分け入っても分け入っても本の森

本読む日々のよしなしごとをそこはかとなく♪

●ちいさなヨンダくん24-(1)

2006年11月19日 17時39分19秒 | ちいさなヨンダくん
おおつぶのなみだがこぼれるのをぬぐうこともできず、ヨンダくんは、めのまえのけしきがぼうっと、かすんでいくようなきがしました。
「あのね、ぼくね」
カヤの木のおじいさんに、――といいかけたまま、つづけることができずに、ひっくひっく、としゃくりあげます。
おかあさんパンダが、ヨンダくんにくるりとせなかをむけてしまったからです。

そして、おかあさんパンダは、パンダのこどもをかかえて、すあなからでていってしまいました。
どこにいくの、ぼくもつれていって。おいていかないで。
ことばにならならず、しゃくりあげるヨンダくんののどには、あついかたまりがこみあげてきて、あたまがくらくらします。

おいていかれたヨンダくんは、あとからひとりですあなをでました。
おかあさんパンダのにおいをおいかけて、どろだらけになりながら、いきさきをさがします。
どんなにわかってもらえなくても、おかあさんのそばにいたいのです。
おかあさん、ぼくここにいます。

みなみかぜのおねえさんも、かやのきのおじいさんもたすけてくれない、まっくらな森のなかを、ヨンダくんはあるきました。
こわさと、ふあんにおしつぶされそうになりながら、むちゅうでおかあさんパンダをさがして、あるきつづけました。