングで夕食を食べるってのが納得できないんだよなあ……。
電気つけるでしょう、普通。と思ってしまう。
コントラストをつけたいのなら、なぜ紅茶ではいけなかったのか。
もっといえば飲食シーンじゃない方が良かったよ。食べながらする話ではなかろう。

そういう細かい部分を乗り越えて欲しいのだ。



が、この映画の脚本にはそういう重箱の隅よりもいろいろ納得できないところが。
最大の問題は蒼井優の変心。
関東軍のフィルムを見ただけで、甥っ子を生贄にするほどの変心は無理があった。

それに甥っ子が確定したら、高橋一生に対する嫌疑はさらに深まるのであって、
決して軽くはならないんだよね。

そのフィルムを映すのならまだしも……って、内容的に映して欲しくないけれども、
フィルムの内容を知らないこっちには全然インパクトがないから、へ?と思ってしまう。

せめてフィルムにそんな衝撃の役割を負わせるならば、もっとうまくやらないと。
高橋一生に死体の山の話をあらかじめさせるのはインパクト減。

これだってわたしは、「そもそも実は蒼井優の方がスパイだったのでは?」と
考えましたよ。どんでん返しがあると聞いていたので、蒼井優が実はスパイという
展開は当然ありだと思った。でなければ変節が激しすぎて不自然。


そしたら、この映画最大のどんでんはあれですからね。
全然インパクトがなかった。もっとA級を期待していた。
っていうか、高橋一生にしてみれば当然の行動だよね。
最後まで気持ちよくだまされてあれだったら気持ち良かっただろうけど、
蒼井優の前振りがダイレクトすぎて。

そして、あの状況で白昼堂々、夫婦二人が自家用車で港に向かうってあり?
特高が目をつけているはずでしょう。まさか黙って出国させはしないでしょう。
せめて夜陰に乗じて、とかするべきだったのでは……

白黒の写真をたった一枚、数秒見ただけの女が夢に出て来るにしては、
あまりにも鮮明すぎるんだよなあ……。これは重箱ですか。
精神錯乱を装ったとしても、拷問もせずに精神病院に入院させるだけなんて、
特高はそんなに甘くないと思いますよ。女だからって手加減しないと思いますよ。

他にもいろいろあって、脚本が受け付けない。雑。

あ、そうそう。細切れに話を繋げて、観客に「え?え?どんな状況?」と思わせて
あとから説明していくという手法は嫌い。
いや、手法としてはありだけど、それも数の問題ですよねー。
3つ、せいぜい4つくらいなら積み重ねるのはいいが、
5つ6つと続いていくと、興味が続かない。のれない。
だから東出の制服に気が散ったりしてしまうのだ。


それに対して役者は健闘してました。
ものすごく良かった!というわけではないが、蒼井優も高橋一生もまずは文句なく。
見ていて楽しかった。ちゃんとした役者さんの演技。

まあ舞台的な演技は好き好きですけどね。これは演出側の問題。
わたしは蒼井優の無駄な動線が気になって微妙だったが。
特に山で東出昌大に会った時、なんでわざわざ向こう側にまわって
頭を下げる必要があったのかと疑問だよ。重箱ですか。
そもそも山で会うってのも変じゃないか?山に行かせるのが唐突で……
ウィスキー?を飲んだ時の蒼井優の動線も変だった。

昭和初期の女優さんの演技を写したのは面白い試みだったと思うが、メタですよねー。
女優の演技は演技であって、昭和初期の奥様の喋り方とは違うと思う。
それをわざわざさせる監督の目的が今一つ疑問。


良かったところはね~~~~……
蒼井優と高橋一生と蒼井優の衣装ですね。でも後半はダレてダレて、退屈だった。
映画館でも途中で2人くらい退席していました。気持ちはわかる。


ただ、パーソナリティが褒めていた、横にナメるワンカットのカメラワークなどの
良さには気づかなかった。わたしが見えない良さもあるんだろうと思われる。


次は「新解釈・三国志」だー。予告編見たけど、相変わらず馬鹿だねえ。
楽しみ。でも手を抜いたユルさだったら容赦なく批判するぞ!

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