吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

雨の夜に心迷うホームレス

2010年03月27日 | 自分のこと
先日は東京出張でした。

今回、道具の持ち込みの関係もあって、車で行くことが出来たので、まあ社会
実験というか何というか…、車中泊を試みました。
長距離移動の時は仮眠ということで車中泊をしばしばしますが、このような通
常の仕事の場合にはしません。
しかしながら、教会堂の隅などで泊まり込むことは結構多いので、宿泊施設以
外での宿泊という点では大差ないとも言えます。
いよいよホームレスに近付きます。

折しも雨。テストには最適の状況と言えましょう。
悪条件でこそ実験は生きるのです。
でも本当は晴れの方が良いけど…。

このために一時間弱の時間をかけて軽トラの荷台の箱に細工をしました。
左側前方にスライド式の出入り口を付けたのです。
荷台後方のパネルは開けるときにいちいち外さなければならないので、出入り
には不便なのです。
そこをヒンジ付きの扉にした場合、今度は付け外しが不便になります。
このような二律背反の条件のせめぎ合いで出来ているので、後パネルの加工は
し難かったのです。
そこで今回、側面パネルに注目したのです。開口部を低く出来ないので出入り
にはちょっと不便ですが後パネルの付け外しよりはずっと楽です。
僕が出入りしにくいというのは、他人も出入りしにくいわけで、セキュリティ
上は好ましいところもあります。

さて、実験決行の夜、現場の駐車場のすぐ近くの銭湯に入って、道すがらの公
衆トイレに寄り車にもぐりこみました。
雨はかなり強いのですが、箱内は大丈夫でした。
折りたたみベッド(いわゆるボンボンベッドでわかります?)に梱包用布団を
敷いて寝袋で寝ます。
おう、快適!

屋根はシートなので、傘の下やテントの中に居るような感じですが、四方は木
の壁なので安心感があります。
換気口を設置するのがノウハウです。でないと内部に結露が起こります。
あとは暖房が欲しいなあ。火鉢?(死ぬぞ!)

シートの屋根に雨が落ちる音は嫌いな人にはうるさいものでしょうが、僕は好
きです。
雨の日のジープの幌に落ちる雨音も好きです。ショパンの調べだねっ。

現地調達の小さな一人用テントでヨーロッパを回ったことを思い出します。
いろいろなことがあったなあ。
それにしてもオレ、なんでこんなことやってんだろ。
もっとマトモな生き方だって出来たろうに…。
時々はちょっと後悔なんかしたりします。

パイプオルガンの仕事にしても、保守や調律に特化すれば仕事の件数は大幅に
増えます。設備も大して要らないので、製作、修復の仕事よりも遥かに効率が
良いのです。
たまにコンサート調律なんかもしますが、一日二日でちょっとしたリードオル
ガンの修復費用並みの金額、ざっと2週間分くらいになったりします。
しかも設備も材料も要りません。
それに美人の楽器演奏家さん達とお知り合いになれたりするし(まあ、仲良し
になれるかどうかはまた別問題ですけどね)。

それで何度かはその方向の仕事に力を入れようかと思ったこともあります。
でも、ひとりである限り、製作、修復とサービス関係を両立することは出来ま
せん。
時間的に無理なのです。

自分で製作するというのは禁断の快楽のようで、そこから手を離すことが出来
ないのです。
手間もかかるし資材や道具も場所もいろいろ必要でまったくもって割に合わな
いのですけどね。

どうも考え事をするのには快適な場所じゃない方が僕には良いようです。
快適な場所だと負のスパイラルに陥ってしまいそうなことでも、こんなプアな
場所、しかも雨だったりすると何故か戦う気力がわいて来るのですね。
うん、迷わず今の計画を進めて行くことにしましょう。

ちょっとお酒を飲んで寝ました。
実は掛物用にもう一枚用意してあった布団を教会堂内に忘れてしまったので、
朝方寒かったのでした。そう、夜明け直前が最も寒いのですね。
やっぱり暖房が必要か?火鉢?(死ぬってば!)


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取っ手や換気口は、シートが被ったところにあります。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
車中泊 (1列半の鈴木です。)
2010-03-28 09:02:29
おはようございます。ときどき北の駅にうろうろしている、1列判の鈴木です。先日は貴重なお話をいろいろ教えていただきありがとうございました。このコメントなかなか書込みが難しくて、かけませんでした。
さて、風琴屋様の「農道のポルシェ」(サンバーはポルシェ様と同じ後置原動機なのでこう呼ばれているとか)の高速道路仕様、拝見させていただきました。やっぱり「背の高いもの」を積まなくてはならないから、「キャンバストップ」にならざるをえないのでしょうね。「サンバーのバンタイプ」の私の車は、ヤマハのNo5なら、譜面台を外すと、室内に載ります。でもやっぱりトラックのほうがフレキシビリティありますよね。
それよりも、問題は、車中泊するところで、変なところに停めると、すぐ「不審者」とか「浮浪者」と思い込んでおまわりさんとか役場に通報する、心の狭い人がいるのが、いちばんの困りますよね。あっ!暖房はキャンプで「湯たんぽ」を使うという記事を見たことがありますよ。
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そうでした! (ひろにゃんof風琴屋)
2010-03-30 00:58:46
1列半の鈴木さん、ようこそ!

おう、そうでした!湯たんぽ!
普段家で使っているのに、気付きませんでした!
カセットコンロでお湯は沸かせるので、次の機会には装備しましょう。

サンバーのバンはまた良いのです。実は車検切れのヤツが手許にあるのです。
ただ、積載性ではやはりトラックが便利です。ヤマハの5号なら2台載ります。

東京都内でも夜間駐車可のところや夜間500円のコインパーキングがかなりあります。
住宅街よりはオフィス街の方が気を遣わなくて良いですね。
今後、研究の必要がありそうです。
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Unknown (しまりす)
2010-03-30 03:50:46
ひとりはちょっと怖くて勇気がないけど
こーいうの好き!
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意外といるらしい (ひろにゃんof風琴屋)
2010-03-31 01:26:00
しまりすさん、ようこそ!

この頃日本では比較的安価な軽トラベースのキャンピングカーが増えていて、駐車場で宿泊する人は意外といるらしいです。
キャンピングカーは買ったけれど出かけられなくて自宅の駐車場で泊まる人も。
小さいところがまた「基地ごっこ」を彷彿とさせて良いのでしょう。

僕もたまには近所の山で夜を過ごそうかな。
屋根のシートをめくれば寝床に居ながらにして星を見られます。
あ、なんかわくわくしてきた!
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