プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ マイクル・ムアコック「メルニボネの皇子」(永遠の戦士エルリックシリーズ1)

2021年08月08日 | ◇読んだ本の感想。
ひさびさーにビッグファンタジーを読んだ。
苦手かもなあ、と思いつつ手を出したのは、訳者:井辻朱美がゆえ。

井辻さんは作家としては寡作だけれども、作品は好きだった。
何よりも好きなのは「風街物語」。ファンタジーは好きなような嫌いなような、
微妙なジャンルだが、この作品は本当に好きだった。生涯の10作に入る。

でも彼女の仕事は創作よりも翻訳に向かう。
いや、いろいろやっているんですけれどもね。驚くほど。
短歌、ドイツ語、ヴァイオリン、文学部教授、茶道准教授、日舞名取……
全部ひとかどの人になっていて。はは。ははははは。笑うしかない。


※※※※※※※※※※※※


翻訳の功徳か、この作品は面白かったですねえ。
話に多少の難はある。何よりも大きな疑問なのは、
なぜ王国をほぼ敵である従兄弟に預けて、許嫁まで預けて、放浪の旅に出るのか。
殺されかけているんだし。留守の間に何があっても文句はいえないと思うが。

納得出来ないストーリー展開はちょこちょこありつつ、
なかなか引き込まれて読んだのは、その鮮やかな幻想世界が愉しかったから。
こういうのがフィクションの醍醐味だよなあ。別な世界に入り込む。

キャラクターは格調高く。しかし人間味がないわけではなく。
流麗で美しいが、しかし欠点がないわけではなく。
理想形とはいえないけれど、魅惑的なキャラクター。

これ、やっぱり井辻朱美が翻訳した意味がある作品なんだろうなー。
幻想の世界の言葉遣いは繊細で、言葉一つで世界に命が宿ることも、
無味乾燥な無機物になってしまうこともある。
これは作者の世界に同化することが出来る、そんな幻想性を備えた
翻訳者だからこそ到達出来た世界の美しさだと思う。

あれですよね。山尾悠子翻訳参加のジェフリー・フォード「白い果実」。
山尾悠子は金原瑞人と谷垣暁美との3人共訳だし、井辻朱美の翻訳と
同列に並べるべきではないかもしれないんだけど、しかし読んだ面白さは
この2作、同質なものを感じる。
確かな翻訳者によって変容した物語の幸福。


面白かったとはいえ、間を空けると内容をすっかり忘れそうなので、
これは詰めて最後まで読まなければなるまい。
が、こういう濃密な世界は食傷する恐れもある。
ファンタジーとはいえ、若干SF風なところもあるので余計。
2冊ずつ借りてこよう。そうしよう。

だが問題なのは、図書館にエルリックシリーズが2系統あり、どちらも数冊の
シリーズだが不幸なことに間がどちらも1冊ずつ抜けてる……。多分紛失だろう。
そして巻名などからどっちにどの内容があるのか、推察することが出来なかった。
おそらくこう繋がるのではないかと思ったものを適当に予約してみたが、
これで順番に読めるかなあ。
時々、同じ作者が書いた同じ名前の作品で、新作と旧作が別の作品になっている
ようなものもあるものね。

まあとにかく飽きずに読みたい。多分シリーズ6作くらい。
アルビノのエルリック皇子。わたしの中では彼はDQWの魔法戦士装備を着ています。


今後、井辻朱美の翻訳作品の主だったものを順次追っていく。
おそらくハイファンタジー系統だろうから、どこまで追えるか自信はないが。




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