超音波システム研究所 Ultra Sonic wave System Institute no.154
技術講座「振動と騒音」
これまでの設計において
最も重要な影響を受けた
振動に関する技術を
技術講座「振動と騒音」として紹介します
技術講座「振動と騒音」資料
振動とはなにかーなぜ起こり、どう克服するか
リチャード・ビジョップ著
(ブルーバックスB-471)
序
工学者は、物をつくり、
それを正しく機能させることで満足してきたのである
そして、工学者はずさんな考えが生む危険と、
一方では正確なほぞ穴に見られるよ
うな科学的厳密さを追求すると言うみちを歩んでいる。
機械工学の重要な一分野のほとんどすべてを、
この小冊子で記述してみようと思っている
1)振動・それは敵か味方か
トマス・ヤング「・・・難解で複雑な方法で取り扱われ、
音楽などに関連して常に単なる娯楽と結びついていた」
「機械的」振動に限る
1)技術的手法、
2)音・騒音・生理学的面での振動、
3)詳細な説明 を省略する
タコマ峡の吊り橋
石油用のはしけ
真っ二つに破壊したタンカー
ナットー部品のわずかの幾何学的不正確さが、振動を引き起こす
疲労破壊、応力集中、
大企業は良く調べられた振動問題の見本を多く持っている
有能な工学者は、よく振動のことを知っている
振動の性質
Hz「ヘルツ」 調和分析 正弦波 位相
きれいな曲線の組み合わせで、複雑な波形が作られる
位相差 うなり現象
流体の中の物体が金魚の尾のように左右に振れる
運動に直面した物体の能力についてある程度知っておくべきであろう
振動のもっとも重要な性質に「振動数」がある
振動に対する金属の抵抗
変動応力 静的荷重 疲労
剛体の振動
物体の組み合わせられたものの重心が振動しているならば、
ニュートンの法則により、
何らかの作用によりこの系に変動する力が加わっていると言うことになる
軸の重心は正確には中心軸上にはないー変動力
ようどうを止める為、
回転体はつりあい試験機でつりあいをとらなければならない
*重心軸と図心軸ようどう運動は単純である*
機械振動はもっと複雑である
変形を無視できるとは限らない
まとめ 複雑であるが、身近で、面白味がある(興味と関心の問題)
2)自由振動とはなにか
外乱が加わった後に、自分自身で自由に振動する
物体だけが振動する自由振動は工学で関心が持たれていないが
間接的に非常に重要である
自由振動をする系によって示された挙動は、ある種の個性を示し、
系の動的個性はあらゆる状況下での挙動を決定する
ハンマーでたたかれたピアノの弦は自由振動をする
1)質量を持つ運動エネルギー、
2)位置の移動によるエネルギーを保存する
系の質量や剛性に関する十分な知識があれば
その振動数を計算することが可能であろう
チェーンの例
チェーンはそれぞれ振動数に対応した一連の振動波形を有する
この波形は「モード」、モードは振動数と運動の減衰率に関係している
物体が変形したときにエネルギーを貯える
(温度上昇 モード形、振動数を変える)
減衰のない想像上の系を考えると、
系の質量と剛性の分布量は主モードと固有振動数とを決める
系が持っている動特性はその主モード、固有振動数、
減衰などによりはっきりと決まる
まとめ 最も単純な自由振動で固有振動数(モード)
を把握する(基礎力の問題)
3)強制された振動
ある種の脈動する力を振動系に与えられたときに生ずるー強制振動
変動している力はそれと同じ振動数を持つ振動を引き起こす
対策 振動系を同調させない、減衰を高める
回転体はバランスさせて防ぐ
計算の前に、系を正確に定義し系とその周囲との境界で生ずると思われる
条件を決定することが重要である
不規則な運動、平均か、エルゴード的、統計手段
不規則な変動荷重の金属破壊は解明されていない
まとめ 強制振動の理解には
力の状態と解析手法(*)の前提条件を正しくしておく
(努力の問題)
*:モーダル解析、有限要素法解析、時系列データ解析 等
4)自分で成長する振動
自励振動、半円形円筒付近の空気の流れー正確さのための面倒な理論より
簡単な近似理論を学んだほうが良い
フラッタ解析者は物理学者としてまた数学者、
工学者としても重大な決断をしなければならないのである
ヨーイング(摩擦力による複雑な例・・・・)
自励振動はすべての注意を必要とする
個別的な現象の莫大な収集物に関連している
例 ポットのお湯 stick-slip きさげ(油たまり)
、鉄と樹脂の摩擦抵抗:+ 鉄と鉄:ー
まとめ 自励振動は、
あらゆる振動現象に含まれると考慮して考察する
(研究開発の問題)
5)衝撃と波動の正体
規則正しくは繰り返さない加振力による系
(地震等・衝撃・過渡振動・変形の伝播・波動)
急激な荷重に関しては別の視点が必要(長崎の原爆と煙突の例)
ドロップハンマーは地面をゆするのみでなく
空中に自由音波を放つ強制振動と言うとき
ある外乱によって引き起こされた振動のことを言うのだが、
