陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本の神話は、世界に誇るサブカルチャーの源

2018-02-11 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

本日2月11日は建国記念日です。
なぜこの日が建国記念日なのか。そもそも、日本という国はいつから成り立っているのか。不思議ですね。ケント・ギルバードさんの説によれば、日本ほど単一民族の国家でその起源が古い国は、世界に類を見ないそうです。エジプトも、中国も、メソポタミアも文明の歴史としては古いですが、国としては何度も侵略され滅ぼされています。日本は政権が代わっても天皇家は万世一系、珍しい国家なのだそう。

その天皇家は、嘘か真かわからぬながらも、神代から血筋が続き、神の子孫とされています。その日本の神々の系譜をあらわしたのが、『古事記』であり、『日本書紀』ですよね。いま、教育勅語の良さが見直されていますが、私が不思議なのは、古事記や日本書紀の内容が、教科書ではほとんどとりあげられないままだったことです。世界で最古の物語は「竹取物語」だと言われていますが、古事記や日本書紀は、それよりさらに古いファンタジーでもありますよね。古典の教科書で「源氏物語」や「平家物語」の一節を学んだことはあっても、歴史の教科書で、魏志倭人伝の邪馬台国の記述はあっても、古事記や日本書紀の一節が引用されたことはほとんどありませんでした。私の知る限り。

ですから、日本に生まれ、日本に育ち、生粋の日本人であるのに、桃太郎や浦島太郎などの昔話は知っているのに、古事記や日本書紀の中身を詳しく知らないという人は少なくないはず。実際、私も最近まで知りませんでした。海幸彦、山幸彦とか、稲葉の白兎のお話ぐらいはなんとなく知っていたぐらいで。神社には系列があって、それぞれ決まった神様が祀られていることも。

この日本神話に興味を抱いたのは、私の場合、かなり不純な動機です(笑)。
このブログでもさんざん紹介していますが、「神無月の巫女」というアニメにハマってしまったから。二次創作小説を書いてみたいと思い立ち、手当たり次第に日本神話のガイド本なども読みました。ここ近年のパワースポット巡りで神社人気も高まっていますし、古事記や日本書紀関連本なども多く出版されましたね。

日本神話を知るうえでわかりやすい書籍はいろいろあるでしょうが、私がおすすめしたいのは、こうの史代さんの漫画『ぼおるぺん古事記』です。古事記の内容をコミック化したものですが、ボールペンの味わい深い筆致と、古文を丁寧に読み下している稀有な漫画ですね。

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日本列島のはじまりは、現在の淡路島にあたるおのころ島からだった、というのは知られています。しかし、日本列島の本州、四国、九州、佐渡島などの各地に、神様の名前がついていたというのは驚きではありませんか。イザナギノミコトとイザナミノミコトの夫婦神が産んだ子たちなのですが、最初は女が男に声をかけたのでうまくいかなかったとか、その誘い文句が絶妙というか(笑)、黄泉路に旅立った妻を夫が追いかけるが見捨ててしまうとか。マザコン弟のスサノオノミコトの大暴れして、しっかり者の姉のアマテラスが引きこもってしまうとか。昔はやんちゃしていたスサノオ父さんが、娘の婿になるオオクニヌシを試すとか、とにかく物語として面白さ満載ですよね、古事記って。神様といえども、家族の悩みと変わらず、とことん人間くさい。ギリシア神話だと、ゼウスが浮気者であちこち現地妻をつくったりするわけですが、日本神話の場合はほとんどが親子、兄弟間の確執ですよね。

日本神話が教科書でほとんど触れられなかったのは、おそらく戦後のGHQによる教育改革です。神国日本という軍事教育を恐れた連合国軍は、皇室こそ残してくれましたが、日本の神道を弱体化しようとしていました。日本人が神代から続く稀有な国であり、国主が神の子孫であるという思想を排除するために、神道と結びついた武道はスポーツとして教育現場にもたらされ、古事記や日本書紀はその中身を詳しく教えることは許されなかったのではないでしょうか。

しかし、いま、日本では古事記や日本書紀は再びブーム。
世界中に人気を集めるクールジャパン、日本のサブカルチャーの源泉だからです。三国志や水滸伝好きが高じて中国ファンになってしまうように、日本の漫画やアニメが好きで、日本の神社参りをする外国人も増えています。巫女のコスプレをして写真撮影する外国人女性たちもいますよね。

古事記や日本書紀は、日本人ならば読むべき教養!とおっしゃる方もいますけども。
そこまで強制しなくとも、古事記や日本書紀は、いちどは読んでおくと面白いですよ。いまでも街中にひっそり神社や祠などはありますし、神々への信仰は身近に根付いています。

古事記と日本書紀、それに関する本などは日本の良さを再確認できそうなこの一冊。歴史や伝承が好きなあなたはもちろん、苦手な方もぜひいちど読んでみませんか。自分のルーツがわかることで、違った世界が見えてくるかもしれませんよ。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。





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