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■金大中拉致事件~竜金号乗組員の証言①~

 事件は国家が関与していた、と認めた。34年前、東京・飯田橋のホテルから拉致された金大中氏事件に、韓国の国家情報院の真相調査委員会は今日、調査報告書を公表した。

《以下引用》
 「1973年に発生した「金大中事件」は、当時の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が直接指示した可能性が排除できず、最低でも黙示的な承認をしていたとの判断が下された。またこの事件は当時の李厚洛(イ・フラク)中央情報部長の指示により実行されたという事実と、事件発生後に中央情報部が組織的に真相を隠ぺいしようとしていた事実も確認された」(10月24日 韓国『連合通信』)《引用ここまで》

 韓国政府の公表を受けて、町村外務大臣は「韓国政府の謝罪」「捜査当局による真相解明」を会見で述べた。韓国の公権力が日本で犯罪を犯すという事件は、まさに日本の主権が侵害されたわけだから外相の主張は正しい。

 しかし一方で当時、公権力の関与が公然と語られていたにもかかわらず、結果的にはそこを曖昧にしたまま日韓両政府はフタをした。その意味では町村外相の発言は片手落ちの観は免れない。

 ここは双方の政府とも、どのような政治決着を図ったのか、それはなぜそうする必要があったのか、そのあたりのいきさつをきっちりとすべきである。

 今日から当欄では何回かにわけて、1973年当時、拉致された金大中氏を大阪港から釜山まで運んだ「竜金号」の船長始め乗組員に、1998年4月に私がインタビューした内容を掲載します。

『竜金号乗組員の証言①』 
 今日は「竜金号」船長だった李淳柱(イ・スンジュ)さん。

吉岡(以下Y)「お年は?」
李淳柱船長(以下I)「1934年生まれですから、67歳ですよ」
Y「金大中氏拉致事件にどういう経緯で関わることになったんですか?」
I「事件が起きる少し前、私がちょうど休暇に入っていたときに、釜山にある東洋造船という会社から、船長が辞めてしまったので、この船(龍金号)に乗ってくれないか、という話が来たんです。それで引き受けたんです」

Y「竜金号が中央情報部(KCIA)所属の船であることは分かっていましたか?」
I「入って間もなく分かりました。他の船員から聞いたんです。しかし初めのうちは荷物を運んだりしていたんです。だから知ったときにはどうしようもなかったんです」
Y「それまではどんなものを運んでいました?」
I「韓国から日本に庭石を運び、帰りの船では日本のくず鉄を運んでいたんです。乗船して3カ月ぐらい経ったときに、この船は特別な目的を持った船だと知ったんです」

Y「船の作りはどうでした、変わっていましたか?」
I「普通の貨物船と全く同じでした。以前は海軍が使っていたということでしたが、貨物船に改装したものでした。だから、金大中氏を連れて帰るなどという話は聞いたこともなかったんです」

Y「結局は事件に関わるわけですが、その航海はどのように始まったんですか?」
I「事件とわかる4、5日前、いつものように麗水(ヨス)から庭石を運んで出港しました。8月3日か4日でした。いつもの船員に混じって、その日は特別に二人の人が乗船しました。一人は鄭(チョン)さんという人で、よく東洋造船で見かけた人でした。うひとりは朴(パク)さんという人でした。観光でもしたくて乗ったのかな、と思いました」

Y「この航海がいつもと違うと感じたのはいつごろでしたか?」
I「事件が起きたあとです」
Y「なぜそれが事件だと思ったんですか?」
I「誰だか分からない人間を風呂敷みたいな大きな袋に入れ、それを船に載せて韓国に行こうといわれて、私は不法だといいました。これでは出港できないといいました」
Y「大きな袋みたいなものに入れられていたのが金大中さんだと分かりましたか?」
I「分かりません。ただその袋が動いていたので人間だとは思いました。袋を開けるまでは、それが金大中さんだとは思ってもいませんでした」

Y「誰がその袋を開けたんですか?」
I「鄭と朴の二人が船員に命じて開けました。開けてみて金大中さんだと分かりました。眼も口もテープで巻かれていました。二人はメシの時はそのテープをはずし、終わればテープを巻いておけ、と命令しました」
Y「普通だったら、船長は船の総責任者ですよね、その権限は全く無視されていたんですか?」
I「この船では金大中さんと同じように私も体中が縛られた状態でした」

Y「船の指揮はその二人が執っていたんですか?」
I「そうです。その二人が韓国に向かえと命令しました。当時、中央情報部といえば、山の草も動くといわれたくらい危ないところだと知っていましたので、逆らえば殺されるのではないかと怖かったですよ」(以下次号)

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