建て直そう日本・女性塾

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女性塾第二回研修会報告

2006年03月31日 18時56分50秒 | 研修会報告
建て直そう日本・女性塾
  第二回研修会 平成18年3月4日 開催
      於:靖国会館
テーマ「現場からの教育改革―教師と親の意識改革」
      高橋史朗氏(明星大学教授)
≪略歴≫
昭和25年、兵庫県生まれ。早稲田大学院終了後、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員。臨時教育審議会(政府委嘱)専門委員、国際学校研究委員会(文部省委嘱)委員、神奈川県学校不適応(登校拒否)対策研究協議会専門部会長を経て、現在明星大学教授、埼玉県教育委員、玉川大学院講師、日本仏教教育学会理事。
主な著書に「教科書検定」「天皇と戦後教育」「悩める子供たちをどう救うか」「魂を揺り動かす教育」「感性を行かすホリステイック教育」などがある。

[はじめに]
 30歳のころ米国留学のおり、240万頁に及ぶ在米占領文書の調査・研究をしました。3年間人と合わずこもりっきりで、最後の半年はラーメンとシイタケで過ごしました。そのときの無精ひげがいまや額縁のようになり、昭和50年に一度剃ったところ周りが大変ショックを受けてしまいました。やむなくこの状態を続けております。
 34歳のころ政府の臨時教育審議会の専門委員に指名され、教育改革の一端を担いましたが、トップダウン型の制度改革だけでは限界があることを実感しました。
 やはり、現場からの教育改革が求められているのです。
 子供の教育に関わる親や教師の意識を変えないと、制度を変えても間に合いません。
 大局に着眼し、各種小局に着手する方法が肝要です。トイレ掃除が出来ないやつは天下国家を語る資格はないといった「凡事徹底」、地球環境を守るのならゴミを出さないことを考えるといった「脚下を照顧せよ」の精神が大切です

[教育者の主体変容]
 東京・大阪・福岡・埼玉に続き、横浜・京都でも師範塾や教師塾の開設を予定しています。家庭が悪い、地域が悪い、学校が悪い、といった責任のなすりあいではなく教育者の主体変容がキーワードです。
 大阪師範塾の原田隆史先生は一番しんどい、荒れた学校を希望して遅刻者を0にしました。また陸上部の顧問をし、2年目で全国優勝を果たし、13年間連続優勝を続けました。先生は着任後直ぐに優勝することを想定して3年後のホテルを予約したそうです。
 そういった先生方が500人集まり、いまでは1000人を越えています。
 4月にスタートする杉並師範館も、山田区長が理事長に就き、30人の定員に全国から500人を越える応募者が集まりました。
 そして組合組織ではない、教師による新たな職能団体の結成を進める予定です。
 家庭教育においても、親に子育ての主体者はあなたですよ、ということを明確に伝えなければなりません。私は「親学」を推進しています。
 子育て支援について、東大教育学部の教授、汐見稔幸氏と大激論をしたことがあります。氏はいかに親の子育ての負担を減らすかが「支援」だと考えておられます。「親は人生最初の教師である」ということをいってはいけない、親は被害者だという立場で、育児の社会化を推進します。
 私はそれは子捨てであり、子育て放棄につながると考えます。子育ては誰かが肩代わりをするのではなく、「あなたが責任者ですよ」を明確にして、労働者支援ではなく教育者支援が今求められているのです。
 各自治体はこの汐見氏と立場の異なる私を交代で講師に招聘しています。自治体も支援策について、どちらを採るか揺れているようです。
 日本の伝統的な子育てに「しっかり抱いて、下におろして、歩かせよ」という言葉があります。しっかり抱いて=愛着(母性)、下に降ろして=分離(父性)、歩かせよ=自立、と子供の三つの発達段階を即妙に言い表しています。子供は母性と父性をきちんと発達段階的に受けないと自立ができないのです。憂慮すべきことに今、母性・父性は固定的役割分担で差別につながるといった愚かなジエンダーフリー教育が蔓延しています。家庭教育においては、母性・父性をきちんといわないとはじまりません。
 日本はかつて「厳父慈母」といいましたが、今は「厳母甘父」になりました。生徒に募った標語で一等賞だったのは「父よ何か言ってくれ、母よ何も言わないで」でした(笑)。
 教育は他力や押し付けから始まります。文化の「型」を継承させることが教育なのです。男の型、女の型を押さえなければ、自分らしさは育ちません。
 教育が荒廃している原因は、この教育の本質が混乱しているからにほかありません。

[対人関係能力・社会力の育成のための愛着形成]
 最近になって、神戸・佐世保・長崎などで陰惨な事件が相次いでいます。これらに共通しているのは命を奪った実感や遺族の悲しみを理解できないことにあります。脳の発達障害が伺えます。こういった子供たちに道徳の時間を使って、いくら「命の大切さ」を教えても分からないでしょう。「しっかり抱いて=愛着」がなかったために共感性が育っていないのです。
 生物の脳には臨界期があります。小鳥などの「すりこみ(インプリンティング)」の時期を逸すると一生歌えない鳥になります。人間の脳は幼形成熟で、骨盤や脊髄が整う三歳までに6割、そして八歳までに9割以上完成します。この間に人間性知能が発達します。人間としてのアイデンテイテイが育まれる大事な時期です。「三つ子の魂百まで」といわれる由縁です。この間十分な母性愛を受けないと人間性に乏しい、理性を失った欲望をコントロールできない状況になります。これは文部科学省のデータでも公表されています。
 これを否定し「三歳児神話」を唱えた厚生省は大間違いを犯しました。
 最近目を合わせない乳幼児が増えてきたといわれます。育児に効率化・合理化を取り入れ、労働政策に女性を利用し、親心を崩壊させた結果です。虐待を誘発し、子供の人権が
冒されています。
 「母性の研究」という博士論文を著わした大日向雅美氏の主張が、文部科学省の家庭教育支援のガイドブックに使われています。これは即刻回収する必要があります。

