吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

奮戦中!

2007年09月04日 | オルガン
ぎりぎりのスケジュールで修復した部品を持って東京へ。
これで一息つけるかと思ったのですが、この際だからということで、さらに予定外の部品もリフレッシュすることになっちまいました。
ああ~、どこまで続くぬかるみぞ…。

特殊な仕事なので、手伝いが欲しいのはやまやまなのですが、却ってやっかいなことになる公算大なので、肝心なところはひとりでがんばるしかありません。
巨大真空掃除機そのものであるパイプオルガンのオーバーホールは埃との戦いなのです。
今回のオルガンはそれほどでもないのですが、強力なアレルゲンを含む埃の時は、くしゃみ、鼻水、全身の発疹、痒み、掻いてしまってみみず腫れだらけになりながら仕事をすることになります。
このオルガンの埃は、重たくてススのような感じです。

現場で部分的に解体するときには、たいていネジに手が届かなかったりして苦戦することになっています。
それで僕もそういうときのための特殊工具は持っているのですが、それでも苦戦は免れません。

ダクトの裏のネジなど、難しい場所のネジを外すときなどは、かなりアクロバティックな体勢を要求されます。
柔軟性はかつては優れていたのですが、最近の不摂生ですっかり固くなってしまって苦戦しています。
ひじと手首の間に、もうひとつ関節が欲しくなることもよくありますし、関節が逆に曲がって欲しいと思うこともあります。
欧米の楽器は、かなり新しい楽器でもマイナス頭のネジ(和製英語です、スロッテド=刻み入り、といいます)を使っています、また最新のものでも様式的にマイナス頭のネジを好んで選択する傾向があります。
僕自身も、歴史的オルガンのスタイルを採るときには使いたいです。
国産では、マイナス頭の木ネジはもうありませんので、輸入することになります。

様式としては良いとしても、マイナスネジをドライバー(きちんと言うと、スクリュー・ドライバー)で回すのには結構なコツが要ります。
プラス頭(これも和製英語、フィリップスです)はドライバーを押し付けてさえいればちゃんと回せるのですが、マイナスネジの場合には、自分で中心軸を保たないとドライバーが外れます。特に電動ドライバーで回すのは意外と難しいのですよ。
さらに状況が悪い個所では、手の感覚だけでネジを探り当てなければなりません。

こうして、埃と汗と血(狭いところに手を入れると、それだけで腕が怪我します)にまみれた実働12時間労働の一日が終わると、そりゃもうヘロヘロです。
食欲もなくなってしまいますが、無理にでもしっかりと食べます。

今日は、修復する部品を持って八ヶ岳に帰ります。
山の空気が恋しいです。

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