建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

原利明,小林吉之,蔵重由貴子,藤本治志:摩擦の異なる仕上げ材間の識別容易性に関する研究

2012-03-16 20:43:24 | 書架(障碍者関係)

摩擦の異なる仕上げ材間の識別容易性に関する研究

原利明,小林吉之,蔵重由貴子,藤本治志

日本建築学会計画系論文集(C編)75巻754号,1705-1711, 2009年6月

1.背景と目的

近年では建築空間において一般的な仕上げ材の足の感触の違いを用いて歩行空間を提示する事例がある.従来の誘導ブロックのような突起を用いずに視覚障害者に歩行空間を提示する手法を提案することによって誘導ブロックが敷設されていなかった箇所へ歩行空間を提示することが可能になり,誘導ブロックを補完することができると考えている.

2.調査概要

 足底以外の情報を遮断した被験者に弾性や摩擦といった感触の異なる仕上げ材を組み合わせた歩行路を歩き,前後の素材の違いを認識した地点で停止してもらい.仕上げ材が同じであったか,異なっていたか被験者に回答してもらう.床仕上げ材は①表面を磨いて摩擦を小さくした御影石「ミガキ」②バーナーで表面を粗し摩擦の大きな御影石「バーナー」③弾性差のあるカーペットタイル「カーペット」を用いた.

3.認識率の高い組み合わせ

カーペットとカーペット,ミガキとミガキ,バーナーとバーナー「前後の素材が同じ」と認識できる被験者の認識率は高くなり,カーペットと他の2つの摩擦の床仕上げ材を組み合わせた場合も被験者が違いを認識しやすい結果となった.

4.認識率にバラつきのある組み合わせ

「ミガキ」と「バーナー」といったような摩擦の異なる組み合わせの床仕上げ材間の認識には,認識率の高い被験者郡と認識率の低い被験者群が確認された.摩擦差を正確に認識できた被験者群は歩行中遊脚後期に踵を地面に擦らせながら歩行しており,その際に床仕上げ材の摩擦の違いを識別していたことが示唆された.

5.まとめ

全体的には摩擦差の識別性は弾性差の識別性よりも有意に低いことが確認されたが,正答率が高い群と低い被験者群の2群が確認され,正答率が高い群の被験者らは,遊脚後期に踵を地面に擦ることで,摩擦差の識別性を高くできる可能性がある.

6.感想

様々な課題は多いが従来の突起を用いた誘導ブロックに変わる新たなデザインの開発ができたのならば,より良い社会に変わっていくのではないかと思いました.

横井 玲伊


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