WILD THINK

ラテン楽団「Orquesta de WILD THINK」のバンマスが、日々思うことをダブワイズ

エクソダス 紀勢隣人

2011年08月20日 | 紀勢やう考
僕の友人であり、我が楽団の作詞担当でもある紀勢やう子さん(33)。
その紀勢さんの住む茅場町の町内会のご近所さん、五百旗頭さん一家がこの度、長野に引っ越すそうな。
理由は、町内では誰彼かまわず大っぴらには言えないが、例によって放射能汚染による避難、レゲエ風にいうと「エクソダス」だそうな。
紀勢家と同じく、五百旗頭さんも古くは江戸期から茅場町に住んでいるそうで、谷崎潤一郎と遠い親戚にあたるそうな。
その娘さんは紀勢さんの幼なじみで、小さい頃は「ヒエジン」(近所にある日枝神社のローカルキッズ内での略称)でよく遊んだそうな。
その娘さんも、大学を出てまもなく結婚。しかし、数年前離婚して5歳の子供を連れて出戻り、定年退職で隠居の身になった爺さんと、主婦として立派に家を守ってきた婆さんと、今は4人で住んでいるそうな。

娘さんが仕事関係…なんでも天然酵母のパン粉の研究をしているそうだ…の縁故で長野に来ないかとお誘いがあった。
その地域に一家の別荘があり、移住に丁度いいことと、件の原発事故による放射能汚染が後押しとなり、悩みぬいた結果、ついに一家で江戸から続いた茅場町から出る腹を決めたそうな。

先日、紀勢家にお別れの挨拶に来た際、紀勢父は五百旗頭さん一家に、こう言った。
「家族を守るためによく決めましたね。わたしは、死ぬまでここに居ますから、思い出したらいつでも遠慮なく遊びにいらっしゃい。」
その口調は往年の笠智衆を思わせる、演技じみた恣意性などまるで感じられない、どこかあっけらかんとした、なんか安心できる、淡々としたものであり、いつもの父とは少し様子が違った、そうな。
娘さんは泣いていた。が、他にいる人は誰ももらい泣きはしなかった。
[笠智衆:左]
そして餞別に、と「伯方の塩1kg」を手渡し、「西瓜にでも…信州は果物がきっと美味しいでしょうから」とまた笠智衆っぽく、言った。
紀勢さんは、これは父の好物である西瓜を長野から贈ってくれ、という回りくどいおねだりか、と、うがった解釈が頭をよぎったというが、真偽の程は定かではない。
[笠智衆:左]

その晩、紀勢家の神棚…日枝神社のお札の他、破魔矢、般若心経、昭和天皇の写真、千社札、瓢箪、おはぎ、ハッピーターン、おーいお茶、などが供えてある…に向かって、紀勢父は柏手を小さく2つ打った後、
「信州信濃の新蕎麦よりも あたしゃあなたのそばがよい」と小さく呟き、「西瓜の名産地~ふふふ~ん~行き先が帰る場所~」と鼻唄を歌いながら、いつものように風呂へ向かったそうな。

紀勢さんはその日の晩、久しぶりに妖怪「ふんでんぼう」を踏みつけたそうな。
そして、身に覚えの無い猫がニャーと鳴き、身に覚えがある犬がワンと吠え、身に覚えがあるかなしか定かではないカラスがカーと鳴いたそうだ。


| Created : Aug 5, 2011 12:56 PM | Style : Background0, Font6, Size16 |


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