小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

団鬼六先生崩御さる

2011-05-09 20:46:45 | Weblog
団鬼六先生が亡くなられた。謹んで哀悼の意を表します。享年79歳だから天寿をまっとうしたといっていいだろう。しかし団先生自身としては、やりたいことをほとんど全部やりきって満足な人生だったと推測する。もっとも、これは結果論であって、先生の自分史「蛇の道」を読めばわかるが、人生の途上では相当苦しい経験を何度もしている。それを乗り越えてきたのは、団先生の超人的な精神の強さとバイタリティーだと思う。
また団先生の数多いSM小説群は、まず間違いなく後世に残る。何といっても先生のSM小説の見事さは日本一で、これからも先生を越すほどのSM小説を書ける人は出てこないだろうから。文章は美しく流暢で、極めてエロティックで、ストーリーは複雑ではなく、極めてシンプルで、読みやすい。若者にとってマスターベーションの起爆剤となりうる。かく言う私も、かなり起爆剤として利用した。拙作の内、「官能作家弟子入り奇譚」「棋士物語」「花と蛇と哲也」「愛子と鬼二」は、団鬼六先生という存在がいなかったら書けなかった。なんせ小説で団鬼六先生を登場人物にして出しているのだから。現実の団鬼六先生は、温厚で良識的な性格だったが、だからこそ、ちゃかしてやりたいという悪戯心が起こった。私は団先生と話したことはなかったが、一度、会った事がある。10年前、団先生が出版した本、「生き方下手」の出版記念パーティーに、長池士さんに、誘われて出たのである。ただ私は団先生によってSMに開眼したのではない。私は先天性倒錯者であり、子供の頃からSM的なものにしか興奮しなかった。これはもう宿命である。それは、自分史「ビタ・セクシャリス」で書いた。だから団鬼六先生という存在がなくても私はSM小説を書いただろう。

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