学習展開の実態からみた総合支援学校高等部の建築計画に関する研究
川崎啓介 上野淳(指導教員)
平成21年度修士論文梗概
1 研究の目的
総合支援学校高等部の建築計画に関する施設のハード面・ソフト面について多角的な調査・分析・考察を行う事で総合支援学校建築における基礎的指針を得ることを目的とする。
2 調査概要
白河及び鳴滝における高等部職業学科全学年17学級、計155名に対し、学習・生活の展開に関する終日観察を2009年10月に両校3日ずつ行い、実態を把握する。さらに、教室・家具の実測調査により空間のスケールやゾーニングを記録した。
3 結果
1)学習活動の内容分類と時間割
両校に大きな差は見られず、「職業学習」の占める割合が50%で最も多かった。
2)生徒の一日の生活・学習展開の実際
「一般・運動・実習学習」においては基本字程度おりに授業が行われていたが、「職業学習」において、1クラスが分散し同時多発的な学習を展開している場面が多く見られた。
3)教師の支援形態からみる学習集団の展開の実際
白河では、1クラス内でさらに分散し3~5人と小規模な学習展開となっている。鳴滝は校外学習によって人数が減るため、2クラス合同になり8~9人編成となっていた。
4)学習内容と学習集団構成の関係
「一般・実習学習」は基本的に3~7人と小規模で行われているが「運動学習」は12に人以上と非常に多い。「職業学習」は1~13人と非常に多様であり、集団の中で社会性を養う一方、個別の能力を上げることも重要である。
5)総合支援学校における空間構成
教室の大きさは通常かもしくは小規模となっているが、学習展開に柔軟に対応できる空間の計画が重要だと考察できる。
4 まとめ
1)「職業学習」が最も多く、特にその空間に配慮する必要がある。
2)デュアルシステムを取り入れる場合人数の変動に対応できる柔軟な教室環境、及びその集団編成が重要である。
3)普通学習と合同クラスの授業に対応した柔軟性のある教室空間が求められる。
4)「職業学習」の行動場所や集団編成の変化を許容し得る教室環境構成が必要である。
5)収納スペースの充実や、余裕のある空間環境構成が必要である。
6)学校内のカフェ等の地域住民も利用できる機能は、生徒のコミュニケーション能力向上に非常に有効である。
5 感想
通常の高校よりも多彩な授業を行う事から、対応しやすいオープンな空間が必要だと感じた。障害者に対するデュアルシステムや、少人数授業は、自律性を高める面で有効であると感じた。
(副島 眸)
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