Tschaikowski_(1840-1893)バレエ音楽「くるみ割り人形」の魅力
チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840-1893)
バレエ音楽「くるみ割り人形」op.71 The Nutcracker
ー私が小学校の登下校時に聴いていた大好きな音楽ー
1 お菓子の国への扉は、クリスマスの夜に開かれる!
アメリカやヨーロッパでは、クリスマスシーズンになるとあちこちの劇場で上演されるバレエ「くるみ割り人形」。
日本で言うと、年末のベートーヴェン交響曲第9番(いわゆる「第九」)のような存在に近いかも。
2 特徴
①メロディーが単純な音階になっている(音階を順番にた どる) ので、子供から大人まで誰もが楽しめる。最初の「行進曲」でも、それが分かります。(有名な「弦楽セレナーデ」の出だしもそうですね。)そして、その単純な音階に(例えば、三連符を入れるなどの)様々な工夫がなされ、魅力的に仕上がっています。
②「こんぺい糖(ドラジェ)の精の踊り」で使われたチェレスタ(天使の響き)と減七和音
旅先のパリで偶然に見つけたチェレスタ(発明されたばかり)の音色を聴き、この曲の場面で使用することにしました。鍵盤楽器に分類されるけど、フェルトのハンマーで鋼を打ち、その下に共鳴箱が設置されていますよ。
非常にやわらかく、やさしく、幻想的な音がします。
この楽器を「誰にも見せないでほしい。特にリムスキー・コルサコフやグラズノフには先に使われたくない。」と購入を頼んだ出版社の社長に手紙を書いているそうです。よっしゃー!これだー!という感じだったのでしょう。
振付師のプティパは、「〇〇小節で〇〇を表現」というように、場面場面で事細かく指示書によって指示してます。この「こんぺい糖(ドラジェ)の精の踊り」の場面では、「噴水の水がはねる音が聞こえるように」という指示を出してる。
ここでは、先の単純な音階に加え、チェレスタの音色に、もう一つの工夫がなされています。減七和音(7度の和音の一番上の音が♭)を連続して使い、不安定な壊れやすくもろい雰囲気を見事にとらえています。
③「雪片のワルツ」では、何と少年少女合唱が入っているではないですか!!それに加え、フルート、鉄琴、ハープの使用が雪のイメージを見事にとらえています。
④「花のワルツ」も有名ですね。心が平和で、豊かで、安定した、あたたかい雰囲気を感じます。全体長調ですが、一部短調に転じる場面があります。この場面で短調に転じる必要があるのか?という疑問から、こういう説があります。「ちょうど作曲中に、長年援助してくれていたメック夫人からの援助打ち切りの通知が届いたこと。それと最愛の妹アレキサンドラ48歳がこの世を去ったことが曲に影を落としたのではないか?」
3 へこたれても妥協しない 新たな挑戦
「白鳥の湖」初演の大失敗から立ち直れないチャイコフスキでしたが、11年後に「眠れる森の美女」を作曲します。ある程度評価はされたけど、期待したほどではないという感じです。伝統的なバレエ音楽は、踊りの伴奏でしかなかったけど、チャイコフスキーは、完成された音楽を組み入れたため、新しい形態に観客がついていけなかったと言われています。「音楽を聴きに来たのではない。踊りを見に来たのだ。」という観客もいたそうだから。「くるみ割り人形」に至っては、これまでにない斬新な内容ですから。しかし、彼の死後になってから3大バレエとして評価されることになります。
4 ここで、お話の内容をご紹介しておきましょう。
クリスマスの晩に開かれたパーティーでドロッセルマイヤー伯父さんがいろいろな人形を出してきます。最後に「くるみ割り人形」を出してきます。他の子供は嫌いますが,クララはとても気に入ります。パーティの後の夜更け,ねずみの大軍が押し寄せ、くるみ割り人形と戦います。クララが加勢し、ねずみ軍が引き上げると,くるみ割り人形は王子に変身し,クララをお菓子の国へ招待し、2人でお菓子の国へ向かいます。
お菓子の国では祝宴となり,各国の民族舞踊などが踊られます。ここで、有名な曲の数々ートレパーク・中国の踊り・葦笛の踊りーなどが出てきます。その後、華やかな「花のワルツ」があり、クララと王子によるグラン・パ・ド・ドゥやパ・ド・ドゥ(ここで「こんぺい糖の精の踊り」があります。)があり、最後に、盛大な結婚式のワルツがあり全幕を終えます。
ただし、色んな振付があり、設定は様々ですよ。
なお、このバレエ音楽の中からチャイコフスキー自身が8曲を選んで、演奏会用組曲ー作品71aとして発表しています。