●樹状細胞から情報を受け、ヘルパーT細胞、B細胞、抗体が攻撃
ヘルパーT細胞は樹状細胞やマクロファージから受け取った抗原(外敵情報)を確認して活性化し増殖を開始します。
B細胞も抗原を取り込んで細胞の外側に抗原(外敵情報)を出して見つけやすくする(抗原提示)と、ヘルパーT細胞は、その抗原と自分が認識している抗原情報が合致することを確認してB細胞の増殖を促進させます。
増殖したB細胞は、形質細胞(抗体産生細胞)へと分化します。つまり、形質細胞は、その抗原にだけ結合する「特有の物質」=抗体(飛び道具)をどんどん作り、血液中に送り込んでいきます。自ら攻撃もします。
目標とする抗原(外敵)の情報を知りその抗体とだけ特異的に結合(細胞には栄養等を取り入れる特別な「鍵穴」のようなものがあるのですが、新型コロナウイルスはこの鍵穴にはまる偽鍵のような突起物をウイルス表面のエンベロープに持っている。)できるように作られた抗体は、体液中や体の細胞の表面にいる抗原を見つけ、次々と結合(ウイルスが細胞に侵入する際の偽鍵をふさぐ)していきます。そして、溶かして固めて無毒化して、マクロファージなどの食細胞に食べさせます。
ヘルパーT細胞とB細胞の一部は、記憶細胞として体内に残り、2回目以降の同じ外敵の侵入に備えます。2回目は以降は、より早く強力に大量に活性化することができるようになります。
上記のように、ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)は、他の免疫細胞の働きを調整する役割を持ち、サイトカインなどの免疫活性化物質などを産生して、攻撃の戦略をたてて指令を出しています。
●樹状細胞から情報を受け、キラーT細胞が攻撃
ヘルパーT細胞とB細胞が連携し抗体を作り出して攻撃する方法の他に、樹状細胞から情報を受け、別の攻撃隊として分化したキラーT細胞がウイルスや細菌に感染した細胞・がん細胞・ 移植組織の細胞などを直接攻撃して排除します。
キラーT細胞は、感染した細胞にへばりつき、細胞に侵入した抗原の情報を感染した細胞から受け取る。樹状細胞から受け取った情報と合致すれば、抗原に毒物質を注入し感染した細胞ごと攻撃開始する。
キラーT細胞も記憶細胞として残る。
キラーT細胞は、感染した細胞にへばりつき、細胞に侵入した抗原の情報を感染した細胞から受け取る。樹状細胞から受け取った情報と合致すれば、抗原に毒物質を注入し感染した細胞ごと攻撃開始する。
キラーT細胞も記憶細胞として残る。
今回の免疫細胞たちは、相手の外敵の情報を記憶することができる。そしてそのまま常駐し、2回目以降の侵入に対して常に警戒にあたり大きな力を発揮するので、発病しにくくなる。自然免疫に対して、獲得免疫と呼ばれる。
新型コロナウイルスに免疫ネッワークが崩される!
Part1では、細胞がウイルスの侵入を知らせるためのインターフェロンの量を何と新型コロナウイルスが減らして、免疫細胞への情報伝達の量を減らして混乱させていることを書きましたが、実は他にもまだこのウイルスによる仕業により免疫細胞がうまく機能しない事態が起きます。
●キラーT細胞の働きを邪魔する。
●キラーT細胞の働きを邪魔する。
感染した細胞は、例えるなら「手」のような突起物にウイルスの断片(情報)を乗せて、細胞の表面にへばりついたキラーT細胞に渡すのですが、細胞表面に出る前にウイルスがこの突起物を分解してしまうのです。細胞に侵入したウイルス情報と樹状細胞から受け取った情報が合致して攻撃を開始するのに、細胞からの情報が得られないから、これでは攻撃ができない。
●抗体は誰でも十分に作り出すことができるわけではない!
●抗体は誰でも十分に作り出すことができるわけではない!
先に書いたように、増殖したB細胞が形質細胞(抗体産生細胞)へと分化して抗体を作り出す。その時のウイルスの情報は、やはり樹状細胞が伝令役として伝えた情報がもとになる。この過程は非常に重要なことが理解できる。
しかし、樹状細胞がヘルパーT細胞にウイルス断片(情報)を渡すときの「手」のような突起物の形が人により違い、うまくつかんで渡せない場合がある。抗体が多く作れる人と作れない人の違いはこれにより決まると考える説がある(HLAという遺伝子の違いによってこの「手」の形が違ってくるのではないか?)。
例えば、国単位でも違いがあるそうです。アフリカはマラリアのマラリア原虫の断片をつかみやすい「手」。東南アジアは、ハンセン病のらい菌をつかみやすい「手」。
●免疫のネットワークが崩されるとどうなるか?
