シルクロードのテーマ
明けやらぬ午前4時に施設の姉から電話が入った。
何やら様子がおかしい。
「どうしたの? 和さん?」
「どうしたもないわよ! 電気毛布が壊れてしまって寒くて凍えているのよ、
早く買って送りなさいよ!」
「又コードが外れているんじゃないの?、前も壊れたといったけれど、
コードが外れていただけだったでしょ?」
「壊れたのよ!
貴女は毎日ぬくぬくと過ごしているんでしょ!
私をこんな所に置いて電話も掛けてこないじゃないの!
電話くらい掛けなさいよ、早く買って明日送って!」
「電話しているじゃないの、でも疲れているとか、ヘルパーさんが来ているからとか、これから寝るとか、貴女が出られないだけでしょ!」
普通ではない姉の様子だが普通の人間である私が真剣に対応したところで
どうにもならない。
ハイ、分かりましたよ、今日の午後に新しく入る施設の家族面談に行くから
その前に電気毛布を買って、送りますからね。」
「絶対だからね!」
床について2時間半後に起こされたが、腹も立たなかった。
おかしくなってくる姉がただ哀れで仕方なかった・・・
姉の施設での生活に幸せの片鱗も見えない。
だが、幸せはどんな場所に於いても、自分の気持ちの持ちようでそれに近ずくことは出来るはずなのです。
人に感謝する、笑みを湛える、優しい言葉、謙虚な態度、
そんな風に自分を変えたなら周りが変わるのに気づかない姉。
こちらに連れてきても、又施設で同じことの繰り返しになるのか・・・
大きな荷物を79歳のお婆さんはふうふう言いながら抱えていくのだろう。
まあ、私の人生も既に終わったに等しいから、余生は姉のために生きても
いいのかな・・・
夜空のトランペット/夕焼けのトランペット Nini.Rosso