日本語教師ブラジル奮闘記

ブラジル生活裏話

デモ行進に直面して in Porto Alegre

2013年06月18日 17時53分58秒 | ブラジル事情

Policiais e manifestantes entram em linha de confronto

 日本のメディアでも報道されているようだが、現在バスの運賃の高さに端を発したデモ行進がブラジル全土で行われている。

 実はこのバスの運賃の高さに対するデモは僕が住むポルトアレグレで始まった。

 今年に入って、毎年恒例のバス代の値上げが発表されたのだが、そのバス代がブラジルの州都の中で一番高くなってしまうということで、当地の新聞で大々的に報道され、紙面上でその是非が問われていたのを僕は覚えている。

 しかし、そういったメディアによる批判にも関わらず、ポルトアレグレ市役所はバス会社の運賃値上げを認め、バス会社は新しい運賃でバスの運行を開始した。これに対して、憤慨した学生を中心とする市民が市役所の前に集まり、抗議集会を何度も行った。

 すると、市民からの抗議の凄さに圧倒されたのか、裁判所が介入し、バスの運賃を暫定的に前の運賃に戻す命令が下され、バス会社は仕方なく前の運賃で運行し始めた。

 今まで13年ポルトアレグレに住んでいてこんな事は一度もなかったので、市民の抗議行動によって公共運賃の据え置きもできるんだと感心していたら、サンパウロでも運賃値上げの時期がやってきて、その値段の高さからサンパウロでもその抗議のデモの動きが始まった。

 すると、ポルトアレグレから始まったこの公共交通機関の運賃の高さに対するデモの動きはあっという間に全国主要都市に飛び火し、ブラジル全土的な運動へと発展していった。

 因みに、今回の抗議行動の不満の矛先はバス代の高さだけでなく、ワールドカップ開催へのお金の使いすぎ、政治腐敗、宗教的原理主義、中絶禁止、ゲイ差別、警察による暴力といった様々な問題に対しても向けられ、これらの問題の関係者や団体も巻き込んだために、デモ行進に参加する人々が一気に膨れあがったというのが実情である。

 そして、昨日その一連の政府に対する抗議運動が最高潮に達し、デモ行進がブラジルの主要な州都で同時に行われたのである。

 僕はあろうことか、仕事のせいでそのデモ行進のまっただ中に居合わせてしまった。警察が一部の道路を封鎖しているために、道路は大渋滞。僕は渋滞で動けなくなった自動車の運転席からデモ行進の若者が通り過ぎていくのを静かに見守った。

 一部の人は通り去る車に難癖をつけて、車を叩いたり、車道の真ん中に座って車の往来を止めたりしている若い女性もいた。また、顔を布で覆って、好き勝手に棒を振り回している若者もいた。車を傷つけたり、暴力を振るわれる事だけはご免被ると、僕は車の中で人知れず恐怖に怯えながらも、通りを何もなく通過することができた。

 デモ行進をしている人の中の大多数は穏健派なのだが、一部の過激派はこれをいい機会に日頃の鬱憤をはらそうと、もう気にくわないものは何でも壊し、暴力で訴えることを厭わない。

 ポルトアレグレでは運航中のバスを何台か燃やしたほか、銀行の支店や自動車販売店に侵入したり、公的機関の建物にスプレーで落書きしたり、本当にやりたい放題である。また、ブラジルの首都であるブラジリアでは、国会議事堂に侵入したり、国会議事堂の建物の上に登って、占拠してしまうなどの暴行をはたらいている。

 こちらの新聞の報道によれば、この規模のブラジル全土のデモ行進は1992年のコロール大統領に対する弾劾裁判要求のデモ行進以来というから、今回はブラジル史に残る歴史的出来事と言えるのかも知れない。

 因みに、今朝の当地の新聞では、ポルトアレグレ市長がバス会社に一部の税金を免除することでバス料金を下げる案を市議会に提出すると書いてあったが、今後どういう展開になるのか。

 税金を下げればバス代は安くなるけど、市の税収が少なくなるわけで、どこかでお金が足りなくなる。だから、市は何らかの方法で市民から税金を取ろうとする訳で、バス代を安くすることだけが根本的な解決策とは成り得ないだろう。

 とにもかくにも、僕個人としては怖い思いをしてしまった。

 

 

 

 


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