老人は 十五で死ぬ
私の手は 老人の手だ
アル中で震えていた 血管の浮き出た
大叔父の手だ
私の顔は 老人の顔だ
頬のたれた 白い無精髭がまばらだった
父親の顔だ
肉体は 成長し 壮年を迎え
そして 老衰してゆく
血管は硬化し 血液は巡りづらくなり
皮膚はたるみ つやを失ってゆく
しかし 私の心は 十五のままだ
十五のままで 私の心は
だんだん 頑なになってゆく
私の心は 老いてゆかない
十五のままで 私の心は
ますます わがままになってゆく
未熟なままの制御できない心が
老成したはずの自分の世間面を
冷笑する
老人は 老人を演ずるが
十五のままの 自分の心は
いつか 肉体を破って表出する
老人を演ずるのをやめるとき
それは 自分が死ぬときだろうか
それとも ぼけて自分が分からなくなるときだろうか
それとも 狂って 何か犯罪を犯すときだろうか
老人のままで 死ねるか
十五のままで 死ねるか
私の肉体は 心よりも早く老いる
早老症を患っているのか
それとも 私の心が
肉体の老化に追いつけない
遅老症に罹っているのだろうか
老人は 十五で死ぬ