その外乱は運動を起こさせるもののみをさしているのではない
ことを覚えておきたい
超音波は鍛造物の均一性の調査に役立つ
非保存系の過渡荷重は「ゆっくりしている」とも
「急激である」とも言えない、単純化は役に立たない
過渡パルスは分離した振動数によるのではなく
すべての振動数に関係している
まとめ 衝撃と波動が考えられる場合には、
理論とともに事例や経験を大切にする(応用の問題)
6)複雑な振動の世界
断面が一様でないガラス棒の振動
乾燥した軸受け内を回転する軸
初期の自励は制限過程により調整され修正されるー鉄道車両、
リミットサイクル
例 剛性:ボルトの締め付け 位置 形状
例 精度を出す為(機能)の構造と製造するための構造:にげ
結論
変化する特性を持った系の振動は広範で複雑である
A)変位に依存する剛性を持ったもの
B)変位に依存する減衰を持ったもの
C)時間に依存する剛性を持ったもの
これらは問題の表面をかじったにすぎない、
もっと風変わりな現象もたくさある
工学者は自然界における振動にも目をむけ
その振動系がすばらしく複雑であるか理解しなくてはならない(例 心臓)
どのような物理現象も
観測すればするほど複雑な様相を呈することは明らかである、
工学者の技術は
どこで眺めるのをやめ手をつけ始めるかを知ることである
以上
補足 上記の本はロイヤル・インスティテューション
133回「振動」を文章にしたものです
コメント
現象を見逃さずに自分で追求する事が必要
設計において、振動や騒音の配慮が行なえる人は少ないので、
振動の知恵を持つことは価値がある
(ある種の機械の事象は世界でそこにしかない事象であるから、
参考資料は参考でしかない)
<<騒音問題、振動対策に対してのコメント>>
機械や装置の騒音・振動に関する業務経験から、
音や振動に関心を持っています
そこで最近読み返した本に次のような事が書かれていました
「この2,30年間に学んだ最も大切な教訓だと思われることは、
建物の設計に関わる
いろいろな個人的、心理的要因は、
純粋に技術的、科学的な要因とまったく同じくらい重要だ
ということです」
騒音などの対策で苦労していると驚くようなことではありませんが、
はっきりと同等レベルであるという表現に驚きました
特に、私は表現の「建物」を「製品」としても良いと考えます
そこで現在騒音問題や振動対策に対して、より良い対策のために
1:個人的、心理的要因の検討を行なったらどうか
2:音楽や楽器についての方向からの検討を行なったらどうか
と言う提案をしたいと思います
追加事項:騒音や振動は経験的な事項が大変重要です、
私の経験が直接役に立つか解りませんが、
質問のある人は相談してください
<<< 超音波洗浄とキャビテーション >>>
超音波洗浄セミナー終了後の質問で、
以下のような経験を多数しています。
これまでに、超音波洗浄の原理として、
キャビテーションに関する説明を受けてきましたが、
洗浄経験から、ほとんど納得できませんでした。
セミナーの説明にある「非線形現象による音響流の効果」は
詳しいことは理解できないのですが、
洗浄現場の状況に対して非常に納得できます。
単純な洗浄成功事例を、キャビテーションで説明することは
簡単に理解できるため、幅広い応用ができると思いがちです。
洗浄対象物(形状、材質、数量、・・)が異なる場合
キャビテーションで単純化した洗浄方法を応用すると
全く異なる超音波伝搬状態を目標にしているような危険にさらられます。
洗浄状態を改良しようとしても
単純化した洗浄原理に基づいた対策が行われるため
洗浄効果が表れないで、逆効果になっている事例を多数見ています。
単純な洗浄モデルで考えた場合
洗浄対策も単純になる傾向があります。
洗浄の難しさは、簡単に洗浄できた経験者や
超音波の複雑な音圧変化を測定確認していない人には理解できないでしょう。
30年ぐらい前の脱脂洗浄レベルに関しては
「超音波洗浄はキャビテーションの効果である」という表現も
間違えだといえない状況だったと思います。
ナノレベルを問題にする、洗浄に関しては
「超音波の重要(効果的)な要因は、音響流である」という考え方が必要です。
実際に、キャビテーションで洗浄していることは確信が持てないものです。
洗浄モデルで考えても分かりませんから
超音波洗浄器の実験で確認しましょう。
簡単な汚れ(例えばスプーンに油を塗る)で洗浄実験しましょう。
液循環のON/OFF制御や、スプーンの揺動操作・・により
洗浄液の流れによる
洗浄効果・再付着に対する効果・・確認することができます。
これだけの実験でも、
音響流の利用が重要だということが解ります。
(汚れの動きを詳しく観察することを繰り返すと
複雑な音響流を見ることができるようになります)
洗浄関係者(特に、精密洗浄関係者)にとっては、
「キャビテーションで洗浄する」と言うような表現は
大変危険だということが分かります。
超音波洗浄の現実は
洗浄物の特性を含め非常に難しい事象(非線形現象)なのです。