赤ん坊や幼い子供たちへの置き去り事件、虐待事件などが目立ち始めた近年、その尊い生命を実の親によって落とすことになる子供たちが増え始めてきた。そんな中、マスメディアなどで数年前から騒がれるようになった『赤ちゃんポスト設置』についてあれこれと考えてみたい。
これまで、『赤ちゃんポスト』という言葉を聞いてから以降、筆者なりではあるが女性ばかり約20人ほどに、ポスト設置の有無について、あれこれと意見を聞いてみた。
その中でも、多くの女性が「ポスト設置には賛成」であり、その理由としては、「少しでも助かる生命があるのなら・・・」といった内容であった。
筆者も二児の父(過去話し)として、そうした意見には全く同意見である。
そして、なぜ置き去りにするのか?なぜ虐待するのか?経済的な理由からなのか?それとも人格的なものからなのか?と、筆者が倫理・道徳というものに深い関心を抱くようになった原点のひとつでもある。
さて、赤ちゃんポスト設置の問題点を語る上で、重要な中身として2つの大きな問題がある。ひとつは、『親はなぜ赤ん坊を置き去りにするのか』という問題と、ふたつは、『赤ちゃんポストに預けられたあとの子供たち』であるが、今回はひとつめの問題を中心として考えてみようと思う。
先にも述べたように、置き去りにする理由には様々あり、具体的にこうだといえるものはない。そこで筆者は、『赤ちゃんポスト設置』の有無を訪ねたお母さん方に、「これまで赤ん坊を置き去りにしようとか、虐待を加えようとか、そのようなことを考えたことがあるか?」という何とも失礼極まりない質問をしてみた。しかし、お母さんがたは快く「そんなこと一度も考えたことがないよ」と答えてくれた。
そのようなわけで、内面的な部分は筆者なりに想像するより他ないわけである。
筆者は、心理学とか精神学といった科学的なことについては、ほとんど興味がないので、昔ながらの道徳的、倫理的観点の立場に立って、事の本質というものを捉えていこうと考え、それらをまとめてみようと思う。
■なぜ置き去りにするのか?
なんら抵抗もできない赤ん坊、というよりも何の汚れもない赤ん坊に対して、置き去りや虐待といった、尊い生命を奪いかねない行為に及んでしまう人間(親)というのは、経済的であれ人格的であれ、やはり忍耐の無さが最大の理由だと考えられる。
物質的豊かになった現代社会の中においては、昔の貧しかった日本社会よりも、子供たちの忍耐を養う環境としては、決して最適なものとはいえず、最近のニュースを見ていて感じるのが、少々の不満や怒りに対して我慢するができず、安易に人を傷つけてしまうことが多いということである。
忍耐というのは、単にあれこれ聞かされて理解できるものではなく、実生活の中で育んでいくものであり、耐える苦しみというものを何度も何度も味わうことで、よりたくましい人間へと成長できるものといえる。
⇒忍の話し
■やさしさと厳しさと・・・
わが子が悔し涙を流し、ぐっと堪えている姿というのは、親としてはあまりに悲しい光景ともいえよう。しかし、その悔し涙の理由を聞いてやり、「よく耐えたね」と褒めて抱きしめてやることも大事だと思うわけであり、その抱きしめられた親の温もりというのは、やがてはその子供たちが親となったときに、自分のこどもに対する想い(=愛情)となって引き継がれていくことになる。
ところが近年、子供の悔し涙の理由を聞いた親が、学校などに怒鳴り込みにいく、いわゆるモンスターペアレンツが増加しているという話しを聞くが、子供に対する親の愛情というものを全く理解していないと言わざるを得ず(学校側に問題がある場合も多々あるが・・・)、こうした親に育てられた子供たちというのは、ある意味ほんとうに可哀想だと思ってしまう。
⇒ケツメイシ「明日の少年」
わが子には、親の深い愛情をもって接することが何より大切であり、尚且つ、並行して子供たちの忍耐力を高めてあげることも親としての努めともいえよう。そして、親からの深い愛情の中で育ち、強くたくましい忍耐力をもった子供たちが世の中に溢れていけば、置き去り事件や虐待事件など、やがてはこうした悲惨な事件が減っていくのではないだろうか、と考える。
今後、置き去り事件や虐待事件などが益々増えていけば、全国的に『赤ちゃんポスト』設置への働きが沸き起こることにもなりかねない。
これからもこのようなものが設置されなくてもよい社会になってくれることを、ただただ願うばかりである。
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