たまにはオルガンの話を。
オルガン関係では、色々構想はあるのですが、なかなか形にするチャンスがないのです。
そこで比較的実現しやすそうなアイデアを。
昨晩、娘の希望で、長坂のコミュニティホールに北杜高校ギター部の定期演奏会に行きました。
北杜高校ギター部は名門で、演奏活動も盛んです。
部員54名によるギターアンサンブルは壮観です。
楽器職人としては、音域や楽器の特性による制約なんかを見ながら、自然発音体楽器の難し
さなんてものを考えていたわけですが。
で、思いついたのですが、ポルタティフ・オルガンでアンサンブルなんかやったら面白いんじゃな
いかなと。
ポルタティフ・オルガンについては、英語Wikipediaには出ているんだけど、日本語はオルガン
の中の一項目でしか無いようです。
Portative organ 英語Wiki
Youtubeにもたくさん出ています。これなんか好きです。
パーカッションとの合奏
ポルタティフは比較的作りやすいので、日本でも自作している人は結構います。
ちゃんと作るとそれなりに手間がかかるけど、価格を高くは設定しにくいので、プロにはちょっと
やりにくい楽器ではあります。
外国製のキットもありますが、僕が作った方が安いかも知れない。
右手で鍵盤を、左手でふいごを操作します。アコーディオンのご先祖のひとつですね。
13~15世紀に流行したようですが、当時の現物は残っていません。
しかし、絵画や教会の彫刻には非常に多く残っています。
ふいごはひとつのものが多かったようです。その場合、息切れするわけで、息継ぎのタイミング
を図らなければなりません。
ふいごに圧力調整弁が付いていると操作が楽ではありますが、無い方がデリケートな息使いが
出来ます。
この息使いが出来るというのはパイプオルガンにとって例外的な機能です。パイプオルガンと
いうのは風が安定するように作られるものなのです。
鍵盤が片手操作である代わりに、送風を操ることによる表現力を得ているわけです。
ギター式に言えば、ソプラノ、アルト、プライム、バス、コントラバスとか異なる音域でそれぞれ2
~3オクターブ程度(低音はもっと少ない方がスペース的には楽)のポルタティフで合奏するの。
リード管専用とか、ミクスチャー(基準音に対してオクターブ、3度、5度の関係の高音のパイプ
を同時に複数鳴らすストップ、単独使用は普通しない)専用ポルタティフとかも面白いかも知れ
ない。
低音部はパイプがデカいので膝に乗せて保持するのは大変だから床置にしようか。
大きな低音パイプは、指穴式(もちろん鍵盤操作)にすればパイプを節約出来るかな。
鍵盤ふいご付きリコーダーみたいなのも面白そう。
ここまでにするのなら、両手で鍵盤を操作出来るポジティフ・オルガンにして、ストップを増やせ
ばいいじゃない、という発想が出るわけです。これはオルガン史的には正しいのです。
多種類の音を組み合わせるためにパイプを増やしたり、異なる楽器を内部に取り込んで大型
化するというのがオルガンの発達史の主流だったわけですが、それにあえて背を向けてみると
か。
あえて一体化しない。あえて両手で鍵盤を使えるようにしない。 あえて大人数のアンサンブル
で楽しめるようにする。オルガン屋的には逆転の発想ですね。
どうかな?面白そうだと思うのですが。
この記事をみて思い出したのですが、アコーディオン関係のサイトで、学校用の合奏用のアコーディオンについて、「あれは退化だ」という記載を複数見たことがありました。でも、外国のカタログ(バス専用)や、you-tubeでも、アンサンブル用のアコを見たことがあるのですが、・・・・まぁ考え方なのでしょうけれど。
そういう意味では、ハードとともにソフトも必要だったりして。
アンサンブルは楽器の台数が多くて良いなあ、とギターアンサンブルを眺めていたわけです。
鍵盤楽器同士の合奏というのはあまりないので、面白そうだと思ったのですね。
なにしろ、パイプオルガン奏者の裾野は狭まる一方ですから、何か今までと異なった方向のアプ
ローチが出来ないかと。
オルガンの裾野を広げるための努力をしなければね。
北杜高校のギター部も、編曲を自前でもやっていたりするようです。
大所帯アンサンブルのハード、ソフト、周辺(専用バス、遠征の宿泊などなど)、関連する人のつな
がりの裾野は非常に大きいです。
学校用アコーディオンは、確かに低コスト設計なので「退化」と言われても仕方がないところはあり
ます。僕は個人的に、進化、退化という表現はあまり好きではありませんけど。
音域が狭く、バスボタンも無いのだから、リードが少ない分、共鳴管を組み込むとか、大型の低音
リードを組み込むとかの工夫も出来そうなものです。
大きな街の楽器屋くらいには、当たり前にポジティフやポルタティフが並ぶとか、合唱コンクールの
5分の1くらいはオルガンを伴奏にするとかいう時代が来ると良いなあ。