久々に、いい映画を見たようなきがします。
冒頭の場面から素晴らしく、映画の中に一気に入っていけました。
主人公の男が、仕事先のトイレの有る場所に向かう早朝、カーステレオの
カセット(この男のカーステレオはカセット)を入れると
ジ・アニマルズの「朝日のあたる家」が聞こえてくる。
それが、東京の街並みに朝日があたる映像に重なってくるのである。
この導入部の素晴らしさ、思わず笑みがこぼれてしまう。
無性に家でも「朝日のあたる家」が聴きたくなりました。
この映画、前半はセリフが非常に少ないのですが
私のように補聴器を利用しているものにとっては、実に有難い映画です。
最初の仕事先のトイレのある場所の映像が、私には衝撃でした。
よく見かける黄色い「トイレ清掃中」の看板を置いて、掃除していると
高校生くらいの若者が、「なんで今頃掃除してるんだよ」みたいな
いかにも不機嫌そうな顔をしてトイレを利用します。
そして、帰り際「トイレ清掃中」の看板を蹴っ飛ばしていくのです。
この後、主人公の男の顔の表情に画面は変わりますが
男の顔の表情は、まるで何事もなかったかのように
掃除を続けるのです。多分こんなことは日常茶飯事なんでしょう。
看板を蹴ったのも、わざとやったのか、間違ってぶつかって
しまったのか、微妙な撮り方をしています。
この間セリフは当然ですが、ほとんどありません。
でも、映像が全てを物語っていました。
中盤、ダレる部分もあるのですが
後半は後半で楽しめました。
ところで、後半、実の妹が訪ねてきます。というのも、男の姪が
一人で訪ねてきて、そのまま居候していたのです。そのため
自分の娘を引き取りにきたわけです。この妹が、最初に発する
言葉が「こんなところに住んでるのね」なのです。
しかも、お抱え運転手付きの高級車で乗り付けてきたわけです。
しかし、このシーン、私には今一つ納得出来ませんでした。
帰り際、妹とハグするのです。私とさして変わらない男が
妹とハグするだろうかと思ったのです。
このへん、監督が外国人であるヴェンダースの影響なのかと
思ったりしました。
この素材、日本人の監督に撮ってほしかったなーと思いました。
この妹が、訪ねてくるシーン、私は勝手に妄想していました。
妹は、別れた元の妻であり、姪は自分の娘であると。
そうすると、二人のハグも納得できるのです。