われらがドイツのヨアヒム・レーヴ監督(通称ヨギヨギ)の辞任予定発表からまだ間もない現地時間の11日、ドイツ・フランクフルトにあるDFB本部で今回の一連の流れを改めて説明するため、記者会見が開かれました。
DFB本部には大勢の取材陣が押し寄せましたが、会見は原則リモートでの発表。取材陣が待っているのは会見前後のヨギヨギの姿でした。
会見予定時刻の約30分前、本部の中にヨギヨギが姿を現しました。
さらに会見に同席するビアビア(オリバー・ビアホフ独代表チームマネージャー)の姿も。
予定時間を少しオーバーしたころ、ついに会見がスタートしました。
まずはDFBのフリッツ・ケラー会長(写真左)があいさつ。
「今回の彼の決定により、DFBは新しい時代を迎えます。彼には深い感謝とともに、多くの功績をたたえたいとは思いますが、それはEURO(欧州選手権)が終わったあとにすることにしましょう。彼が早い時期に発表したことで、後継者選びに余裕をもって臨める時間を与えてくれたことにも感謝しています」と会長は謝辞を述べました。
そしていよいよ質問攻め必至の、ヨギヨギの質疑応答へ。
まずは発表後の気持ちを聞かれ「この約15年間はとても長いものであり、その中で苦楽を共にした選手たちとスタッフみんなが常に自分に信頼を寄せ、サポートしてくれたことに感謝しています。そこで生まれた成功は誇りであり、キャリアの中でW杯優勝とコンフェデレーションズカップ優勝のタイトルはもちろん、多くの素晴らしい瞬間に立ち会うことができました」と回答。
また、ビアビアは発表の数日前にヨギヨギから今回の打診があったと語りました。辞任についてはTEAM JOGIのスタッフのほか、マヌ子(マヌエル・ノイアー選手)やトニ(トニ・クロース選手)、ギュンちゃん(イルカイ・ギュンドアン選手)などのベテラン選手にのみ、事前に通知されたそうです。
辞任を決めたことについてヨギヨギは「スペイン戦の結果に関係なく、この1年は新型コロナ感染症に関するパンデミックについて考える時間がたくさんありました。その間、自分の将来について真剣に考える時間もあり、そこで自問自答した結果、この夏に別の監督にバトンを渡すのが最適なタイミングだと感じたのです」と経緯を説明。
「この決断は絶対に正しいものだと信じています。若手選手には経験がまだ足りない部分もありますが、彼らには信じられないほどの可能性と才能があることを知っています。彼らは2024年開催予定のトーナメントで最大限に力を発揮できる世代だと確信しています。同時に、自分がそのときに同じポジションにいるという感覚がなかったのです。代表チームにとって大きなタイトルのトーナメントには3年ほどの準備期間がかかり、新しい流れを生み出すためには監督自身にも時間が必要です。チームにとって次に進む段階の期間を確保するためにも、まずオリヴァー(・ビアホフ)と相談し、決心してから会長に進退を告げました」
そして取材陣からの「ここ数か月の批判が影響したのではないか?」という質問には「それはなかったです。代表チームの試合の場合、まず10か月間の長いブレークがありました。その間も選手たちはコロナ禍の中でトレーニングの機会を奪われたり、けがに遭遇しながらリーグ戦を行っていました。それらが代表戦に困難をもたらすことはわかっていましたが、誰もがモチベーションを保ちつつ、集中して取り組んでいたと評価しています。この流れをより良いものにするためには大きなインパクトが必要だと判断し、辞任という決定をくだしました」とヨギヨギ。
そしてその批判とともにたびたび話題にのぼっていた、松(マッツ・フンメルス選手)や三浦(トーマス・ミュラー選手)、ボア(ジェローム・ボアテング選手)らOBたちの代表復帰についても質問が。「これに関して、みなさんには耳を傾けてもらいたい。私は復帰の可能性について簡単にあるなしを決定してはいません。コロナ禍でなければ、昨今のチーム改革についての変更を中断するべきではないと思っています。代表チームは常にトーナメントのために自分たちが何をすべきか、プレースタイルはどんなものであるか、チーム構成がどのように機能していくかなど、検討を幾重にも重ねたうえで常に結論を出しています。そして、監督としての決定は世論に左右されるべきものではありません。自分が確信をもったうえで判断しています」ときっぱり。
