昨日の紀勢さんは荒れていた。
約束の神田小川町の安居酒屋に現れるなり、
「まじバビロンって超ボンボクラよね」(訳:警察ってまったく腹立たしいよね)と、
クラブ遊びを始めたキッズのようなチャラい隠語を吐いた。
「まじラダマーシーって感じ」(訳:本当に救いようが無い)、とのこと。
それはそれは、本郷の某出版社で翻訳関係の仕事をしているとは思えない、教養の微塵も感じさせない物言いだった。
果たして、ジャマイカクレオール語を母体としたスラングを彼女がどこで覚えてきたのか、僕には分からない。
が、きっと独自の学習を経て、変な風に何かを覚えたのかもしれない、と思った。
ところで、その癪の種はというと、なにやらチャリでこちらへ向かう途中、生まれて初めて職務質問を受けたからだ、そうな。
そのバビロン(警察官)のぞんざいで高圧的な態度がすこぶる「ボンボクラ」だったそうな。
紀勢さん曰く、、会社帰りにチャリで外堀通りを走ってた。
神田川沿いの桜がやたら静かで穏やかだったから、スピード落として、風情を楽しんでたら、
前方から、二人組の警官が現れ、「ちょっと、止まれ」。
とたん、「ここで何をしている」「今からどこ行くんだ?」などと詰問を始めた。
警官は紀勢さんの前後を挟み、行く手を阻み、「名をなのれ」「身分証明書見せろ」とか「逃げようなんて思うなよ」など、無礼な詰問を続けた。
その日の紀勢さんの出で立ちは、
真っ赤なタイパン、
僕が以前誕生日プレゼントに、今東京で最も流行ってる、と嘘ついてあげたBAD BRAINSのホワイトハウスに雷落ちてるTシャツ、
左参考資料1
お気に入りのメッセンジャーバッグには、これも僕が以前同じこと言って献上した「EZLN」「殺すな」と書かれたバッヂ、
左参考資料2
ヘルメットの後ろには、紀勢さんの父が交通安全にと呉れた「同行二人」と立派な楷書で書かれた高野山のステッカー、
左参考資料3
パーマがいい感じに緩んでオノヨーコっぽくなった髪型、、
左参考資料4
ともすれば、ラディカルな反体制の人に捉えられかねない。もしくは、相当徳の高い自由人に見えなくもない。
紀勢さん図らずもかなり自由かつ危険な思想を持った人に勘違いされたようだ。
「その見てくれじゃあ、確かに何も持ってなくても(思想とか大麻とか)捕まるかもね」と僕が言ったら、
「こんな勝手が許されるなんて、超ノーマーシーなバビロンだよ(訳:救いの無い地獄のような世の中だ)」
と、相変わらず憤る紀勢さん。
まあ、身分証の提示、盗難照会の結果、紀勢さんの身の潔白は証明されたみたいだが、「兎に角腑に落ちん、バビロン、許すまじ」とのこと。
…捕まるのは捕まりそうな感じだから悪い、というのは、
「差別はされる側にも問題がある(保守派の政治家)」とか、「いじめはいじめられる側にも問題がある(保守派の教頭)」、
「セクハラはされる側にも問題がある(学と品のない社長)」とか、「確認しなかったお宅が悪い(嫌なクライアント)」とかいう、
力の強い方が好き勝手な裁量で線引きできる理不尽な論理であるよね。そういう発想は良くないよね。済まなかった。と僕は紀勢さんに詫びた。
しばらくすると、紀勢さん機嫌を取り戻し、燗をぐびっとあおり、「ふふーんふふ ふふーん」と鼻歌を歌いはじめた。
その旋律は、高田渡の「自衛隊に入ろう」だった。
多分、「自衛隊」の部分を「警視庁」に替えて歌っているのだな、と僕は思ったが、件については詮索しなかった。
これ以上野暮と思われると癪なので。
そして、結局、紀勢さんは「ふふ~ん、ふ、ふ、ふふん」と高田渡の「自転車に乗って」を鼻唄いながら、ご機嫌で帰ってった。
