本棚を整理中に表紙も中もすっかり変色した本に目が留まった。
タイトルは『三太郎の日記』(阿部次郎著)。
これは学生時代に購入したもので、何度もページを開いているものの未だ最後まで読み通したことはなかった。
ふと華厳滝で投身自死を遂げた藤村操に関する本を読みたくなった。
(藤村の「五尺の小躯を以て~」は、わたしが小学校高学年生か中学生の初めのころだったと思う。わが母から聞いた。奥深い山里の明治43年生まれの、それも尋常小学校をまともに出ていないと言っていた母が、なぜ藤村操を知っていたのか、なぜわたしに話したのか分からない。)
藤村操より一級先輩の一高二年の阿部次郎は、明治36年5月22日と同26日の日記に藤村のことについて書いているとのこと。
その日記とは『三太郎の日記』ではない。
“どうしても具体的内容を知りたい”
その思い強まりネット検索したら、『阿部次郎全集 第十四巻』(角川書店)に掲載されていることが分かった。
とはいえこの本、わたしが暮らしている世田谷区の図書館にはない。
(この全集は、宮城県図書館や仙台市民図書館では貸出不可になっている。)
図書の統合検索(横断検索)を実行したら、都内の他の区立図書館にあることが確認できた。
そこで、わが近所の図書館に行って“協力貸出”の方法を採ってもらう手続きをした。
その後1週間くらい経って大田区立池上図書館蔵のものが届いた。
なかなか手に取ることのできない本を、こうして身近な場所で得ることができるなんてなんともありがたい。
●藤村操 ふじむらみさお
旧制第一高等学校生。1886(明治19)年7月20日~1903(明治36)年5月22日。
享年満16歳10ヶ月。自殺現場の楢の木を削って「巌頭之感」を残し、華厳滝に投身。
巌頭之感
悠々たる哉天壤、遼々たる哉古今、五尺の小軀を以て此大をはからむとす。
ホレーショの哲學竟に何等のオーソリチィーを價するものぞ。萬有の眞相は
唯だ一言にして悉す、曰く、「不可解」。我この恨を懷いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巖頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。
●阿部次郎 あべじろう
哲学者・美学者・作家。東北帝国大学法文学部教授、同学部長、帝国学士院会員。
仙台市名誉市民。1883(明治16)年8月27日~1959(昭和34)年10月20日。
<追記>
東京都立中央図書館には藤村の自死をめぐって詳しい次の本がある。これも協力貸出を行っている。
高橋新太郎セレクション1 『近代日本文学の周圏』
この中に「時代の煩悶―藤村操「巌頭之感」の周辺」がある。
※縦書きのものを横書きに書き直したもの。
タイトルは『三太郎の日記』(阿部次郎著)。
これは学生時代に購入したもので、何度もページを開いているものの未だ最後まで読み通したことはなかった。
ふと華厳滝で投身自死を遂げた藤村操に関する本を読みたくなった。
(藤村の「五尺の小躯を以て~」は、わたしが小学校高学年生か中学生の初めのころだったと思う。わが母から聞いた。奥深い山里の明治43年生まれの、それも尋常小学校をまともに出ていないと言っていた母が、なぜ藤村操を知っていたのか、なぜわたしに話したのか分からない。)
藤村操より一級先輩の一高二年の阿部次郎は、明治36年5月22日と同26日の日記に藤村のことについて書いているとのこと。
その日記とは『三太郎の日記』ではない。
“どうしても具体的内容を知りたい”
その思い強まりネット検索したら、『阿部次郎全集 第十四巻』(角川書店)に掲載されていることが分かった。
とはいえこの本、わたしが暮らしている世田谷区の図書館にはない。
(この全集は、宮城県図書館や仙台市民図書館では貸出不可になっている。)
図書の統合検索(横断検索)を実行したら、都内の他の区立図書館にあることが確認できた。
そこで、わが近所の図書館に行って“協力貸出”の方法を採ってもらう手続きをした。
その後1週間くらい経って大田区立池上図書館蔵のものが届いた。
なかなか手に取ることのできない本を、こうして身近な場所で得ることができるなんてなんともありがたい。
●藤村操 ふじむらみさお
旧制第一高等学校生。1886(明治19)年7月20日~1903(明治36)年5月22日。
享年満16歳10ヶ月。自殺現場の楢の木を削って「巌頭之感」を残し、華厳滝に投身。
巌頭之感
悠々たる哉天壤、遼々たる哉古今、五尺の小軀を以て此大をはからむとす。
ホレーショの哲學竟に何等のオーソリチィーを價するものぞ。萬有の眞相は
唯だ一言にして悉す、曰く、「不可解」。我この恨を懷いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巖頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。
●阿部次郎 あべじろう
哲学者・美学者・作家。東北帝国大学法文学部教授、同学部長、帝国学士院会員。
仙台市名誉市民。1883(明治16)年8月27日~1959(昭和34)年10月20日。
<追記>
東京都立中央図書館には藤村の自死をめぐって詳しい次の本がある。これも協力貸出を行っている。
高橋新太郎セレクション1 『近代日本文学の周圏』
この中に「時代の煩悶―藤村操「巌頭之感」の周辺」がある。
※縦書きのものを横書きに書き直したもの。
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