吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

変形メカの苦悩

2007年12月11日 | オルガン
元アニメおたくとしては、変形メカは好きですよ。ええ。
ですが、仕事でやるのは実にツライ!
変形なんてことは、道具としては非常にリスキーなのです。
お前ら、変形合体ロボットが強いなんてことは絶対ないからな!(誰に語ってるんだ)

足踏みオルガン(リードオルガン)の変形モデルを作っているのです。
このような楽器にもちゃんと前例はあります。たとえば、アメリカ軍の従軍オルガンとか。
今回の仕事では、持ち運びし易いように変形して、しかも軽量化も要求されています。
手元に、トランク型に変形する古いオルガンを預かっていますが、これは展開時に実に華奢で、しかも同クラスの変形しないものよりもかなり重たいです。
そのオルガンでは、収まりの良い形にすること(コンパクトでもない)を重量増加のデメリットよりも優先したのです。それはそれでひとつの考え方です。

変形させることによって、確実に強度は低下します。可動部分はやはり弱いのです。
それを補おうとすれば、重量が増します。
変形ギミック(からくり)を複雑にするほどコンパクトさには有利になりますが、同時に不用意な変形、つまり事故も起きやすくなります。指を挟みそうです。
自分で扱うのであれば、展開時のロック忘れはないでしょうし、万一グシャッときても大したことはありません。
目指すところは、演奏はプロでも機械モノには強くないお客様に安心してお渡し出来るような変形パターンで、しかも軽くてコンパクト!
何かを得れば引き換えに何かを失うのです。ですが安全性だけはある程度(完全には無理です)守らなければなりません。

う~ん、むずかしい!
むずかしいけど、やってみたいのよ。
加えて、外観の最低限のエレガントさも欲しいのよ。
機能的であっても無粋なものは作りたくないのよ。
これがまた、好きなことを仕事にしてしまったツラさです。

さらに、アイデアとしては、個々のパーツは変形させない分離合体方式もあります。
こちらの方が、強度、軽さの点で有利かもしれませんが、合体のやりやすさと、安全性の問題は依然残ります。
変形、合体、いずれも一長一短あるのです。

こうして、ラブレターではないけれど、描いてはまた消しを繰り返しているのです。
でも、もうそろそろ決着を着けねばなりません。

う~む。

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2 コメント

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よく平気 (ひろなん@風琴屋)
2007-12-13 23:15:23
しまりすさん、ありがとう!

お客さんは年配で、アコーディオンの世界では有名な方なんです。
変形時に指を挟んでしまったりしたらと思うと、やはり慎重になります。

自動車の量産メーカーが、あんなに破壊力の大きいものを平気でたくさん売れるものだと感心します。
しかも、欠陥でリコール数万台なんて話も珍しくはありません。

それからすれば、オルガンのトラブルなぞ、たかが知れてるとも言えるのですが、やっぱり恐いですね。
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がんばれ (しまりす)
2007-12-13 04:14:47

より良いもの、自分が納得する物を追求していく
悩みの次元が私とは違いますね
くだらない事でいじいじしてる自分が
恥ずかしいな
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