 女性塾の皆さんには、必修文献として昨年10月に文部科学省が発表した「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会報告書」をお薦めします。

 [食育と基本的生活リズムの獲得]
 「どうしてもわが子を愛せない」というお母さんに、献立を聞いてみたところ、インスタント食品が多かったので、料理に手間隙かけることをすすめたら、食べさせたい思いが募り、子供への愛着心がわき、愛することができるようになった、といいます。
 ここ十年間で日本人の価値観は大きく変わりました。子育てを負担に思う人の割合が8割を越え、73カ国の意識調査を行った結果も73国中72位でした。因みに73位はリトアニアです。子育ての意義、喜びが急速に矮小化されるようになりました。
 昭和30年代までは、女の子の将来の夢で「いいお母さんになる」はトップテンを維持していました。今は50位にも入っていません。
 「親学」はこういった子供達の準備期間の教育も含んでいます。家庭科の教科書の役割も重要です。
 皆さんに岩村暢子氏の「変わる家族、変わる食卓」をお薦めします。新人類と言われた世代が親になり、インスタント食品が食卓に上っても違和感を感じなくなったころ、親の意識が変容しだしたのです。
 また鈴木雅子氏の「その食事ではキレる子になる」もお薦めです。「食育」に注目しなければなりません。
 愛知県の高校生が母親を毒殺未遂するという事件がありました。
この女子高生が日記で唯一人間的な記述をしている箇所があります。それは4歳児の園児と関わった日のもので、自分を必要としてくれる園児と関わることによって、存在価値を実感し、幸福感があった、という内容です。
 人間は自分を必要としてくれるものの存在に愛情を感じ、幸福感を得られるのです。この自然な感情を最近の思潮で「負担」「犠牲」と変容させたことを反省する必要があります。
 子供達の睡眠障害も深刻です。
 日本では急速に夜型化が進んでしまいました。
 12時以降に寝る高校生は66.4%に上っています。アメリカや中国では10%ぐらいです。そこに乳幼児が巻き込まれています。
 カラオケ・居酒屋にも託児所があり、このような商業ストアに4分の1の親が乳幼児を連れ出しているといわれます。親の利便性ばかりが優先され、子供の人権が侵害されています。その結果生態リズムが狂い、脳の発達にも悪影響が出ています。
 不登校や社会的ひきこもり、ニートなどが増える原因です。
 甲子園球児として馴染みのある四国の明徳義塾高校で、特進クラスの生徒が友人を刺す、という事件がありました。当時私も教員研修に関わっていたこともあり、この生徒のインターネット日記を読むことができました。夜更かしや生活リズムの狂いが、彼を追いつめ精神を崩壊させていく軌跡は、涙なしでは読めませんでした。
 自治体が進めている行き過ぎた延長保育を憂慮します。子育て支援は親が親として育つための支援を施すべきで、子供の脳の生育を無視した施策は受け入れられません。

[人間性を育む根源的な教育を]
 戦後教育に決定的に欠けていた「愛国心」「伝統文化の尊重」「宗教的情操」を取り入れた教育基本法改正案を超党派の議員との間で進めています。今春、通常国会に上程します。
 国家の安泰は「人づくり」に全てがかかっています。
・ 「愛国心」について:自分を愛せないものは他人を愛することはできません。ひいては郷土も国も愛せません。ハワイのワイアナエ公立学校では、「平和はセルフ・エステイーム(自己尊重)から」を平和教育のテーマにしています。沖縄でも同様の学校があります。愛国心をもっと根源的に捉え、平和教育の理念につながることを説くべきだと思います。
・ 「伝統文化の尊重」について:園児に茶道を教えたり、高校生に和装で礼法を教えたり、漢詩を暗誦させるとき、脳が活性化することが、科学的データによって証明されています。全国組織の和文化教育研究交流協会も設置され、今50校が推進校として日本の伝統文化教育を取り入れています。2008年から一斉に小・中・高で学ぶことになります。日本文化指導者養成のための講座も大学で取り入れられます。
・ 「宗教的情操」について:伊勢神宮にもうでた西行法師が「・・かたじけなさに涙こぼるる」と詠じた気持ちこそ育まれるべき情操です。
「もったいない」「おかげさま」「かたじけない」心を育てる教育の理念を教育基本法の中に盛り込まなければなりません。

男女共同参画第二次基本計画の中には、山谷えりこ先生のご尽力で、混乱の元凶であった「ジエンダー」の定義を具体的に掲載されました。人間性を破壊する極めて非常識な施策に歯止めがかかりました。
 良識派の女性議員育成ための学びの会のご発展をお祈りいたします。

                       以上

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1 コメント

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Unknown (田中)
2006-05-07 09:55:58
 当日参加した田中(男)と申します。

 先生の講演ではより「脳科学」が打ち出され、参考資料として「文部科学省報告書」をご案内していたかに思います。

 心情面や道徳面を強調することは先生が当日ご指摘されたように、「三歳児神話」の如く反対陣営に攻撃される恐れがあります。

 より「脳科学」を出した議事録に改訂していただければ幸いです。

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