このタイトルは「ロシアの二〇世紀」から取っており、これは現代の必読書とされる名著ですが、現在の中東紛争を理解する上で「中東の二〇世紀」も書かれて然るべきかと思います。
こうした包括的で具体的な歴史の検証は、過ちを繰り返さないタメにどうしても必要ですが、「中国の二〇世紀」はまだ誰も書いていないので、その仕事をシャローム教授は次の目標に定めます。
ロシアや中国の様に、共産革命や民主革命そして「上からの革命(文革や大粛清など)」を繰り返して来た国では、もう何が正義だか分からなくなっており、権力争いに敗れた側を悪とする戦国時代の様な歴史認識がまかり通っています。
そうした時代錯誤的な独裁国家は、21世紀中には地球上から無くす必要があり、さもなくば人類は危機に陥るような気がします。
それは温暖化や食糧危機よりも差し迫った危機、即ち世界大戦の予感です。
それは「中東の二〇世紀」がずっと戦争の歴史だったコトからも伺え、その戦いは端的に言えば「古い神の側に付く人間と、新しい社会の側に付く人間の戦い」でした。
共産党の支配する社会は最も激しく神と戦い、宗教弾圧の歴史ではロシアと中国が過激さでトップ争いをしています。
人間が神を騙る社会では、古い神を崇める人々に居場所はなく、戦うか取り込まれるかを選択しなければなりません。
その神を騙る人間の社会が、本当に理想的ならば戦う必要は無いのかも知れませんが、残念ながらそうした社会は虚栄と暴力と退廃がはびこる定めで、それはシリアやイラク、サウジやイランなどのイスラム教国に於いてすら同じでした。
一神教が支配する社会も、人間が神を騙る社会と基本的には同じで、絶対的な正義を振り回すので戦争が避けられません。
シャローム教授はその点を「中東の二〇世紀」の焦点とし、共産革命と民主革命と宗教革命の歴史を通して「真の平和宗教」を追い求めました。