陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

夏のカレー地獄

2021-08-12 | 医療・健康・食品衛生・福祉

東日本大震災と同じ年に発表されたアニメ「輪るピングラム」。
今年10周年にあたるとのことで、制作者側がリブート版を企画中とのニュースがありました。幾原邦彦監督作としては「少女革命ウテナ」が有名だけれど、本作は毒親や育児ネグレクト、宗教二世の諸問題を、「銀河鉄道の夜」を絡めて独創的に表現した異色作。

そのアニメに出てくる女子高生には、毎月きまってカレーを食べる日があります。それはもはや過去のものになった彼女の家族の想い出が関わっている。

話は変わりますが、私の同居家族もカレーがやたらと好きで、毎週食べたいと抜かします。とくに夏場に。

しかし、私はさほど好きではない。
給食で食べるのが遅く教室にひとり居残りさせられた小学校時代のトラウマがあって。カレーはまだしも、ハヤシライスは見た目がなにかを想起するので絶対に口にできないです。著名な盲目のピアニスト氏には申し訳ないですけれど。

カレーが嫌いな理由は他にもありまして。
独り暮らしの貧乏時代にレトルトカレーをよく利用していたからとか、昔の交際相手と食べたホテルのレストランのカレーが不味かったからとか。メニューの少ない喫茶店に行くと、カレーかサンドイッチかぐらいしか選びようがなくてがっかりしたとか。臨海学校のキャンプ食でつくったけれど、灰が混じった味だったとか。とにかく、カレーにいい印象がない。私の世代ですと、和歌山の毒カレー事件などもあったので、不特定多数に配給されて、みんなで一緒に食べあうような食べものがなんとなく怖いんです。けんちん汁とか。

ところが、そんな私でもあるものを添えたら、カレーですらも喜んで食べられます。
それは生卵。うちの田舎にはもちろんない風習で。関西在住の学生時代、まかないがあるバイトで知った食べかたです。住み込みの社員さんは三食付きだったようですが、炊事係の女性が余ったご飯を分けてくださったので、親からの仕送りもない下宿生の苦学生だった私にはとてもありがたかったものです。そのバイト先は従業員同士の諍いもあまりなく、働きやすかったのでした。

調べてみると、カレーライスに生卵を落とすのは関西特有らしい。
私も最初は驚いたけれど、ルウがまろやかになるし、食後のお皿の脂ぎった感じが少なくなるので気にいっています。しかし、同居家族には気味悪がられていますが。

ちなみに、カレーを白飯にかけるのは日本独自の文化のようで。
我が国にはじめて登場した明治時代には、カエルの肉やネギも原材料になっていたとか。現在でも地方独自の食材(牡蠣や馬肉、蛸など)を入れるご当地カレーもあるようです。私は、カレーにうどんやら、トンカツやら、他の料理をトッピングしたのは無理ですね。カロリーが高そう…。

うちの家族がカレー好きなのは、辛いものを食べると疲れがとれるからなのだそう。しかし、暑い日にわざわざカレーを食べたくはない私です。

食べものの好き嫌いには、そのひとのひそかな歴史がついて回るものですね。それにしても、ラーメンと並び、カレーが好きな日本人が多いのは不思議です。手軽に野菜は摂れますけどね。

(2021/06/27)




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