約束の神田小川町の安居酒屋に現れるなり、
「まじバビロンって超ボンボクラよね」(訳:警察ってまったく腹立たしいよね)と、
クラブ遊びを始めたキッズのようなチャラい隠語を吐いた。
「まじラダマーシーって感じ」(訳:本当に救いようが無い)、とのこと。
それはそれは、本郷の某出版社で翻訳関係の仕事をしているとは思えない、教養の微塵も感じさせない物言いだった。
果たして、ジャマイカクレオール語を母体としたスラングを彼女がどこで覚えてきたのか、僕には分からない。
が、きっと独自の学習を経て、変な風に何かを覚えたのかもしれない、と思った。
ところで、その癪の種はというと、なにやらチャリでこちらへ向かう途中、生まれて初めて職務質問を受けたからだ、そうな。
そのバビロン(警察官)のぞんざいで高圧的な態度がすこぶる「ボンボクラ」だったそうな。
紀勢さん曰く、、会社帰りにチャリで外堀通りを走ってた。
神田川沿いの桜がやたら静かで穏やかだったから、スピード落として、風情を楽しんでたら、
前方から、二人組の警官が現れ、「ちょっと、止まれ」。
とたん、「ここで何をしている」「今からどこ行くんだ?」などと詰問を始めた。
警官は紀勢さんの前後を挟み、行く手を阻み、「名をなのれ」「身分証明書見せろ」とか「逃げようなんて思うなよ」など、無礼な詰問を続けた。
その日の紀勢さんの出で立ちは、
真っ赤なタイパン、
僕が以前誕生日プレゼントに、今東京で最も流行ってる、と嘘ついてあげたBAD BRAINSのホワイトハウスに雷落ちてるTシャツ、
左参考資料1
お気に入りのメッセンジャーバッグには、これも僕が以前同じこと言って献上した「EZLN」「殺すな」と書かれたバッヂ、
左参考資料2
ヘルメットの後ろには、紀勢さんの父が交通安全にと呉れた「同行二人」と立派な楷書で書かれた高野山のステッカー、
左参考資料3
パーマがいい感じに緩んでオノヨーコっぽくなった髪型、、
左参考資料4
ともすれば、ラディカルな反体制の人に捉えられかねない。もしくは、相当徳の高い自由人に見えなくもない。
紀勢さん図らずもかなり自由かつ危険な思想を持った人に勘違いされたようだ。
「その見てくれじゃあ、確かに何も持ってなくても(思想とか大麻とか)捕まるかもね」と僕が言ったら、
「こんな勝手が許されるなんて、超ノーマーシーなバビロンだよ(訳:救いの無い地獄のような世の中だ)」
と、相変わらず憤る紀勢さん。
まあ、身分証の提示、盗難照会の結果、紀勢さんの身の潔白は証明されたみたいだが、「兎に角腑に落ちん、バビロン、許すまじ」とのこと。
…捕まるのは捕まりそうな感じだから悪い、というのは、
「差別はされる側にも問題がある(保守派の政治家)」とか、「いじめはいじめられる側にも問題がある(保守派の教頭)」、
「セクハラはされる側にも問題がある(学と品のない社長)」とか、「確認しなかったお宅が悪い(嫌なクライアント)」とかいう、
力の強い方が好き勝手な裁量で線引きできる理不尽な論理であるよね。そういう発想は良くないよね。済まなかった。と僕は紀勢さんに詫びた。
しばらくすると、紀勢さん機嫌を取り戻し、燗をぐびっとあおり、「ふふーんふふ ふふーん」と鼻歌を歌いはじめた。
その旋律は、高田渡の「自衛隊に入ろう」だった。
多分、「自衛隊」の部分を「警視庁」に替えて歌っているのだな、と僕は思ったが、件については詮索しなかった。
これ以上野暮と思われると癪なので。
そして、結局、紀勢さんは「ふふ~ん、ふ、ふ、ふふん」と高田渡の「自転車に乗って」を鼻唄いながら、ご機嫌で帰ってった。