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■闇は、晴れるか

 歴史の洗い直しを進める盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の肝いりで、官民合同の調査機関として04年秋に発足した国家情報院の真実究明委員会は、1973年に起きた金大中氏拉致事件の全容を公表するという。福田政権にとってはまたひとつ頭の痛い問題が噴出した、ということだろう。

《以下引用》
 「韓国の民主化リーダーだった金大中(キム・デジュン)氏(後に大統領)が73年に東京で拉致された「金大中氏拉致事件」の再調査を進めていた情報機関、国家情報院の真実究明委員会は22日、同事件の調査報告書を24日に公表する方針を固めた。複数の関係筋が明らかにした。報告書は、国情院の前身、中央情報部(KCIA)の事件への組織的関与を初めて公式に認める内容になると見られる」(10月23日『朝日新聞』)

 事件は故・朴正熙(パク・チョンヒ)軍事独裁政権時代に起きた。東京の韓国大使館一等書記官、金東雲の指紋が拉致現場から発見されたことで、当初から韓国情報機関員の関与が濃厚だったにもかかわらず、2度にわたる日韓両政府の政治決着で真相がうやむやにされていた。

 歴史の洗い直しを進める盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の肝いりで、真実究明委員会が昨夏までにほぼ調査報告をまとめたが、日韓関係への悪影響などを懸念し、公表を先送りしてきた。

 韓国側はいい。歴史を正しく見る、という現政権の方針からいえば、どんな中身であろうが覚悟の上だろう。問題は日本政府である。当時の自民党政権は田中角栄が首相だった。その下で図られた決着には、曖昧さだけではなく不透明な金も流れたのではないか、と噂されたり、朴正熙大統領の命令で実行されたのではないか、といった国家犯罪を指摘する声も挙がったが、真実は闇に埋もれたままだった。

 その経緯が公表されるということは、もちろんいいことだ。その際に、いまの福田政権は事件および事件決着に至った日本側の対応もはっきりと説明すべきだ。それは二度とこのような事件を引き起こさないという意味もあるからだ。

 公表は明日ということだが、その内容が待たれる。というのも、私自身この拉致事件の検証取材をしたことがあった。金大中大統領が誕生した直後のことで、韓国情報部が朴正熙大統領に当てて提出したとされる極秘の一部資料が外部に漏れたことがあった。その資料を基に、拉致した金大中氏を韓国・釜山に運んだ「竜金号」という船の船長や機関員からの証言を得たり、実行犯のトップとされた当時の情報部長、李厚洛に突撃インタビューなどもした。

 事件の輪郭や目的などはつかめたが、すべての真実が明らかに出来た訳ではなかった。容疑者とされた金東雲はいったいどこにいるのか、などわからない部分もある。そういう隙間を是非知りたい、と思うからだ。

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