吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

18年振りの再会

2012年01月18日 | オルガン

今日は18年ぶりのオルガンに会いに行きました。

そのオルガンを修復したのはたしか'94年頃、結婚したばかりの頃で、現在は同じ市内となった隣町、長坂町に住んでいました。
その後、埼玉、群馬、アメリカ……と流れていくわけですが。

今は亡き友K君が勤めていた会社の社長U氏が、彼の母上のために購入したリードオルガンを
修復したのです。
U社長の母上が近所のレストランでインテリアの飾りとなっていたそのリードオルガンを見初め
て購入となったのですが、外装は良かったのですが、中はボロボロだったのです。
U氏の社員だったK君の紹介で僕が修復することになったわけです。

この規模のリードオルガンは日本ではなかなかありません。
楽器としてではなアンティークく家具に紛れてドイツから来たようです。

U社長の年老いた母上のために送風ペダルを踏まなくても弾けるように、電動送風機を追加し
ました。
もちろん、足踏み送風も可能です。切り替えは送風機の電源を入れるだけで、特別な操作は要
りません。

そして18年……。K君は世を去り、エネルギッシュなベンチャー社長U氏も世を去りました。
でも、U氏の母上は御年96歳で、多少受け答えに難がありながらも御健在なのです。
そして、修復後18年のオルガンもまた健在でした。
条件が良ければリードオルガンの耐久性は素晴らしいのです。(仕事も良かったのよ)
特に修理、調整の必要もありませんが、お引越しの際に送風機を外されたままだったので、再
度接続しました。

御年96歳の母上の演奏する背中を見ていると、言葉にならない感情が溢れました。
若くして世を去っていった人たち、見送ったひとたち、その場で歌い続ける楽器。

なんかね。このところずっと無力感に苛まれていてね。こんな世の中に対して何も出来ない自
分が悔しくてね。
でも僕も何がしかのことはしてきているようです。

それにしても、なかなか良い仕事をしてやがる。
18年前の自分から挑戦状を叩きつけられたような、発破をかけられたような気がします。
見せてやらなきゃね、積み重ねた時の力ってヤツをね。

こんなオルガン

右ニーレバースウェル(フォルテ)高音側と低音側を右ひざだけで操作します。
左レバーはグラン・ジュ(フランス語、すべてのストップがON)

送風機をふいごに接続するところ

ダクトは左右どちらにでも出せます。

送風機はパイプオルガン用を吸い出す形で接続、西ドイツ製です(時代だねえ)

送風機にカバーを掛けます。

準備完了

なんか、すごいよね。

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
送(排)風機・・・なるほど (tachinon)
2012-01-21 07:59:33
ひろにゃん様、このアイディア、「頭で」考えたことはあるけれど、空気袋を取り外して、下にモーターをつけて・・・なんて想像していたのですが、・・・・・3番目から5番目の写真をみて、「なるほど」・・目からウロコ・・・ですね。空気を吸いだすのだから、外側に逆止弁をつけて、そこに接続するようにすれば、取り外しも自由だし、エレガントな接続ができますね。電動オルガンの送(排)風機、スクラップから2つほど、ゲツトしてました。
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巡り巡って (ひろにゃんof風琴屋)
2012-01-22 00:44:39
tachinonさん、ようこそ!

色々考えたんですよ。接続方法。
排気弁をそのまま利用して、弁を開くロッド(大抵は釘)を利用
して給気をコントロールしようかとか。
結局、特別な操作やコツがなくても使えること、万一外れたりし
た場合も足踏み送風機能は確保されることなどからこの方式にし
ました。

僕の仕事は大体いつもこんな感じです。単純なことでも実は堂々
巡りの末の選択だったりします。
まあ、これが仕事の負担が増える原因ですけど、悩んだ分ノウハ
ウが蓄積している…と思いたいです。
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