日本語教師ブラジル奮闘記

ブラジル生活裏話

麻酔科医の就職物語 in Brazil

2011年02月26日 12時48分34秒 | ブラジル事情

 

 僕の生徒Aさんは日系3世の麻酔科医である。

彼はリオグランデドスル州内陸部の田舎町にある病院で麻酔科医として勤務していたが、お母さんが病気になったこと、職場上の不満があったこともって、その病院を自らやめて、サンパウロ近郊の実家に帰って行った。

 正直、そのお母さんに対する熱い想いにも頭が下がれば、自分の麻酔科医としてのキャリアに自信を持ち、今の職場をやめられる勇気にもすごいなあと思った。彼は31歳とまだ若いが、それでも就職活動は大変なはずだと想像したからだ。

でも、彼はわずか2カ月ほどで、実家近くの町の病院で仕事を見つけた。

すごい!

しかも、彼は週3回その病院で働くほか、もう1つの病院でも週2回ほど働くそうだ。

ブラジルの医者は病院をいくつも掛け持ちする場合が多い。例えば、Aの病院とは週20時間勤務、Bの病院とは週20時間勤務など、いわば派遣社員のような契約で働く。

こういった勤務体制の最大の理由は、恐らく病院側の経費削減にあるのではないかと思う。ブラジルの病院は、国家無料診察制度(通称SUS)からの補助金の少なさから、どこも経営が苦しい。だから、一番手っ取り早いリストラ対策が人件費削減なのである。

そして、医者としては、自己防衛手段として、いくつもの病院を掛け持ちすることにより、1つの病院でリストラされても、もう1つの病院での収入で生き抜こうとするのである。

医者という職業はブラジルでも一般に高給取りではあるが、人の命を扱うその緊張感・責任感から来る精神的プレッシャー、過酷な長時間労働状況を考えると、それほど割に合うものではない。

従って、賢明な医者は公務員試験に合格し、給料が多少安いながらも、解雇されない公立病院の医者として週20時間ほど勤務をこなし、安定した収入を確保しつつ、自分のクリニックを開設して、空いた時間に個人診療を行って、収入アップを目指す。

日本ではこういう働き方が許されるのだろうか?少なくとも、公務員は法的に副業が極めてしにくいのではないかと思われる。

Aさんに24時間勤務の宿直の時、1日に平均で何回手術をするのか聞いたら、8,9回だと返答してくれた。まあ、24時間全く寝ない訳ではないだろうが、仮眠を取りながら24時間にも8回も手術をこなすのは本当に大変であろうと想像する。

 Aさん、就職おめでとう!お仕事ごくろうさん!

 僕もAさんのように、いつやめても誰かから雇ってもらえるような人間になりたいなあ。

 




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