虹のじ ゅもん

当ブログを訪れた人には「夢が叶う」という呪いがかかる。

猫をかわいがったら呪いはさらに強力になるであろう。

またなって言ったろ

2018-12-16 | 
またなって言ったろ 

変に星がまたたいて
嫌な冷たさが 胸を貫いた
アイツが 死んだ…

最後に会ったのは一年前
たぶんお互い 仕事に疲れていたんだろう

会話は途切れがちで
女の子の事や 天気の事
おやじギャグを言いあい 
どうでもいい話をした
「またな」と別れた

ふと心疲れた時
おかしくもない話を反芻し
アイツの笑顔に笑い返した

最後のメールはひと月前
たぶんお互い 人生につまずいていたんだろう

はやり歌だの お笑いだの
たいした意味のない気楽なやりとりだった
「またな」が最後

なんのことのないメールを何度も読み返し
思い浮かぶアイツのしかめ面にうなずいた

これからいくつも山を越え 谷を越え

歯をくいしばり
髪ふりみだし
地団太をふみ
泣き笑い

それをみんな笑い話に替えて
俺達 頑張って来たよなと
笑い合うはずだった

どうでもいい
つまんない話
したとたんに忘れちまうような話を
眠らずにするはずだった

なのに

 またなって言ったろ…


各務原市文芸祭 奨励賞受賞

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友へ 君を想う

2018-12-14 | 
友へ 君を想う

山に散った君を想う

ほんの小さな偶然が
二人の運命をわけた
なぜ 逝ったのが君だったのか
答えを見つけられないままに
今日を生きている
君の食べたかった物を食べ
君の見たかった映画を見た

そして君の生きられなかった今日を生きている
いいことばかりの日々じゃないけど
一日一日 かみしめて生きている

海に還った君を想う

ほんの小さな過ちが
二人の運命をわけた
なぜ 残ったのが僕だったのか
答えが見つからないままに
今日を生きている
君の知らない本を読み
君の聞いた事のない歌を口ずさむ

そして君の生きたかった今日を生きている
つらいことばかりの日々じゃないから
一日一日 なんとか生きている

 君を想いながら



第45回 羽島市文芸祭 現代詩の部 入選

平成30年度第45回記念羽島市文芸祭(一般の部 小・中学生の部)の審査結果が掲載されています。
素敵な作品ばかりです。
ぜひ、ご覧ください。
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むらさきはなな

2018-12-13 | 
むらさきはなな

「この花の名は?」
私が聞くと、
「むらさきはなな」
あなたは面倒臭そうに答える

春になると土手いっぱいに咲く むらさきはなな

あなたの心変わりに気づいていた
離れていく心をとめることはできないけど
私のことは忘れさせてあげない
むらさきはななが咲くたびに
あなたは私を思い出すの
隣にいるのは私じゃないけど
ずっとずっと思い出すの
春になると…

「この花の名は?」
私が聞くと、
「むらさきはなな」
あなたは面倒臭そうに答える

一か月間咲き続ける むらさきはなな

あなたの心変わりを許してあげる
せめたりしないし すがったりもしないけど
私のことは忘れさせてあげない
むらさきはななが咲くたびに
私もあなたを思い出すの
隣にあなたはいないけど
ずっとずっと思い出すの
あなたの素敵なところだけ…
 
春になると…




「金澤詩人 13号」に掲載していただきました。
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川の行方

2018-12-07 | 
川の行方

父好みの料亭
高級料理には手がでない
名も知らぬ酒が喉を焼く
「父さんの望むようには生きられない」
父は眉根を寄せ 無言で杯を重ねる

並んで歩く星月夜
足音だけが響き渡り
冷えた風が通り抜けてゆく

行きつけの居酒屋
好物のから揚げが干からびてゆき
安酒ばかりが喉を降りてゆく
「父さんの期待には応えられない」
父はふと唇をゆるめ

「生まれたてのせせらぎも 泥の川も
 いつの日か海につく みんな同じさ
 自分の望んだ道を迷わず生きるといい」

どんなに激しい流れでも
曲がりくねった石くれだらけの流れでも
自分の信じた川ならば
必ず泳ぎきれるだろう

自分の選んだ道ならば
 悔いることもないだろう




小千谷市文芸 佳作受賞



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