part1で常在菌が極端に減少すると、他の細菌や真菌(カビ)などが爆発的に繁殖し、細菌の生態系のバランスを崩し、体の異常を発生させることが考えられるとしました。
細菌の働きを思い出してみよう。
栄養素を作る。
健康を維持する免疫反応をコントロールする。
食べ物の消化吸収を手伝う。
肌荒れや病原菌の侵入を防ぐ。
健康を維持する免疫反応をコントロールする。
食べ物の消化吸収を手伝う。
肌荒れや病原菌の侵入を防ぐ。
感情や思考に影響を与える。(神経系と相互作用しうる化合物を作り出している。)
つまり、単純に考えれば、これらの働きがおかしくなるということになる。
しかし、残念なことに,人間の食生活の急激な変化や抗生物質の使用によって,有益な常在菌が減リ続け,自己免疫疾患や肥満が増加している可能性がある。
もうひとつ重大な問題が発生しています。
殺すはずの細菌が生き残り耐性化し、「薬剤耐性菌」となり、抗生物質の攻撃に負けなくなっている。
世界中で深刻な問題になっていて、薬剤耐性菌によって亡くなる人も多く、国連が対策に乗り出している。「地球規模で直面する最大の脅威だ。ぐずぐずしている時間はない。」「50年までに世界で年間1000万人が亡くなる恐れがある。」などと警告している。
国内ではどのくらいの被害があるのか?
薬剤耐性菌による被害で、日本でも年間約8000人以上が命を落としている。
この推計結果は、国立国際医療研究センター病院と国立感染症研究所の研究グループが2019年12月公表しています。
米国で年間約3万5000人、欧州で同3万3000人が耐性菌に感染して死亡しているという推定値もあります。
高齢者や小さな子供、病気になって免疫力が低下した人たちがあぶない。
細菌はどのようにして耐性化していくのか?
病原菌だって宿主の体内に入って生き残り、子孫を残そうとする。そのために必死になる。
- 細菌自体を覆っている膜を変化させて、薬が入って来づらくする(外膜変化)
- 細菌に入ってきた毒を外に汲み出してしまう(排出ポンプ)
- 細菌の中で抗菌薬が作用する部分を変化させ、いざ抗菌薬が入ってきても効果が出ないようにしてしまう(DNAやRNAの変異)
- 細菌に届く前に化学反応で分解してしまう(ベータラクタマーゼ)
- 大量のネバネバ液で細菌自体を覆い、薬から身を守る(バイオフィルム)
すごい生き残り作戦を展開するんだ!
でも、耐性を獲得する細菌は本来はおとなしく生きている。自分の細胞を変化させて生き残るには多くのエネルギーが必要で、できたら使いたくないからだそうだ。
でも、耐性を獲得する細菌は本来はおとなしく生きている。自分の細胞を変化させて生き残るには多くのエネルギーが必要で、できたら使いたくないからだそうだ。
他の多くの細菌が死滅すれば話は別。自分が有利になる。楽に増殖し、力をつけることができる。抗生物質の攻撃から生き残った細菌=薬剤耐性菌が危険だ!
参考
国立国際医療研究センター病院(AMR)サイト
日本経済新聞記事2019/12/21