補足すると、先月新しい著書を発表した(〓_〓)もキャリア組復帰について取材され、同じことを述べていました。「個人的には監督の意向が正しいものと信じているし、世論や各クラブ首脳陣など、周囲の意見に監督が振り回される必要はないと思っている。なぜなら自分たちが彼の決断(南アフリカW杯時期のキャプテン世代交代)によって、中堅世代のときから代表チームの主軸を担うことを任されたからだ。現にそれを経たからこそ、ブラジルで結果を出すことができたのだと思っている」という意見もあるように、主に代表経験のあるクラブ首脳陣やサッカー関係者の復帰推進派に対し「そこに影響を受けて意見を変えることは、良くも悪くもかえって監督としての資質にかかわる」という見方もある状況です。
ぶっちゃけヨギヨギによる"思い切った世代交代&厳格なヒエラルキーの撤廃"という決断の恩恵を受けた側というのもあるのでしょうが、(〓_〓)の意見は期せずしてヨギヨギをはじめとする代表監督と、世論&クラブ首脳陣やOB識者らからの水面下でのプレッシャーという問題が浮き彫りになったかたちともいえるのかもしれません。
さらにコロナ禍で各クラブが金銭面で大きな負担を強いられている現在、何人代表に出すかでクラブ収益も大きく変動するという側面もあることは言うに及びません。
話は戻って、今後の代表メンバーについては「(ヨシュア・)キミッヒ、(レオン・)ゴレツカ、(レロイ・)ザネ、(セルジュ・)グナブリーなどの選手たちが最盛期に向かっています。これは2010年に感じた選手たちの印象と同じです。06年にはまだ顕在化していなかったものの、当時そこに多くの可能性があることはわかりました。その可能性を具現化させるためにはトーナメントのあとからじっくりと時間をかけ、新しいアイディアを実行するのに適切なタイミングを生み出すことが重要になります。これは将来的にも、より時間をかけて取り組むべき課題だと思っています」と述べました。
会見は辞任での緊張感が漂うものというよりも、期限を設定したことで肩の荷がひとつ降りたぶん、おおむね和やかな雰囲気で終了しました。
そして会見後にヨギヨギを待っていたのは……。
(余談ですが私が初めてヨギヨギに直接会えた場所が、まさに奥のパネルの手前のスペースでした。懐かしい!)
大勢の報道陣でした。み、密という字はドイツにはないのか……!?
目下、報道陣の焦点は「後継者は誰なのか」ということ。有力候補と言われているハンジ(ハンス=ディーター・フリックFCB監督)については「フリックと自分のチームワークは誰にも知られているでしょう。しかし後継者候補と話し合うことは自分の仕事ではありません。決定権はあくまでもDFBにあり、そのクッションの役目としてビアホフがいます。近年DFBは数々の素晴らしい決定をくだしていますが、今回も同じことが起こるはずです」とヨギヨギ。
また、ビアビアによると「監督候補はおそらく自国の人間になるだろう。それ以外の可能性も否定できませんが、我々は冷静かつ注意深く後任について考えていきます。監督としてのクオリティーを重視するため迅速に決めることはしませんが、遅くとも9月までには決断します」とのこと。
そして当然、今後も引き続き目標は“再び世界ランキング1位に返り咲く”こと。
「それは間違いなく目標であり、計画していることです。これはユースチームから始まる長いプロセスを経る必要があり、さらに今後は国際的に豊富な経験を積んだ監督を失うことになりますが、幸い選手たちの顔触れはそのままなので影響は少ないでしょう」とビアビア。
さらにヨギヨギは、自身の将来像について「今のところ、どんな可能性も除外することはできません。まだ今後については具体的に考えていませんが、まずは目の前のEUROが最重要項目です。今後はそのあと考えます」とのこと。
ということで、夏には大きな一区切りがつくドイツ代表。遅くとも来週末までには招集メンバーが発表される見通しですが、5月のEURO最終選考前としての重要なポイントになる試合ということもあり、その顔触れがどのようなものになるのか注目必至です。
では、また☆☆☆☆
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女性カメラマンによる白と黒の静謐な世界で表現された、2012年のEUROの記録。 レジーナ・シュメケン著 |
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2014年W杯のドイツ代表を完全記録。 |
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2010年W杯メンバーによる写真集。 エレン・フォン・アンワース著 |
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