読み終えました。毎晩のように遅い時間帯まで読みふけっていましたが、
10日間ほどで読み終え、最期の章によって与えられた圧倒的な亡失感に
しばらく浸っています。
注:以降はネタバレを含みます。
<天井のとらんぷ>では、元女流奇術師の曾我佳城について、写真を撮りまくりたくなるような美人で、奇術の博物館を建てる予定とか、佳城とは墓場のことで、でも本人はその名を1度も嫌いになったことはない、という話から、すでに最期の話に向けた伏線が張られているとは思いもよりませんでした。
<シンブルの味>では、曾我佳城の本名は「大岡佳子」、美しく、上品な人だという印象を更に与えられ、以降の<空中朝顔>でも、「まだ開花の盛りという感じ」や<白いハンカチーフ>では知性と色香が美しく調和した女性<ビルチューブ>では三十を超し、上品な色気を湛えている女性、という風に曾我佳城の上品さを引き立たせ、印象に深く刻みこまれていったのが、実は著者の術中にまんまと嵌っていたのだと後から思い知らされました。
<バースデイロープ>では、ストーリーが男女の会話から入っていき、途中から登場する曾我佳城の推理の語り手として話が流れていく構成を、ここで暗に意識させられたのではないかと思います。
<消える銃弾>では串目匡一少年が奇術に、そして曾我佳城に魅了され、<カップと玉>からは曾我佳城と串目匡一がともに行動している様が描かれて、<石になった人形>でいよいよ奇術博物館が着工となり、曾我佳城の家に串目匡一少年が手伝いにきている所から、だんだん最終章に向けた小さな波が起こってきていました。また、この章の最期の展開が、曾我佳城の内面を少し表していたと思います。
同時に曾我佳城が話す現役時代の話に、荒岩イサノの名前と外国の興行主に目を付けられて引き抜かれた事が出ていたのですが、最初は重視していなかったので、後で読み返して気付き、その伏線の巧みさに驚愕しました。
<七羽の銀鳩>では曾我佳城を伎芸天と言う人がいたり、建築中の博物館は「舞台のある」となっていました。<剣の舞>では子供の復讐計画に失敗した犯人の母親を哀れむ曾我佳城を描き、印象に微妙なズレを表して、<虚像実像>では今度は串目匡一が、曾我佳城に舞台で裸を強制する様な相手は殺す。と、狂的な光を帯びた目をしながら話し、危うさを感じとらされました。
<花火と銃声><ジグザグ><だるまさんがころした>では、ほとんど純粋に短編ミステリーとして読めますが、曾我佳城の上品さと、串目匡一が行動を共にしている事、奇術博物館が完成間近である事などが、少しずつ書かれています。
そして、<ミダス王の奇跡>
前の章まで純粋に短編ミステリーとして載っていたので、うっかりそのつもりで読んでしまいます。よし子という名前から、もしかして?と思い、偶然にも絵を描くときの号が同じ佳城という人が推理をした話を、主役の佳城だと読者に思い違いをさせようとしている事は気付きましたが、まだまだその私の読みは浅かったようです。
「お茶をもらってくる」と「そそのかされただけ」の言葉によって、推理したのはやはり主役の佳城という事になっているとは思いもよりませんでした。(他の方の感想を見て知りました)
この時に、石になった人形の所で出た名前を覚えていればと・・・
それでも、ここまで上品な色気と知性があり、凛とした存在感を放つ主役の曾我佳城を、頭の中で創造させられていては、ここでそれを払拭しきれずに気づく事が困難だという事はいなめません。
やはり、泡坂妻夫先生には脱帽です。当然の事ですが、僕なんかの頭では到底及びません。
10日間ほどで読み終え、最期の章によって与えられた圧倒的な亡失感に
しばらく浸っています。
注:以降はネタバレを含みます。
<天井のとらんぷ>では、元女流奇術師の曾我佳城について、写真を撮りまくりたくなるような美人で、奇術の博物館を建てる予定とか、佳城とは墓場のことで、でも本人はその名を1度も嫌いになったことはない、という話から、すでに最期の話に向けた伏線が張られているとは思いもよりませんでした。
<シンブルの味>では、曾我佳城の本名は「大岡佳子」、美しく、上品な人だという印象を更に与えられ、以降の<空中朝顔>でも、「まだ開花の盛りという感じ」や<白いハンカチーフ>では知性と色香が美しく調和した女性<ビルチューブ>では三十を超し、上品な色気を湛えている女性、という風に曾我佳城の上品さを引き立たせ、印象に深く刻みこまれていったのが、実は著者の術中にまんまと嵌っていたのだと後から思い知らされました。
<バースデイロープ>では、ストーリーが男女の会話から入っていき、途中から登場する曾我佳城の推理の語り手として話が流れていく構成を、ここで暗に意識させられたのではないかと思います。
<消える銃弾>では串目匡一少年が奇術に、そして曾我佳城に魅了され、<カップと玉>からは曾我佳城と串目匡一がともに行動している様が描かれて、<石になった人形>でいよいよ奇術博物館が着工となり、曾我佳城の家に串目匡一少年が手伝いにきている所から、だんだん最終章に向けた小さな波が起こってきていました。また、この章の最期の展開が、曾我佳城の内面を少し表していたと思います。
同時に曾我佳城が話す現役時代の話に、荒岩イサノの名前と外国の興行主に目を付けられて引き抜かれた事が出ていたのですが、最初は重視していなかったので、後で読み返して気付き、その伏線の巧みさに驚愕しました。
<七羽の銀鳩>では曾我佳城を伎芸天と言う人がいたり、建築中の博物館は「舞台のある」となっていました。<剣の舞>では子供の復讐計画に失敗した犯人の母親を哀れむ曾我佳城を描き、印象に微妙なズレを表して、<虚像実像>では今度は串目匡一が、曾我佳城に舞台で裸を強制する様な相手は殺す。と、狂的な光を帯びた目をしながら話し、危うさを感じとらされました。
<花火と銃声><ジグザグ><だるまさんがころした>では、ほとんど純粋に短編ミステリーとして読めますが、曾我佳城の上品さと、串目匡一が行動を共にしている事、奇術博物館が完成間近である事などが、少しずつ書かれています。
そして、<ミダス王の奇跡>
前の章まで純粋に短編ミステリーとして載っていたので、うっかりそのつもりで読んでしまいます。よし子という名前から、もしかして?と思い、偶然にも絵を描くときの号が同じ佳城という人が推理をした話を、主役の佳城だと読者に思い違いをさせようとしている事は気付きましたが、まだまだその私の読みは浅かったようです。
「お茶をもらってくる」と「そそのかされただけ」の言葉によって、推理したのはやはり主役の佳城という事になっているとは思いもよりませんでした。(他の方の感想を見て知りました)
この時に、石になった人形の所で出た名前を覚えていればと・・・
それでも、ここまで上品な色気と知性があり、凛とした存在感を放つ主役の曾我佳城を、頭の中で創造させられていては、ここでそれを払拭しきれずに気づく事が困難だという事はいなめません。
やはり、泡坂妻夫先生には脱帽です。当然の事ですが、僕なんかの頭では到底及びません。