AVGO1062.9us$ 24/1/11木BX120.07$ MCHP84.17$

米国株BX119.62us$ AVGO1065us$ MCHP84.06(24/1/10水:現在

25/1/23木11:44「魚が獲れない日本」と豊漁ノルウェーの決定的差 漁業先進国では「大漁」を目指さない合理的理由

2025-01-23 11:43:57 | 米国株

「魚が獲れない日本」と豊漁ノルウェーの決定的差漁業先進国では「大漁」を目指さない合理的理由片野 歩様記事抜粋2022/10/22 5:40

漁業先進国は科学的根拠に基づく水産資源管理をしている。水産業で成長を続けるアイスランドのアカウオ(写真:筆者提供)

筆者の記事『「魚が獲れない」は世界で日本だけという衝撃事実」』に対して、大きな反響が寄せられました。日本は「漁業大国」という旧来のイメージが頭の中にあり、現在の漁獲量の激減ぶりをはじめて知ったという人が少なくないようです。

改めて日本と世界の漁獲量推移を比較したグラフを確認しましょう。世界では漁獲量の増加が進んできた時期に、日本では1200万トンから400万トンへと逆に3分1に激減しています。A Flourish chart

日本の漁獲量の減少の仕方は、世界でも類を見ない異常な状態です。この現実を知って行動を起こさないと、国は動きにくく、成長を続ける世界の漁業・水産業とは対照的に衰退が止まりません。

魚が減った原因を「乱獲」と認められない国

北欧・北米・オセアニア(以下、漁業先進国)をはじめ、漁業で成長をとげる国々は、科学的根拠に基づく水産資源管理をしていることが共通しています。水産物輸出で世界第2位、水産業で大きな成長を続けるノルウェーをはじめ、漁獲量減少の原因を「乱獲」と認めて資源管理に大きく舵を取った国々があります。

一方、わが国では、漁業者に任せる自主管理が主体です。さらに、魚が減っていく主な理由を「乱獲」と認めない傾向にあります。「よくわかりません」ではなく、もしわからないのであれば、FAO(国連食糧農業機関)の行動規範にあるように、予防的アプローチをすることが必要です。

前回記事に対するリアクションで、目についたのが「漁業者が悪い」という趣旨のコメントでした。「魚が獲れない⇒小さな魚まで獲る⇒魚が減る⇒魚が獲れない」という悪循環の中で、確かに小さな魚まで獲っているのは漁業者です。

しかしながら、筆者は漁業者が悪いとは考えていません。それは「自分ゴト」として考えていただけるとよくわかります。悪いのは、漁業者ではなく、資源管理制度がまだ機能していないことにあります。

大きくて、脂がのった旬の時期のほうが、消費者のニーズに合い価格が高いことを漁業者が知っていることはいうまでもありません。しかし、小さな魚でも自分が獲らなかったら、他の漁業者が獲ってしまうことになります。これを「共有地の悲劇」と呼びます。

ご自分が漁業者という前提で考えてみてください。昔たくさん獲れていた魚が獲れなくなり、どんどん価値が低い小型の魚ばかりになっているとします。価値が低いと言ってもお金にはなります。しかし、大きくなってしまう前に獲ることで、資源が減っていくことは誰にでもわかることです。

全体としては悪循環となりますが、漁業者自身は生活がかかっているので、この状況下では「小さな魚でも獲る」という選択に、ならざるをえないのではないでしょうか。

この状況がまさに「乱獲」です。しかしこれは漁業者が悪いのでしょうか? 漁業先進国でのほとんどの商業魚種がそうであるように、水産資源を適切に管理にしている国々では、日本のようなことは起こりません。

漁業先進国の漁業者はどう違う?

わかりやすい成功例として、筆者が長年見てきたノルウェーの漁業者のケースをあげてみましょう。漁業者には、漁船ごとに実際に漁獲できる数量より、はるかに少ない漁獲枠が割り当てられています。

漁業者の関心は「大漁」ではありません。決められた漁獲枠でどれだけ「水揚げ金額」を上げるかに関心があります。つまり重要なのは「水揚げ数量」ではなく「水揚げ金額」となります。

価値が低い小さな魚や、市場の評価が低い、おいしくない時期の魚については、安い魚を獲るために貴重な漁獲枠を使うのは、もったいないという発想になるのです。

他の漁業者が水揚げしているからといって、すぐに漁場に向かうということはしません。それは、水揚げが集中すれば魚価が下がるからです。

漁業者は、どの漁業でどのくらいの大きさの魚が何トン獲れたかをネット上で公開します。そしてバイヤーである冷凍加工業者はその中身を見て入札します。ネットに公開する情報の内容に駆け引きはありません。

漁業先進国の漁獲枠は、譲渡可能であったり(ITQ・ニュージーランドなど)、漁船ごとであったり(IVQ・ノルウェー)など国によって運用は異なります。しかしながら、大漁祈願をして価値が低い小さな魚まで一網打尽にする漁業は行っていないという点で一致しています。

自分が漁業先進国の漁業者であったとしたらどうでしょうか。貴重な枠で少しでも水揚げ金額を増やすことに腐心し、価値の低い魚は獲るのを避けるのではないのでしょうか?

魚のサステナビリティに無関心な日本人

消費者の意識も日本は進んでいるとは言えません。フランスの調査会社「イプソス」が28カ国の人々を対象に実施した調査が、日本人がいかに魚のサステナビリティに無関心であるかを浮き彫りにしています。

(出所)Global Advisor Sustainable Fishing Report(IPSOS)

以下は拡大図です。世界平均で80%の人が水産物を選ぶ際に、サステナビリティを非常に重要、もしくは重要と捉えているのに対し、日本人の平均はわずか40%と段トツに低く、下から2番目のロシアでも73%です。また、まったく重要ではない、が11%もあります。この項目が2桁の国は他になく、サステナビリティ意識の面で国際的に大きく後れを取っています。

(出所)Global Advisor Sustainable Fishing Report(IPSOS)

「安くておいしければいい」の危なさ

みなさんは、魚を店で買ったり、外食で食べたりする際に、その魚の資源の持続性について考えることがあるでしょうか。「こんなに小さな魚を獲って大丈夫か」「この魚は絶滅危惧種ではないのか」「密漁品ではないのか」ということより、多くの方が「安くておいしければいい」に注意が向いているはずです。魚の資源が激減して大変なことになっていることに、考えをめぐらせるのはごくわずかではないかと思います。

しかし「安くておいしければいい」という考え自体が、世界と大きくズレてしまっているのです。SDGsの14番目のゴール「海の豊かさを守ろう」で明記されているIUU漁業(違法・無報告・無規制)の廃絶についても関心が低いわが国では、そもそも発泡スチロールの鮮魚の外箱にバーコードさえない場合がほとんどです。その結果、厳格なトレーサビリティ(生産流通履歴)が確保されておらず、クロマグロ、アサリをはじめ、虚偽報告や産地偽装が後から発覚するのです。

水産資源を守り、おいしく魚を食べ続けるには、客観的な事実に基づいた「水産資源管理に関する正確な情報」を共有することが不可欠です。国民の理解が得られれば、行政も動きやすくなります。

国は「国際的にみて遜色のない資源管理」を目指しています。これに対し、世界の成功例に目を背け、水産資源を減らし続けて一番困るのはほかならぬわれわれ日本人です。 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