しかし、樹状細胞がヘルパーT細胞にウイルス断片(情報)を渡すときの「手」のような突起物の形が人により違い、うまくつかんで渡せない場合がある。抗体が多く作れる人と作れない人の違いはこれにより決まると考える説がある(HLAという遺伝子の違いによってこの「手」の形が違ってくるのではないか?)。
例えば、国単位でも違いがあるそうです。アフリカはマラリアのマラリア原虫の断片をつかみやすい「手」。東南アジアは、ハンセン病のらい菌をつかみやすい「手」。
●免疫のネットワークが崩されるとどうなるか?
好中球などの食細胞たちが過剰に活性化し、自分を破裂させ、自分の中にあるネバネバしたDNAを撒き散らしてウイルスを捕らえようとする捨て身の自爆攻撃をする。DNAのネバネバが血液成分を固めてそれが集まり血栓ができる。重症患者にはほとんどこの血栓があったそうです。そして、その中の2、3割の方が血栓で亡くなられている。
キラーT細胞は細胞ごと破壊するから過剰に活性化すると最悪多臓器不全 などにもつながる。制御性T細胞が働き、アクセルとブレーキの役割を果たすようになっているけど、バランスが崩れ重症化に至る場合がある。
原因は明確になっていないけど、ウイルスが過剰に繁殖することにより免疫ネットワークがうまく働いていないことは確かです。
このようなサイトカインストームは次第にそのメカニズムが明らかにされつつあります。
キラーT細胞は細胞ごと破壊するから過剰に活性化すると最悪多臓器不全 などにもつながる。制御性T細胞が働き、アクセルとブレーキの役割を果たすようになっているけど、バランスが崩れ重症化に至る場合がある。
原因は明確になっていないけど、ウイルスが過剰に繁殖することにより免疫ネットワークがうまく働いていないことは確かです。
このようなサイトカインストームは次第にそのメカニズムが明らかにされつつあります。
参考
〇HLA(ヒト白血球抗原)
1954年、白血球の血液型として発見された。
その後、HLAは白血球だけにあるのではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していることがわかってきた。
特殊なタンパク質のグループで、人それぞれに構造の微妙な違いがあり、免疫システムが「自己」と「非自己」を区別するための目印として働いている。
6番染色体短腕上にあるHLA遺伝子からの命令で、糖蛋白質であるHLA抗原が作られ、白血球の表面で目印となっている。
〇HLA(ヒト白血球抗原)
1954年、白血球の血液型として発見された。
その後、HLAは白血球だけにあるのではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していることがわかってきた。
特殊なタンパク質のグループで、人それぞれに構造の微妙な違いがあり、免疫システムが「自己」と「非自己」を区別するための目印として働いている。
6番染色体短腕上にあるHLA遺伝子からの命令で、糖蛋白質であるHLA抗原が作られ、白血球の表面で目印となっている。
参考
〇 B細胞やT細胞一つひとつが認識できる抗原は1種類だけです。ですが、たくさんのB細胞やT細胞がそれぞれ違う1種類の抗原を認識しているので、リンパ球全体では多くの違う抗原を認識できることになる。
間違って自分の成分を抗原として認識してしまう未熟なものは、自ら死滅して排除されたり,免疫反応が生じないようになったりしています。
最後に
敵などいない方がいいに決まってますが、敵がほどほどいるからこそ免疫の存在価値があり敵の情報をもとに教育され、より強い免疫として成長していく。自然免疫で外敵を防御できればいいけど、自然のサイクルを壊すと相手も進化し、自然免疫で防御できなくなる。するとさらに獲得免疫が過去の抗体の情報を持ち待ち構えることになる。
だとすると、細菌やウイルスをせん滅する方法をとれば、免疫は育たなくなるということになる。殺菌を徹底すれば、免疫が弱くなるから、さらに殺菌を徹底する必要が出てくる。バランスが大切です。
自然の営みのサイクルから独立した人間の密度の高い社会と人間の経済が大量に作り出す様々な物質とわがままを地球上の生物や細菌、ウイルス等とどう調和していくかということは大変難しいことです。
この新型コロナウイルスは、私たちに「これからの人間の生き方はどうするのか?」という問いを投げかけているような気がします。
自然の営みのサイクルから独立した人間の密度の高い社会と人間の経済が大量に作り出す様々な物質とわがままを地球上の生物や細菌、ウイルス等とどう調和していくかということは大変難しいことです。
この新型コロナウイルスは、私たちに「これからの人間の生き方はどうするのか?」という問いを投げかけているような気がします。
イラストは
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